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自分の研究を位置づける

学会発表に加えて,修論発表や卒論発表など,学生であっても,自分の研究について発表する機会はいくつもある.就職活動でも研究発表を求められることもあるだろう.

そういう発表において,もちろん,研究の背景,目的,方法,結果,結論を述べているはずだ.しかし,その背景や目的が,その発表の範囲内のものでしかなければ,不十分と言わざるをえない.もっと視野を広げて,先まで見通して,自分が今取り組んでいるのは,一体何を実現するためなのかを,研究の当事者として明確にしておく必要がある.

その最終目標には自分だけでは到達できないかもしれない.修論や卒論の範囲では無理かもしれない.むしろ,無理なことがほとんどだろう.それでも,その遠大な目標を達成するまでの道程において,今,自分はどこにいるのか,どこまで達成できていて,今何が問題の本質であるのか,そのような問題意識をいつも持つようにしていないと,道を逸れて,いわゆる重箱の隅を突くような研究に陥ってしまいかねない.

もちろん,脇道に逸れたがために,とても面白い問題に遭遇できるということはある.私にもそういう経験がある.専門分野以外にアンテナを張り巡らしておくことも重要だ.しかし,事柄の軽重を判断するためには,やはり視野を広げて,大所高所から見ることが必要になる.システム科学・システム工学的に研究するというのは,そういう視点を持つということでもある.

研究発表の場が与えられたとき,今一度,自分の研究について整理してみよう.修論や卒論の内容にとどまらず,もっと視野を広げて,先まで見通して,一体,自分が取り組んでいる研究の最終目標は何なのか,どこで,誰に,どのような影響を与えたいのか,その最終目標に至るまでに超えなければならない障壁はどのようなもので,今,自分はどの障壁を突き破ろうと(あるいは巧妙に回避しようと)しているのか,そのように俯瞰的に研究の全体像を把握することによって,自分の研究の意義が明確になる.そうすれば,研究発表にも自信を持って臨めるはずだ.

研究のビジョンを持つといってもよいだろう.そして,この問題は解く価値があるのか,と問い直してみる.そうすれば迷子になることはない.

© 2020 Manabu KANO.

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