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【ふしぎ旅】オサル地蔵

 新潟県新潟市(旧巻町)に伝わる話である。

 昔、峰岡に親孝行の娘が住んでいた。
 非常に働きもので、朝から晩まで猿のように働くから、周囲のものからはオサルと呼ばれていた、
 ある日、オサルは巻の市まで、自分の織った反物を売りに行き、その帰り道、村の入り口の地蔵堂の前まで来た時、突然、お堂の中から盗賊が現れ、袈裟懸けに切られた。
 オサルは、そのまま気を失ったが、目を覚ますと、切られたはずなのに痛くも無いし、どこにも傷は無く、血も流れていない。懐の中に入れておいた金もそのままだ。
 辺りを見回すと、自分を切った盗賊が倒れており、お地蔵様の肩に大きな傷がついていた。
 オサルは、お地蔵様が自分の代わりになってくれたのだと、感謝したという。

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 人の代わりに、地蔵様が切られる。
 あるいは逆に切られた者の霊を鎮魂するために地蔵様が立てられるが、地蔵様に切られた傷がいつの間にか付いている。

 袈裟懸け地蔵の話は、よくある話で、新潟県内にもいくつか残っている。

 このお地蔵様は、その中でもいまだに周囲の信仰厚く、私が訪れた時も、堂の中には線香の匂いがしていた。
 孝行娘にちなんで、若い娘には良縁を授けてくれるらしい。

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お地蔵様がある場所は、今でも辺りは田圃、畑ばかりで、寂しいところで、人を襲うには、丁度よい所だったろう。

オサルという娘の名前が、美人では無いが、愛嬌ある娘を想像させる。

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