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【怪異譚】本所七不思議

 江戸は本所(東京都墨田区)であったとされる奇談・怪談を集めた本所七不思議。
 これを元ネタに現代風にアレンジしたら、面白いだろうと思ったのが、キッカケだった。

送り提灯

 夜道を歩くと、前方にちょうちんの明かりが見える。近寄ると消え、また前方に現れる。
 提灯の明かりでなく、拍子木の音にすると、送り拍子木となる。

 単純に今なら、車のライトだろうと、話の筋は、ほぼそのままで現代の設定とした。

馬鹿囃子

 夜中に耳をすますと 笛や太鼓の祭り囃子が聞こえてくるが、どこで鳴っているかが分からず、音のいる方向へ近寄ってみると、いつの間にか知らないところに立っている。

 以前はネット上で炎上することを「マツリ」などということもあり、それならば現在の祭囃子はサイレンの音なのかもしれないと思い、サイレンを追う人という設定で作ってみた。

片葉の葦

 駒止橋付近の堀に生える葦は片方の葉しかついてないという自然現象の由来譚が、ストーカーが娘の片手片足を切り落として殺し、その堀に捨てたから、というもの。

 片葉の葦の不思議より、その由来のストーカーがバラバラ殺人をするというケースが怖くて、色々と調べていたら、実際に似たような話があり、驚いた。
 葦の代わりに、片足の足跡という設定。

燈無蕎麦(あかりなしそば)

 蕎麦屋の屋台が、いつ行っても店の主人がおらず、明かりの行灯が常に消えている。逆に、灯がいつもついている「消えずの行灯」というバージョンもある。

 一晩中、明かりがついている店なら、今ならもちろんコンビニだろう。店主がいない屋台、店員がいないコンビニという状況設定。

足洗邸

味野という旗本の家の天井から、毎日「洗え」と言って大きな足が降りてくる。

  最初に思いついたのは、インターネット黎明期、色々な人のホームページの掲示板に現れては、ホームページの感想など書かずに「足跡ペタペタ」とだけ書いて去っていく人の存在。
 現代だと、LINEのメッセージかな?と思い、こうなった。”荒井”なるものは、もちろん駄洒落だ。

津軽の太鼓

大名屋敷の火の見櫓では、火事が起きたら板木を打つのだが、津軽家だけは太鼓を叩いて知らせていた。

 津軽の太鼓ではなくツガルの代行という地口。
 話の肝は津軽家だけ奇妙だ、ということなので、変わった代行車を考えていたら、西岸良平の「鎌倉ものがたり」に魔界専用タクシーという話があったなと思い、タクシーがあるなら代行もやっているんじゃないかと思った次第。

置いてけ堀

 錦糸町駅あたりの堀で、釣りをしていて、夕方釣り上げた魚を持って立ち去ろうとすると、堀の中から「置いてけ、置いてけ」と怪しげな声が聞こえ、怖くなって逃げかえって、魚籠を見ると魚は一匹も残っていなかった。

 話の象徴である「置いてけ、置いてけ」のフレーズが使いたかったのだが、現代でと考えると、海外の人が、ちょっと間違えた日本語の使い方として、使っているという設定しか思いつかず、こうなった。
 元ネタでは、狸に化かされただが、身ぐるみはがされて神社で寝ていたという内容にしたため、狐が化かしたことにした。

 という感じで、本所七不思議を現代風にアレンジしてみた。怪談と言われるわりに怖いと言われることが少ない話であるが、現代の設定とすると、案外と怖い話になるのではないだろうか?

 「落葉無き椎」の話は「オチは無いらしい」という結末でご勘弁を。

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