神様になりたかった

同人女の話です。
今は昔、ある村に神がおりました。神はサイト運営、デザイン、漫画制作(シリアスからギャグまで)その全てにおいて高クオリティで、多くの民の魂を救っておりました。

私はキャラ名Google検索56ページ目で神を知り(検索よけから溢れたWebページだったかと思います)、すぐにサイトをブクマしました。神の過去ログ絵、日記、全てに目を通してサイト日参していた私は、ついに中古同人ショップで神のオフ本を手に入れました。(全て完売本だったため中古以外の入手方法がありませんでした)
同人誌ってこんなに面白いのか…!
生まれて初めて読んだギャグ同人誌の素晴らしさに感銘を受け、その時はただ作品の素晴らしさを享受する喜びに打ち震えていました。

そんな時、村でお祭り(ジャンルのプチオンリー)が開催される事になりました。主催は神です。私は身体を壊していたため不参加だったのですが、神の開催されるお祭りに合わせて神々が本を出し、レイヤーさんがコス参加され、村人が集う楽しいお祭りとなったことを神制作によるお祭りのサイトのご報告ページにて知りました。この次のお祭りには、絶対に参加しよう…!そう心に決めた私は療養に気張りました。

そんな時です。黒船がやってきました。超絶流行旬ジャンルです。マイナージャンルである私の村にもその船の波は届き、あろうことか神はその船に乗ってしまいました。
神はその村に数年滞在し数冊も本を出し、原作がえげつない終わり方をしてからもしばらく活動されていました。そんな同人作家のジャンル移動を、誰が止める権利があったのでしょう。
当時の私は同人活動もしたことがなく、ただただ悲しみに打ちひしがれていました。無力…あまりにも無力。

それから半年ほど経ち、私はその村で初めての同人誌を出しました。そこに至るまでの経由ははしょります。そしてその村の方が打ち上げに誘ってくださり、初めてのアフターを経験する事になりました。
待ち合わせ場所にいた見知らぬ女性。「今日は違うジャンルで参加されてたんだけど、ぜひ打ち上げに来たいと言っててね!紹介するわね、〇〇さん」
その人は、私が崇めたあの神でした。
私はまさかご本人にお会いする機会が訪れるなどとは予想せず、ただひたすらにテンパっておりました。神は同人活動を始めたばかりの私に労いの言葉をくださり、お酌までしてくださりました。それに対して私はどう応えるのが礼儀なのか悩みつつお酒を飲んでいました。楽しい会話をし、村の話で盛り上がる酒宴。
神は、性格まで神でした。実るほど頭を垂れる稲穂かな、とはこのことだと思いました。
その時、思ったのです。私もこういう人になりたい、と。私も善き村人でありたい、私も誰かを救いたい、と凡人がおこがましい望みを持ってしまいました。

それから8年が経ち、私もいくつかの村々を巡り、現在は活気と落ち着きを兼ね備える村に定住しております。すっかり私は一匹のちっぽけな同人女に成長していました。
8年の間には様々な出会いや喜びがありました。最近ようやく自分の描きたいものと描けるものが交わり始めた実感があり、とても楽しい同人ライフを満喫しています。
今のジャンルに来てから、色々な機運に恵まれ今までにない反響を頂くことが増えました。
あろうことか、私を「神」と言ってくださる方もいらっしゃいました。おそらく大きめに褒めてくださっただけだと思うのですが、お気持ちは大変嬉しかったです。ただ、「神」と呼ばれたその時の気持ちは、恐れ多さでした。
天ないの翠ちゃんよろしく「神なんかじゃない、普通のオタクだよ」と心で呟き、その時気付いたのです。
神ではない、人間だから出来るのだ、と。何事も。
私は実績や才能もなく、単なる凡才なのですが、それでも同人誌を出す度にとても色々なことを考え努力をしてきました。
もしかしたら、私の神もこのように試行錯誤して神となられたのか…?と、ちょっと褒められたただけで神の気持ちを理解したような気になってしまいました。

私の神は現在は同人活動から離れていらっしゃいます。ツイッターでもお姿を拝見することはもう数年単位でありません。もしかしたらどこか他の村にいらっしゃるのかもしれません。それでも構いませんねッ!
かつてあの人が残した作品がある。それだけで十分です。
神様になって人を救いたいというおこがましい望みを持った私は、今や自分だけが救われればいいや!というスタンスで同人活動をしております。
うわっ神だ!と思う人を見かけても、この方もきっと自分と同じ人間なんだ、と思うように心がけています…いますが、神は神なんだよなぁ。



一日も早く事態が収束して、また有明だのTRCだので同人女たちと会える日が来るといいですね。

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