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【読書】FACTFULNESS(ファクトフルネス)

主著者であるハンス・ロスリング氏の医師としての人生経験が強烈で,説得力が半端ない.自分がどれだけ世界についての知識のアップデートを怠ってきたかに愕然とさせられる.クイズにまるで正答できない.まさにチンパンジー以下だ.(泣)

ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,「FACTFULNESS(ファクトフルネス) ー 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」,日経BP,2019

今の世界について知っているか?

例えば,以下のような質問が用意されている.

質問1:現在,低所得国に暮らす女子の何割が,初等教育を修了するでしょう?
A:20%,B:40%,C:60%

質問3:世界の人口のうち,極度の貧困にある人の割合は,過去20年でどう変わったでしょう?
A:約2倍になった,B:あまり変わっていない,C:半分になった

質問9:世界中の1歳児の中で,なんらかの病気に対して予防接種を受けている子供はどのくらいいるでしょう?
A:20%,B:50%,C:80%

答えは本書を読んで確認して欲しい.

10の思い込み

本書で提示されているような質問に対して,最もネガティブで極端な答えを選ぶ人が多いのは,「ドラマチックすぎる世界の見方」が原因だと指摘されている.世界のことについて考えたり,推測したり,学んだりするときは,誰でも無意識に「自分の世界の見方」を反映させてしまう.だから,世界の見方が間違っていたら,正しい推測もできない.

ところが実際には,世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に参加して大きな影響力を行使するような人達も,一流大学の教員や学生も,巨大企業の役員たちも,まるで世界の現状を知らない.そんな間違った現状認識で正しい意思決定ができるはずがない.それもこれも,知識のアップデートを怠ってきたせいだ.幼稚な思い込みのせいだ.

以下,本書「ファクトフルネス」で指摘されている10個の思い込みを列挙しておこう.

1.分断本能:「世界は分断されている」という思い込み
実際には分断はなく中間部分に大半の人がいる.この思い込みに対処するためには,平均だけでなくバラツキを見ること,極端な数字だけで比較しないこと,上から目線に囚われないことが大切である.

2.ネガティブ本能:「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み
悪いニュースの方が広まりやすく,少しずつ良くなっていることを知る機会は少ない.この思い込みに対処するためには,「悪い」状態と「良くなっている」変化は両立することを理解し,美化された過去に気を付けることが大切である.

3.直線本能:「世界の人口はひたすら増え続ける」という思い込み
未来は過去から現在までのまっすぐな延長線上にあるとは限らない.この思い込みに対処するためには,色々な形の線がありうること,何にでも直線をあてはめないことが大切である.

4.恐怖本能:「危険でないことを恐ろしいと考えてしまう」思い込み
誰でも危害・拘束・毒を恐れて,リスクを過大評価する.この思い込みに対処するためには,怖がる前に現実を見ること,リスクを正しく計算すること,落ち着いてから決断することが大切である.

5.過大視本能:「目の前の数字がいちばん重要だ」という思い込み
ある数字だけでその大きさや重要性はわからない.この思い込みに対処するためには,他の数字と比較したり割合(ひとりあたり)を求めたりすること,些細な項目ではなく主要な項目に注目することが大切である.

6.パターン化本能:「ひとつの例がすべてに当てはまる」という思い込み
パターン化(ステレオタイプ)は間違いを生み出しやすい.この思い込みに対処するためには,同じ集団の中にある違い,違う集団のあいだの共通点,違う集団のあいだの違いを探すこと,そして自分以外はアホだと決めつけないことが大切である.

7.宿命本能:「すべてはあらかじめ決まっている」という思い込み
国や文化などが変わらないように見えるのは,変化がゆっくりとしているから.この思い込みに対処するためには,小さな進歩に気付くこと,知識をアップデートすること,価値観や文化が変化した例を集めて知ることが大切である.

8.単純化本能:「世界はひとつの切り口で理解できる」という思い込み
ひとつの視点だけでは世界を理解できない.様々な角度から見ることで,物事を正確に理解できる.この思い込みに対処するためには,自分の考え方を検証すること,知ったかぶりしないこと,単純なものの見方と単純な答えには警戒することが大切である.

9.犯人捜し本能:「誰かを責めれば物事は解決する」という思い込み
誰かを責めると,他の原因に目が向かなくなり,同じ間違いを防げない.この思い込みに対処するためには,犯人ではなく原因を探すこと,ヒーローではなく,社会の仕組みを支える人達に目を向けることが大切である.

10.焦り本能:「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み
今決めなければならないようなことはほとんどない.この思い込みに対処するためには,自分の焦りに気付くこと,深呼吸すること,時間をかけて正確で重要な情報を見ること,占い師には注意すること,過激な対策に注意することが大切である.

今の時代だからこそ読もう

文章はとてもわかりやすく読みやすい.ワイドショーやデマに踊らされる人も多い現代において,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で社会が混乱している今こそ,本書「ファクトフルネス」を読んでおいて損はない.おすすめ.

書籍の情報ページ:
ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,「FACTFULNESS(ファクトフルネス) ー 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣」,日経BP,2019

© 2020 Manabu KANO.

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