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スタートアップ/ベンチャー企業における権限委譲のされ方

こんにちは、9月からアダコテックでエンジニアをしている大曽根です。好きなバンドはKhruangbinです。前職はGunosyという会社で働いておりました。入社エントリーは下記になります。
今回は転職などで権限委譲が生じた際にミッションをいい感じに委譲され、いい感じに運用するための自分なりの方法を書いてみたいと思います。

背景

SNSなどを眺めていると「権限委譲は大事!超大事!」というようなでマネジメント層の発言を目にすることがあります。しかし、実際にどのように権限委譲が行われているか/どうしたらうまくいくかの方法論に言及している記事をあまり見かけなかったので自分の体験を記事にしようと思いました。

この記事は、マネジメントレイヤーで新しい組織に転職や異動する方に向けて書いております。特にスタートアップなど、フェーズや人の移り変わりが激しく、過去の経緯が断絶しがちな会社への転職・異動される方も対象です。というのも私が現職/前職で創業者からの権限委譲を経験しており、それなりに大変な思いをしたため少しでも経験を還元できればと思いっております。

なぜ権限委譲か

権限委譲は人の入れ替わり、組織の成長などの日々の変化が起こる以上は必然的に発生します。具体的に言うと自身の転職、もしくは担当者の昇進、退職、失踪、結婚などいろいろな場面で起こります。そして、権限委譲の何が難しいかというと権限委譲する側も現在の業務の権限委譲を行うのは初めてであり、完璧な対応を行うことがむずかしいことがあると思われます。委譲される側も同様です。委譲される側の立場からすると、相手の不手際に責任を押し付けて責任を逃がれることも可能性があります。しかし、(短い時間で)完遂できれば自分の価値が上がります。自分のために権限委譲を成し遂げましょう。逃げたら一つ、進めば二つ手に入ります。

起きている問題

相互の認識の非対称性

今回は相互の情報伝達の齟齬にフォーカスして書こうと思います。もちろん権限委譲する側も(よっぽど適当な人でない限り)準備をして委譲に着手するはずです。しかし、人間の頭の中には自分が言語化できなかったり、必要でないと思い込んでいる情報があるはずです(暗黙知)。図.1のマトリクスの(B)のやばいゾーンが権限委譲で重要になります(ジョハリの窓の盲点の窓にも近いですね)。

図1. 権限委譲のマトリクス

問題の具体例

イメージをしやすくするためにフィクションを含めた例を書いていきます。

システムにおけるやばいゾーン
(委譲者が)知ってほしいこと: Aという処理をしている
(委譲される側が)知る必要があること: 人数少ないときにインターンに丸投げで作ってもらってるのでパフォーマンスがひどいうえに正確な処理は誰も知らない

この場合の正しいアクションは機能追加などではなく、機能の把握を行い利用状況や他のシステムとの依存性を把握した上での停止/リプレイスの判断になります。

プロジェクトにおけるやばいゾーン
(委譲者が)知ってほしいこと: BさんがやっているC社さんとのプロジェクト
(委譲される側が)知る必要があること: 過剰にリソースとっている割には成果少ない。加えてBさんもそれを知っていてデモチしている

この場合も期待される役割はステークホルダーなどと交渉の上でのプロジェクトのゴール設定です。ときめかないプロジェクトは整理していきましょう。

会議体におけるやばいゾーン
(委譲者が)知ってほしいこと: 定例報告する内容と資料の作り方
(委譲される側が)知る必要があること: どういう歴史的経緯でうまれてなんの目的で開催されているのか

業務時間を有効利用するうえで会議体による時間の圧迫は大きな問題になります。適切な情報共有はもちろん重要ですが、情報共有量を最大化した上で開催時間を最小化するというように最適化していきましょう。また、会議は劣化もしていますので定期的に開催目的のメンテナンスを行いましょう。詳細はアダコテックCPOの武政さんが書いた記事もご参照ください。

思いつく例を挙げましたが、いずれも委譲される側にとっては非常に問題になる可能性が高い問題が隠されています。委譲する側に悪気がなくても人間は弱いのでこれが終われば自分は解放されると思い、比較的軽易な対応になりがちです。以下に(経験則的にはなりますが)抽出方法を書いていきます。

あぶり出しかた

基本的に受動的に引き継ぎを行っていくと(A)および(D)のゾーンが多くなります。そのため、(B)の知識を獲得するためには工夫が必要です。そこで、自分の経験で役に立ったものを書いていきます。また、いきなり1on1でオープンクエスチョンで「他に重要事項ありますか?」などを聞けばいいと思う方もいるかとは思いますが、多くの場合「困ったら何でも聞いてください!」と返ってきます。そのため、困っている具体例を探し、「このタスクって必要あります?なければこちらで整理します!」のような提案を行うことが必要になります。

双方の心理的安全性の確保

何事も準備が8割です。ここで失敗すると後の工程はうまくいきません。(B)のやばいゾーンの情報は当然、委譲する側にとって顕在化している問題ではないので、取得するにはそれなりの傾聴力が必要となります。

傾聴される側がしっかり話を聞く姿勢をとる
自分の主張を強くすると聞き出せるんものも聞き出せません。あなたにとって大事なことなので自分の意見をいうのは控えましょう

共感する
完璧な意思決定は存在しません。現在に至った経緯をしっかり理解しましょう。

他にも「できるだけ否定しない」「沈黙を恐れない」あたりを意識するといいかもしれません。

加えて委譲される側の心理的な安全性も重要です。すぐにタスクを背負って手を動かし初めてしまうと、ついついそちらに目がいってしまい、肝心なキャッチアップに時間を取れずに落とし穴にはまることも多くあります。また、委譲する側が意気揚々とタスクを考えている場合も注意が必要です。委譲する側に対して「xxヵ月は全体感の理解のためのキャッチアップ期間としたい」旨をしっかり伝え、合意したうえで進めましょう。加えて期間を経過した上での成果点として、「事業の報告を経営層に行う」「事業部の目標設定を行うことができる」などのように明確化するとよりよい成果が得られると思います(リーダーの作法という本にも似たようなことが書いてあります)。

組織目標における抜け漏れの確認

準備をした上で、実際のあぶり出しを行います。あぶり出しにはトップダウンから探す方法とボトムアップで探す方法があります。ミドルマネジメントでの権限委譲になる場合には自分だけでミッションが完結することは少ないため、双方向のアプローチが必須になります。

トップダウンアプローチ: OKRを仮につくってたたく
その人のコピーになればすべてを引き継ぐことができますが、実際は能力も背景、経験が異なるので、解釈の仕方も異なります。そのためそのまま、引き継ぐとしても大きく時間がかかることが推測されます。歴史のある大きな企業であれば時間的猶予もありますが、多くの場合そんな余裕はありません。そこで、委譲される側が事業やミッションを理解し自身が達成すべき目標を立て、レビューしてもらうことが重要です。多くの場合、新しい役職者には新しい風も求められることが多いため、自分の価値を発揮することも求められます。
図.2のようにたたきを持っていくことで「このシステムこうしたいんですよね」「そこのシステムは古の仕様があって~」のように新しい前提などを引き出すことができます。

図2. 目標設定のすり合わせ

ボトムダウンアプローチ: カンバンなどの管理ツールで抜け漏れを検知
スクラムなどを導入している/いないに関わらず、タスクの管理ツールを使っている場合には日々のタスク確認の整理を行うことも有効です。前述のトップダウンでのアプローチで作成したOKRなどの目標と各々の日々の営み(スプリントで消化されるバックログなど)の対応関係を見てみましょう(図.3)。「XXさんがやっている△△というタスクはなんのためにやっているのですが?」「ああ、それ実は重要/不要なんだよね」のように新しい前提などを引き出すことができます。日々のモニタリングにはJIRA、Asana、Zenhubなどのタスク管理ツールを用いてフローを整理することが有用です。

図3. ボトムアップとトップダウン双方のアプローチ 

タスクにおける抜け漏れの確認

まずは、委譲する側の日々のタスクをとりあえず全部上げてもらい、委譲してほしいタスクを具体的に上げてもらうことが重要です。それでも抜け漏れは発生するので以下のアプローチが有効です。

Calendarでストーキングする

  • 定例っぽいのあれば入れてもらう

  • 任せたい会議体は主催者を移行してもらう

Slackでストーキングする(DM率が高いとアウト)

  • 発言が多いチャンネルがあれば慣れるまでは全部のメッセージを通知する

  • SlackのAnalyticsなどを閲覧した際にDM率が高い場合にはまずSlackの発言をPublicに集約するような動きをしましょう

SNSでストーキングする

  • TwitterなどのSNSが主戦場の方は、発言をみて知らないことに関しては積極的に尋ねるのがいいかなと思います。もし聞きづらいなどあれば関係性を深めるところからはじめましょう

まとめ

以上が権限委譲される側がスムーズに委譲を行うための経験則になります。権限委譲もコミュニケーションですので、する側/される側双方の努力と歩み寄りが大事だと思います。また、書きながら思いましたが、暗黙知を形式知化するためのナリッジマネジメント的な側面が大きい気がしてきました。創業からPMF、スケールする段階において創業時からいるメンバーの知識を定着させ次の段階に行くことが偉大な企業の第一歩につながるのかもしれません(ナリッジマネジメントに関してはSECIモデルを参考に)。

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