★きむすめ酒蔵(11)
寅さん、水戸黄門など、結末が確実に予想できる物語を「予定調和的」というそうですが、私たちの日本酒造りも予定調和といえるでしょう。先祖代々、受け継がれているレシピを変えないことを強くご先祖様たちに要請されています。一種の家訓みたいなものです。
全国にはたくさんのきむすめファンがいらっしゃいます。決して安価とは言えない酒をご愛飲頂いており、たいへんありがたいです。
これらのお客様はきむすめの味を記憶しており、飲んだとき、うんうん、この味だ、と納得し、喜びます。少しでも味を変えたら、ん?いつもと違う?と不満になるでしょう。
水戸黄門の最後のシーンで黄門様が印籠を出さなかったり、桃太郎侍がいつものセリフを言っている途中で斬り殺されたりしたら、長年のファンはかなりがっかりするんじゃないですか。黄門様が印籠を出した瞬間、悪者たちが驚くシーンを見てファンの脳内には怪しい汁が出ます。(笑)
ドリフターズの志村けんが毎度の芸に飽きてしまい、全員集合で「カラス、なぜ鳴くの、カラスの勝手でしょ」を歌わなかったとき、全国の親から苦情が殺到したそうです、不満顔の子供たちが寝てくれない、どうしてくれるんだ!と。
このように、予定調和を喜ぶ、期待する人々は世の中にたくさんいるんですよね。待ってました!と。
仕事に何らかの変化を強く求める人は、私たちの仕事が辛いと感じるかもしれません。
毎年毎年同じ作業を繰り返す農業と、新しい獲物を常に求める狩猟を比べた場合、私たちの仕事は農業に似ているかもしれませんね。
きむすめUSAの売上は順調で、三ヶ月に一度、多額のロイヤリティが送金されてきます。
私は高校あたりまで県外に出たことがなく、もちろん海外旅行も未経験だったのですが、先月、ポン社長に誘われ生まれて初めてアメリカ、ヨーロッパに行きました。
本当は母も同行する予定だったのですが、最近の母は体調が今一つで長時間飛行機に乗るのは辛いと言い、今回の旅行は不参加になりました。
旅慣れた社長のガイドで旅行をたっぷり楽しみ帰国したら、母が亡くなりました。