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論文執筆アドバイス(5):査読に対応する

晴れて論文原稿が完成して,ジャーナルや国際会議に投稿すると,査読の洗礼を受けることになる.

これまでに述べてきたように,論文には書き方がある.論文として成立するための必要条件がある.その条件を満たしていないと,査読者の評価が低くなり,ジャーナルや国際会議で発表する価値がないと判断される.つまり,リジェクトされる.あるいは,もっと酷い場合には,査読者に評価してもらうまでもなく,エディター(編集者)の判断でリジェクトされる.

研究内容が優れていることは言うまでもなく重要だ.しかし,研究内容が優れていることは論文が採録される十分条件ではない.必要条件を満たして,査読を通らなければならない.これはベテラン研究者にも新米研究者にも共通するわけだが,新米研究者には経験が不足している.特に,査読経験が不足しているために,どういう観点で論文が評価されるのかが理解できていない恐れがある.これでは,丸腰で戦に臨むようなものだろう.

そこで,論文執筆経験の浅い研究者・学生のために,査読者を擬似体験してもらい,査読に耐える論文を書いてもらうために,「査読模擬体験票 」を作成してみた.

チェックシートとして利用して欲しい.

投稿した論文に対する査読結果が返ってきて,修正を求められた場合,論文原稿を修正すると共に,査読者への回答書を準備する必要がある.このとき,横柄な態度は禁物だ.そもそも,査読者はボランティアであり,貴重な時間を割いて論文原稿に目を通し,コメントを書いてくれている.気に入らないコメントだったとしても,まずは,査読してもらったことに感謝するのが筋だろう.コメントへの回答にも誠意を尽くそう.

回答書を作成する必要がある場合,査読者のコメントをそのまま全部引用しつつ,その指摘や質問に対して1つずつ回答を書く.1対1対応で回答を書くことによって,それぞれのコメントにどのように対応したか(あるいはしなかったか)が明確になる.また,この際,査読者のコメントと著者の回答を判別しやすいように書く.私はいつも査読者のコメントを四角い枠で囲うようにしている.

専門分野が離れているためか,的外れな指摘をする査読者がいるのは確かだ.そのような指摘には反論する.相手を馬鹿にするのではなく,こちらの意見を伝える.必ずしも査読者のコメントに応じて論文原稿を修正しなければならないわけではない.中には,あまり関係ない査読者自身の論文を引用するようにと助言してくる査読者もいる.査読者は匿名なのだが,コメントを読めば分かる.そういうマナー違反な助言は,理由を書いて無視すればいい.

さて,合計5回にわたって「論文執筆アドバイス」を書いてきた.後日手を加えることがあるかもしれないが,伝えたいことは伝えられたと思うので,このテーマはひとまず終わりにしよう.

© 2020 Manabu KANO.

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