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The Velvet Underground – White Light/White Heat (1967)

 見向きもされなかった前作『The Velvet Underground & Nico』は、確かに前衛的過ぎたかもしれないが、同時に彼らの持つ多才さや器用さも表れていた。クラシック楽器の実践、オルゴールや女性ボーカルの導入など、単にVelvetsが轟音しか能のないガレージ・バンドではなかった事は誰もが認めるところだろう。
 対して、2ndアルバムである『White Light/White Heat』は退廃的な歌詞世界がより深化し、けたたましいロック・サウンドにはより拍車がかかった。ミニマルなメロディが次第に歪んでいくタイトル曲「White Light/White Heat」は、悪名高い市販薬であるアンフェタミン体験を歌っている。「Lady Godiva's Operation」は中世イギリスの逸話を、現代的かつ非常に悪趣味に解釈したとんでもない歌詞だった。
 バンド・サウンドとしての真価はB面にある。音で頭を殴りつけるように強烈な「I Heard Her Call My Name」と「Sister Ray」は、どんなエクストリームなパンク・ファンでも衝撃を受けるだろう。普段はベースを担当するJohn Caleだが、ここではヴォックス・コンチネンタルのオルガンを極限までひずませてLou Reedのギターと蛇のように絡み合っていく。The Kinksの轟音狂Ray Davisに捧げられたこのサウンドの殴り合いは、実に17分にも及ぶ。
 Andy Warholと袂を分かったReedとCaleの暴力性と好奇心はとどまるところを知らず、当時では類を見ないほど異形のアルバムが産み落とされた。前作でしばしば聴かれたこぎれいな音はなりを潜め、より先鋭化したサウンドの『White Light/White Heat』は、後進のパンク・バンドに否定しがたい影響を与えた。しかし、本作がファースト・アルバムよりさらに見向きもされなかったことは言うまでもない。