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お店に来てもらうためのアプリから、来てから使ってもらうアプリへ

意外と少ない?ネットで買い物をするユーザーの割合

オムニチャネルやOMOといったキーワードが示すように、消費者の購買行動はデジタルとフィジカルの境目をめまぐるしく往来しています。購買行動における商品の認知やより知るための調べる行動の主流は、SNSや検索エンジンによって行われるのがもはや当たり前となりました。

では商品を実際に購入する行為に関してはどうでしょう?ECサイトがこれだけ普及しているのでオンラインでのお買い物をすることもごく当たり前になってきておりますが、数値で示された利用状況は僕が持つ肌感覚と若干異なります。

EC化率という言葉がありますが、これは経済産業省による調査で全ての商取引(店舗やネット、電話/FAX、対面販売など全て)のうちEC(インターネット通販)で取引された金額の規模の割合を示すものです。このEC化率を掲載した経産省の2019年度のレポートによると、日本の物販の総金額のうちECで販売された割合は6.22%となっています。雑貨・インテリアやアパレル業に絞っても10~20%前後で、ECに非常に力を入れているユニクロや無印良品でさえも15%を満たしません。え、こんなに低いの?という感覚を持ちませんか?

このようなデータからもわかる通り、約7~8割の消費者はまだまだ実際の店舗に訪れて物品を購入しているわけで、店舗がマーケティング上重要な役割を持つのは現在でも変わらないと言えるのではないかと思います。

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参照:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/H30_hokokusho_new.pdf

ユーザーの買い物体験は、DigitalとPhysicalを常に行き来する

消費者は商品を購入する際にはデジタルを徹底的に駆使してその商品を買うべきか否かを判断します。そのような探索行動を貴重な情報として有効活用し生まれたサービスや技術が、リスティング広告やDSP/DMP、リターゲティングといった手法となります。それらによってオンライン上でのひとりひとりの消費者の行動が可視化され、物を売る側は精度の高いターゲティングによる販促活動ができるようになりました。

しかし先程述べたように約7-8割の消費者が実際には店舗などのフィジカルな場所で購入を行っている現状を鑑みると、いくらオンライン上で高精度なニーズ予測が出来たとしても、実際にその予測が当たったか(つまり実際に購買に至ったか)の判定が難しいのが現状です。何故ならオンライン上で捕捉していたユーザーがどこの店舗で何を購入したかまでは追えないからです。ここに一連のユーザー体験上における貴重なデータの断絶が生まれているわけです。

お店に来てもらうためのアプリから、来てから使ってもらうアプリへ

オンライン上にあるユーザーひとりひとりの属性や行動などのプロファイルデータと、そのユーザーの店舗訪問履歴や店舗内での行動、購買データ等を繋げる有効な手段の一つとしてスマートフォンアプリがあります。しかし多くの企業が自社のアプリを提供しているにも関わらず、上記観点での活用を意識したアプリはまだまだ多くはありません。

これまで小売業界の企業が提供してきたアプリの多くは自社店舗への誘導を目的としたものが多かったと思います。割引クーポンを発行したり、電子チラシを掲載したりするものがそれに当たります。そのようなアプリは、いかにしてお客様をお店に来させるかを意識した作りとなっており、お店に来てからの体験を意識した機能という面ではあまり豊富ではありません。しかしこれからは上述のようなビジネス観点での必要性からも、お客様がお店に来てもらってからの体験を充実化させる機能をアプリに実装するニーズが高まってくるのではないかと予想しています。

お店に来てから使うアプリの機能とは?

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上図は、店舗に行くまでに利用者が使う機能と店舗に着いてから使う機能を分類したものです。店舗に行く前に利用する機能は既によく利用されつつあります。(青字)マクドナルドやスターバックスなどがモバイルオーダーペイメントのサービスをリリースしたことによりだいぶ身近になってきましたが、まだまだ対応しているお店は少ない印象です(緑字)。また、コロナ禍で俄然注目度が上がっているライブコマースもこれから普及が進むと思われます(黒字)。

一方で店舗に着いてから使うスマホアプリの機能はまだ普及前の段階のものが多いです。ひとつずつご紹介します。

ポイント閲覧/利用
お店が独自に発行しているポイントの残高が確認出来る機能です。更にそこから画面のバーコードをレジで掲示することによってポイントの利用が出来るものに分類できます。ビックカメラやヨドバシカメラのアプリの機能の一つとして有名です。

クーポン利用
店舗で利用できるクーポンがアプリの画面に表示され、その場で利用できる機能です。セブンイレブンなどコンビニエンスストアやマクドナルドなどのファストフード店で利用しているシーンをよく見受けますね。また、アパレルのGAPのようにスマートフォンアプリではなくLINEの中でクーポンを提供する形を取る企業も非常に増えてきました。

キャッシュレス決済
現金やクレジットカードを使ってお店で支払うのではなく、アプリにあらかじめ設定された決済手段によってQRコードやバーコードなどでキャッシュレスで支払う形の機能です。PayPayなどのキャッシュレス決済の普及が進んでいますが、お店のアプリ内に決済機能を備え付ける方法となるため、まだこの機能を備えたサービスはあまり多くありません。
三井ショッピングパークアプリは、ららぽーとなどの施設で本機能を実現し、店舗レジに置いてある専用端末にスマホをかざすだけで決済ができる仕組みを導入しています。

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参照:三井ショッピングパークアプリ アプリde支払い

セルフオーダー

飲食店などで導入する企業が増えてきている機能です。ファミレスや回転寿司のお店でタブレット型の端末を用いてオーダーを行うのはだいぶ普及してきましたが、この機能はユーザーが所有しているスマホからオーダーを行う仕組みです。様々な仕組みのものが出てきておりますが、お店の自席にQRコードが表示されておりそれを読み込むとメニューが表示されオーダーが出来る仕組みです。
例:キリンシティが手掛けるクラフトビールのお店「クラフトマルシェ」

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出典元:流通新聞

セルフレジ
スーパーマーケット等での導入が進んでいる機能です。ユーザーのスマホと店舗のレジが連携しているサービスとしてはスーパーマーケットカスミの『スキャンアンドゴー』があります。お店公式のアプリをあらかじめダウンロードしクレジットカードを連携しておくことで、購入する商品のバーコードをアプリで読み取り所定のレジでQRをかざすだけで決済が済みます。レジが混んでいる時に利用すると行列に並ばずに買い物を済ますことが出来ると行ったメリットがあり、今後普及が進んでいくことが予想できます。
似たものとしてイオンのスーパーで「レジゴー」というサービスが開始していますが、こちらは店内に置いてある専用スマホを利用する形で提供しています。レジゴー専用レジに進むことで精算が完了する仕組みはカスミのスキャンアンドゴーと同様ですね。

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参照元:日経XTECH

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参照元:日本食糧新聞

サイズtoオーダー
アパレル業界で注目されている機能/サービスです。自分の体型を細かく採寸するサービスを店舗で受けられます。オーダースーツD2Cブランドの『FABRIC TOKYO』が提供しているサービスは3Dスキャンによる自動採寸で自分にあったジーンズがオーダーできる仕組み
を提供しています。服をECで購入する人にとって、届いた服のサイズが自分に合わないといった失敗はわりとよくあることだと思います。あらかじめ自分の体型を精密に採寸しておき、その後はその採寸データに沿って最適なサイズの服をオンラインで選び購入するといった体験は普及していくのではないでしょうか。

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参照元:STAMPβ by FABRIC TOKYO

オンライン接客
コロナ禍でにわかに注目され始めた接客スタイルです。厳密には店舗に行って使うアプリの機能ではありませんが、自宅にいながら目当ての店舗の店員さんと会話をしながら商品を購入できる仕組みです。ライブコマースと似ていますが、ライブコマースは1対多人数でのコミュニケーションの場合が多いですが、オンライン接客は1対1で会話することが前提となっています。まだ導入は実験段階な場所が多いですが、先日8月10日に小田急百貨店がウェブ会議ツール「Zoom」を用いてアクセサリーを紹介する試みを行いました。

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参照元:FASHIONSNAP.COM

混雑度チェック
こちらもコロナ禍においてニーズが高まっている機能と言えます。例として、星野リゾートは今年6月1日から一部宿泊施設にて、大浴場のリアルタイムな混雑度がスマホで確認できるサービスを開始しました。ホテル・旅館などの宿泊施設だけでなくショッピングモールなどの大型施設でもこのような混雑度が分かる仕組みは増えていくのではないでしょうか。

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参照元:星野リゾート

加速するスマホと店舗の融合型体験
ご紹介したような機能やサービス以外にも、今後ますます店舗でのフィジカルな体験とスマホの機能が融合していくことが予想されます。このnoteではそのような参考事例となる各企業の取り組みを実際に体験してみた記事も書いていこうと思います。

よろしくおねがいします!

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