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プレゼンテーション・アドバイス(7):質疑応答で守るべきルール

最近の学生はプレゼンが上手だと感じます.もちろん個人差はありますが,一昔前に比べれば総じて上手になっていると思います.それに,ここで述べているようなアドバイスに従って,スライドと原稿を用意し,徹底的に練習すれば,それなりに上手なプレゼンはできるはずです.できないとしたら,それは準備不足が原因でしょう.

問題はその先です.質疑応答です.どれだけ上手に発表しても,質疑応答がダメだと評価は低くなります.口先だけで,内容を理解していないことが露呈してしまうからです.このため,質疑応答は非常に重要です.研究の背景や関連分野も含めて,いかによく理解しているかが問われるため,こればかりは一朝一夕に何とかなるものではありません.思うように答えられず,ボコボコにされて,実力不足を痛感したなら,必死に勉強・研究するしかありません.国際会議で英語で発表したなら,英語を習得するモチベーションも得られるでしょう.自分の不甲斐なさに悔し泣きする経験も必要です.

質問に的確に答えるためには,プレゼン内容に関連する理解を深め,知識を更新する作業が不可欠です.小細工でどうにかなるものではありません.それでも,正しい態度で臨めば,きちんと質問に答えようとしているなと感じてもらうことはできます.そのために気を付けるべきことを述べます.

<質疑応答のルール>
1) 自信を持つ.
2) 質問してくれた人をバカにしない.
3) 質問途中でスライドを探さない.
4) 質問は最後まで聞く.
5) 質問内容がわからなければ確認する.
6) 「はい」「いいえ」で簡潔明快に答える.
7) 「わかりません」と答えてもいい
8) 最後までハッキリと答える.
9) 質問対策用のスライドを用意する.

自信を持つ

プレゼンの印象を決定的に左右する質疑応答について一言だけ述べるとすれば,「自信を持て」です.これに尽きます.研究発表なら,これまで一生懸命に研究してきたはずで,あなたの研究内容については,あなたが一番よく理解しているはずです.質問に最もよく答えられるのはあなたです.自信を持ちましょう.

あなたのプロジェクトのプレゼンなら,そのプロジェクトについて徹底的に検討してきたはずです.最もよく理解しているのはあなたです.評価する立場の人の様々な疑問に答えて,プロジェクトの素晴らしさを伝えられるのはあなたです.自信を持ちましょう.

質問してくれた人をバカにしない

質疑応答では,鋭い質問もあれば,的外れな質問もあります.どのような質問であっても,その質問から学んで欲しいと思います.中には,「それ説明したよね.聞いてなかったの?」と思うような質問もあるでしょう.そのとき,質問者をバカにするのは簡単ですが,自分のスライドや説明の仕方が悪かった(少なくとも完璧ではなかった)としたら,どこをどう直せばもっと理解してもらえただろうかと,そのように考えてみましょう.「先程説明しましたが・・・」と口に出す必要はありません.

次回は今回よりももっと完成度の高いスライドでもっと伝わるプレゼンをしよう.より多くの人により正しく自分の研究を理解してもらおう.できることなら,より楽しんでもらおう.そういう姿勢で,自分が受けた質問を振り返り,将来のプレゼンに活かしていきましょう.学会発表に限らず,フィードバックは大事です.それを活かせたらプレゼン力は向上します.

質問には頓珍漢な質問もあります.そのような場合でも,質問者を責めるような応答は控えて,易しい言葉で正しい方向へ導いてあげましょう.あなたの発表に関しては,あなたが世界一の権威なのですから,余裕を持って対応すればいいのです.

質問途中でスライドを探さない

質問されると,質問者が質問している最中なのに,質問の内容も完全には解らないのに,必死でスライドを探す人がいます.見掛けるたびに,一体何をしているのかと不思議に思います.早押しクイズで誰かと競っているわけではないのですから,質問されているときは質問に集中しましょう.自分に向かって誰かが話しているときには,その話に集中するのが基本です.

質問に対してスライドを使うと分かり易く答えられる場合もあるでしょう.しかし,スライドがなくても答えられる質問も多いはずです.それなのに,必死にスライドを探していると,こいつ質問内容を理解していないなと容易に見破られます.仮に理解しているとしても,焦っているオーラが出まくるため,聞いてくれている人達も落ち着きません.

質問は最後まで聞く

質問は最後まで聞きましょう.途中でスライドを探さないだけでなく,質問を遮ったりしてもいけません.確かに,質疑応答で,質問ではなく自説を開陳する人はいます.しかもダラダラといつまでも.そういう人はだいたい要注意人物として警戒されていて,実際に迷惑なのですが,司会進行は司会者(座長)に任せます.質問を終えるように促すのは,発表者であるあなたではなく,司会者の役目です.なお,司会者が自分の役目を果たせないときは,「その質問についてはセッション後に話しましょう」などと述べて,打ち切って構いません.

質問内容がわからなければ確認する

もし質問の内容が理解できないなら,質問者に質問内容を確認しましょう.「あなたの質問は○○という意味ですか?」と尋ねることは,決して失礼な行為でも恥ずべき行為でもありません.質問を聞き返すのが問題なのではなく,見当違いな回答をすることが問題なのです.なお,質問が意味不明のときには,「は?アホですか?」という態度ではなく,「もう一度お願いします」や「○○ということでしょうか」と丁寧に対応します.紳士淑女であるように心掛けましょう.

「はい」「いいえ」で簡潔明快に答える.

質問には簡潔明快に答えましょう.「はい」か「いいえ」で答えれば済むものは,それで十分です.補足したいのなら,「はい」か「いいえ」で答えた後に補足説明をしましょう.

現実には,「はい」か「いいえ」で答えずに,ダラダラと説明をしだす人が多くいます.質疑応答の時間は限られているので,そのような説明は時間の無駄で,印象は悪いです.唯一の例外は,誰からの質問もなく,司会者(座長)が親切心で質問を捻り出してくれた場合です.追加の質問がなさそうであれば,司会者を困らせないためにも,時間を使って構いません.

「わかりません」と答えてもいい

どれほどよくプレゼン内容を理解しているにしても,すべての質問に完璧に回答できるわけではありません.自分の知識が不足しているために回答できないなら,正直に「わかりません」と答えましょう.発表後に勉強すればいいのです.

本当に鋭い指摘に,「あぁー!それは考えてなかったぁ!」と焦ることがあるかもしれません.そのようなときは,正直に「非常に大切な指摘だと思いますので,これから検討します」などと答えましょう.決して,論点をずらして誤魔化してはいけません.印象がとても悪くなります.

最後までハッキリと答える

質問に答えるときに,フェードアウトしてはいけません.最後の「です/ます」までハッキリと口にしましょう.これは発表でも同じです.

ときどき,回答が終わったのか終わっていないのかわからない,中途半端な回答をする人がいます.会場は静まりかえり,司会者も口を挟んでいいのかどうかわからず困惑し,質問者は両掌を上に向けて肩をすくめる,そんな情景が目に浮かびます.最悪です.きちんと回答を締めくくりましょう.

質問対策用のスライドを用意する

スライドと原稿を作成して推敲している間に,プレゼンテーションの目的を達成するためには,この説明は本筋から逸れて細かすぎるので省略しよう,といった判断をするはずです.そのような判断は大切ですが,省略した部分が理解できなくて質問する人がいるかもしれません.そのときに,スライドがなくても説明できるなら問題ありませんが,スライドがあった方が説明しやすいなら,質問対策用スライドとして残しておくのがよいでしょう.これ以外にも,質問を受けそうな内容が予測できていて,かつスライドがあった方が説明しやすいなら,質問対策用スライドを用意しておくといいでしょう.

© 2020 Manabu KANO.

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