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Greg Puciato – Child Soldier: Creator Of God (2020)

 The Dillinger Escape Planの停止から3年を経て、Greg Puciatoのソロ・ワークがついにその全貌を明らかにした。
 かねてからPuciatoの内部で醸造されていた創造性は、かくも多彩なベクトルを向いており、彼はあまつさえそれを一枚のアルバムに大胆に収れんさせている。もしもこれらが彼のソロ・プロジェクトではなくThe Black QueenやKiller Be Killedの名義で発表されていたのなら、本作は少なくとも3枚のEPとして切り刻まなければ手に負えなかったはずだ。『Child Soldier: Creator Of God』は、彼が渡り歩いてきた様々なグループの面影を感じさせつつも、Puciato自身の持つ幅広い音楽性を象徴している。それも奇跡的な完成度だ。
 美しいアコースティック・チューン「Heaven Of Stone」はあくまでも始まりに過ぎず、タイトル・トラックである「Creator Of God」、そして「Fire For Water」という暴力的インダストリアル・サウンドを立て続けに展開する。Alice In Chainsのけだるい90年代グランジを彷彿とさせる「Deep Set」や「Fireflies」に漂うダーク・ウェーブ的厭世観に浸った後には、Ben Kollerのドラムを迎えたハードコア「Roach Hiss」が待ち受けている。90年代と10年代を往来するこのアルバムが、とりとめのないプレイリストにありがちな雑多な印象と無縁なのは、ひとえにPuciatoという稀有なボーカリストの持つ驚異的な個性と技術によるものだ。
 シングルやEPによって、2020年の春から少しずつその片鱗を見せてきてはいたが、モノクロのジャケットからはおよそ想像もつかない「るつぼ」のような内容にきっと驚くことだろう。リークの危機によって発売が前倒しになるなど、いくつかの時間的問題を乗り越えて発表された本作は、音楽の一大マンダラのような傑作となった。