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【ふしぎ旅】チカモリ遺跡

 石川県金沢市の住宅の中に”チカモリ遺跡公園”というところがある。
 ”遺跡公園”ということからも分かるように、縄文時代の遺跡が発掘されたところであり、その遺跡を復元したものが置かれている。

 住宅街にあるのも当然であり、昭和55年に住宅区画整理をしているときに大々的に発見され、遺跡はあくまでも公園内に復元されただけであり、実際には公園から少し離れたところから発掘されたとか。

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 実際にはこの道路の下あたりから家にかけて発掘されたと言うことだ。

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 さて、チカモリ遺跡であるが、ある種の歴史好きには”ウッドサークル”というもので知られている。
 石を環状に組み合わせてつくられるストーンサークルは秋田県鹿角市大湯のものなどが有名であり、知っている方は多いであろうが、ウッドサークルなるものを聞いたことがある人は少ないであろう。そう言われることが珍しいからだ。学術的には環状木柱列(かんじょうもくちゅうれつ)という名前で呼ばれている。

 ウッドサークルがどういうものかと言えば、ストーンサークルの石が木に変わったものであり、木が環状に建てられているものだ。
 主に北陸地方の縄文時代の遺跡から見つかることが多く、中でも、このチカモリ遺跡のものは、規模が大きく、見ごたえがある。

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 公園内に復元されたウッドサークルは、太さが約80cmくらいのクリの木の丸太を半割りにしたものが直径10mの円周上に整然と建てられている。
 地上2mまで復元した物とあるので、実際はもっと高いものだったのかもしれない。

 説としては色々あり、それこそストーンサークルのような祭祀施設だとか、あるいはトーテムポール的なものなものであると言われている。
 おそらくは集会場などに使用された大きな建物ではという説が有力なのではあるが、それにしても、これを基礎とすると、高さが10mくらいと、縄文当時としては、かなりの高さになる。

 いずれにしても、仮説の話であり、真実は縄文人のみぞ知ると言うことだろうか。
 ただ、仮に建物の柱とするならあまりにも太すぎる気がするのだが、それは現代人の感覚なのだろうか。
 木を半割にする技術があるのだから、さらにそれを割るということも出来そうなのではあるが。

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 さて、このチカモリ遺跡公園には、ウッドサークルだけではなく他の遺跡部も発掘されている。
  ウッドサークルのすぐ隣には6本の柱が長方形に、そして10mくらい離れたところには4本の柱が正方形に建てられている。
 建てられているところは異なるが、位置関係は発掘時と同様に作られているとか。

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 これらの柱が、何らかの建物跡と予想されることから、ウッドサークルも建物跡とされている。
 それにしても正方形ということからも分かるようにこの遺跡を作ったとされる縄文の人達は、キチンとした尺度を持っていたようだ、
 有力な説では肘から指の先までの距離が縄文尺(縄文人の尺度)であったとか。

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 このチカモリ遺跡はこれらの他にも、小型のサークルが20数基、他何本もの列状木が見つかり、その数は360点余りになるとか。また石器なども見つかりそれらはこの公園のすぐ脇にある埋蔵文化センターにて公開されている。

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 展示物の中には、石の矢じりや腐食しないように合成樹脂で固められた埋蔵木があるわけだが、圧巻なのは巨大な水槽に収められた遺跡の埋蔵木であろう。

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 埋蔵木は乾燥するとボロボロになるらしく、かといって合成樹脂で固めるのは、かなり費用がかかるそうで、こうやって塩素水の中に沈めて保管されているのだとか。
 木柱はクリの木なので、水にしずみ、そして水に強いと言うことで、このような保管法がとられているそうだ。
 
 このように実際に発掘された木を見て非常に興奮すると同時に、そこに確かにあったであろう縄文人の意図が分からないことに、少しもの悲しさも感じるのであるが、それを妄想で補うのが、研究者でない者の楽しみであろう。

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