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要約、概要、短縮、抄録、省略
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#小説

ため息のような停車音。民家が減って、田んぼも減ってきて、名前の知らない木ばかりになった。「長旅だから」リュックを枕に、居眠りをする君の頬を、夕焼けが照らして、その無防備な愛らしさに、僕は幸せを感じるのです。永遠は御伽噺だ。だからこそ始まりは、静止画みたいに。空寒い、ベルが鳴った。

野原
3年前
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メアリー、虹の始まりを知ってるかしら。夢と現実の境目があって、辿り着けばずっと、幻の中で暮らせるの。ねえメアリー、私、行かなくたって幸せだわ。ずっとここで、一緒にいたい。それ以上望まないから、それだけは、お願い。そう、行くの、人って欲に限りがないのね。
それとも、これも夢かしら?

野原
3年前
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宝石、透かせば、この世の全てが見えそうなくらい、純粋で美しい。これを誰もが欲した。僕は裏切り、欺き、宝石を血で塗れた手で触れないよう、丁重に包んだ。高く売れるらしいが、この国で僕の顔は、側溝を這うネズミだって知ってる。やっと着いた隣国で、これは汎用的に窓の素材へ使われると知った。

野原
3年前
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「どきどきするね」殆ど摩擦音の、話し声。胃が、脳が、心臓が、君のものになる。「吸いながら燃やすんだってさ」細く白い陶器の指が、煙草の先端に火をつけ、けほけほと、笑いながら咽せて、貴方の番ねと差し出す。君は躊躇う僕に、意気地なし、と言いながら、唇をじっと見る。なんだよ、意気地なし。

野原
3年前
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