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愛する、ばば

あこがれのひとを 必死に呼びとめる
『あば』『ばば』はかれの パパへの呼び名

息子おもちくん、初めて話した意味のある言葉は、

『ばば』

である。

第三者から見れば何のことやら赤ちゃん言葉であるが、これは彼の尊敬してやまない父、『パパ』のことである。

そうなのだ。
昨年8月に本退院する前、NICUから一般病棟に移って以降いつでも抱っこが出来るようになってから、母である私は常に彼に付き添い、素晴らしい椅子係として貢献してきたにもかかわらず。

時々ふらっと来て、

『おう、おもち、元気か。元気だな。じゃあな。』

と去っていく、おもちくんと同じ色白ではあるがとうに紅顔の美少年から卒業したメガネで髭で三度の飯とテレビゲームが大好きな父親に、それは熱い尊敬の念を抱いているのだ。

何だ何だ、レアなところが惹き付けるのか。
某アミューズメントパークでなかなか会えない鼠のキャラクターみたいなものか。
それともあれか、おもち家のボス猿への忠誠心か。

椅子係の母の気持ちを知ってか知らずか、とにかく、おもちくんは父が大好きなのだ。

『パパそろそろお仕事終わりかな』
と呟けば、父の仕事部屋を仰け反って見ようとするし、
入院中、母がスマホを見ていれば横から『ばば』『あば』と父とのテレビ電話を催促してくる。

NICUにいた頃『息子と父の微妙な関係』という発言をしてNICUの看護師さんたちをいたく心配させたおもちの父も、まんざらではなさそうである。

『いつかおもちとこのゲームを一緒にやりたい』

とゲームのコントローラーをいじる父は、とても優しいボス猿の眼をしている。

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