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Crosby, Stills, Nash & Young – Déjà Vu (1970)

 ことロックにおいて傑作を作り上げるためには、メンバー同士の仲が良い必要は全くと言っていいほどない。その証拠に、60年代を締めくくるに相応しかったはずのこのアルバムは、レコーディング予定が延びに延びた結果、1970年の春にやっとリリースを迎えることになった。
 オープニングを飾る「Carry On」はCSN時代の延長のように美しくも力強いアコースティックギターを聴かせる。まるでLed Zeppelinが『III』でフォークロックに傾倒することを予見するかのようなサウンドである。物悲しく故郷カナダの情景を歌い上げる「Helpless」はのちにYoungがThe Bandの解散ライブで披露したように、永久に続くような心地よいコーラスが聴きものだ。
 ハーモニーを追求するオリジナル曲と並んで、Joni Mitchellによるフラワームーブメント賛歌「Woodstock」が収録されていることも、このアルバムの価値を大いに高めている。Youngによる轟音のギターがメンバーを牽引することで、CSNY流のハードロックを示した。
 屈指のSSW集団であると同時に個性的な面々の集まりでもあったCrosby, Stills & NashにNeil Youngが加入することで(作業効率は犠牲になったが)、それまで誰もなし得なかった天賦のメロディとハードなギターサウンドが同居した西海岸ロックの完成系をみごと形にすることに成功した。