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『存在と時間』を読む 全88本

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2022年1月の記事一覧

『存在と時間』を読む Part.42

  第43節 現存在、世界性、実在性

 ここまで、現存在の世界内存在にかかわるほぼすべての重要な実存カテゴリーが明らかにされてきました。ここでハイデガーは本書の最初の問いに戻ります。「存在の意味への問い」がそもそも可能であるのは、わたしたち現存在の存在様式に、存在了解が含まれているからでした。ただし、こうした存在了解は前存在論的なものであることも多いのでした。

Das vorontologis

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『存在と時間』を読む Part.43

  (b)存在論的な問題としての実在性

 これまでに指摘されてきたように、実在性(>Realität<)という名称は、世界内部的な眼前存在者である事物(>res<)の存在を指すものですから、この実在性の解釈は、世界内部的な存在者の世界内部的なありかたが解明されて初めて、存在論的に遂行できることになります。

Diese aber gründet im Phänomen der Welt, die

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『存在と時間』を読む Part.44

  第44節 現存在、開示性、真理

 この節では、哲学にとって伝統的に重要な概念である真理と存在論の関係が考察されます。ハイデガーは、古代ギリシアの時代から、哲学の伝統では真理と存在を結びつけて考えてきたことを指摘します。

Die Philosophie hat von altersher Wahrheit mit Sein zusammengestellt. Die erste Entdec

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『存在と時間』を読む Part.45

  (b)真理の根源的な現象と、伝統的な真理の概念の派生的な性格

 ハイデガーは真理を、世界において存在者をあらわにすること、世界内存在である現存在が露呈させることと言い換えました。このような概念規定をすれば、たしかに真理の概念から〈一致〉という考え方を排除することができます。しかしこれは、伝統的な哲学によって考察されてきた真理の概念を無視するという、一見するとかなり恣意的な定義なのではないでし

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『存在と時間』を読む Part.46

  (c)真理の存在様式と真理の前提

Das Dasein ist als konstituiert durch die Erschlossenheit wesenhaft in der Wahrheit. Die Erschlossenheit ist eine wesenhafte Seinsart des Daseins. Wahrheit >gibt es< nur, sofern un

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『存在と時間』を読む Part.47

 第2篇 現存在と時間性
  第45節 現存在の予備的な基礎分析の成果、ならびにこの存在者の根源的な実存論的解釈の課題

 これまで第1篇において、ハイデガーは存在の意味を問う問い掛けにおいて、このような問いが意味をもちうる唯一の存在者である現存在について、その世界内存在と日常性というありかたを分析してきました。第2篇の最初の節では、それまでの現存在分析の成果が確認されることになります。

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