マーケティングにおける動画活用

マーケティングに動画を活用するためのフレームワーク

2015年からweb動画の制作からスタートした「動画制作セミナー」は、動画制作・活用支援実機の蓄積とともに内容をアップデートし続け、動画の企画セミナー、動画マーケティングの戦略策定セミナーというふうに内容を充実・拡張させてきました。現在では、総合的な動画活用セミナーとして企業の動画活用研修プログラムとして各所で提供しています。

この記事では、動画をマーケティングに活用したいと考えている方を対象に、セールスや採用に活かしたいと考えている方々にも役立つよう、ワークショップで提供している普遍的な動画活用の考え方、フレームワークを提示し、動画をより良く活用するための一助にして頂きたいと思います。

映像に対する固定概念を振り払え

まず、動画を企業で活用するにあたって、担当者の方が払拭しなければいけない固定概念があります。それは、企業が動画を制作・活用する以上、「クオリティの高い映像をつくらなければいけない」というものです。

ここでいう「クオリティの高い映像」は、テレビCMのようなものをイメージしてください。旬のキャストを起用し、目をひくロケーション、刺激的な映像効果、或いは感動を呼ぶ音楽など、私たちがもっとも目にしてきたものです。(※これはテレビをほとんど見ない世代には必ずしも当てはまりませんが、本記事では割愛します)

企業のマーケティング担当者の方や採用担当の方が動画を活用したいと考え、制作会社にオリエンテーションを行うとき、多くの場合、
「あのCMみたいな」
と、自分がテレビやYouTubeで目にしたCMを引き合いに出します。しかし、この考え方はマーケティングにおいても採用においても正しいとは言えません。

何の目的のために、動画を活用するのか?

テレビCMの目的は、認知獲得・向上が最たるものです。その映像は、バラエティやドラマなど、本来見たい番組が別にあって、その番組の合間に流れるという環境で視聴されています。ところがその映像を視聴するユーザー(生活者)はCMを見ることを目的にはしていません。CMを見ることを目的にしていないということは、ユーザーとCMの関係性はないに等しい。となると、CMを見てもらうためには、ユーザーの興味関心を強制的に呼び起こすために、旬のタレント、刺激的な映像効果、有名アーティストの楽曲などを使わねばなりません。

では、マーケティングで動画を活用したいという場合はどうでしょうか?
認知獲得・向上であれば、テレビCMと同じ考え方で良いですが、
展示会で一度ブースを訪れてくれた人へのメールに貼る動画なら?
Googleで製品名検索してくれた人が、遷移先の製品ページで見せる動画なら?
セミナーに来てくれた方に送る動画なら、どうでしょう?

マーケティングが見込客育成(リードナーチャリング)や既存客との関係性維持・向上を役割としているならば、テレビCMのような映像でなければいけない理由はありません。

動画をwebで活用しようとする場合、どんな目的・課題解決のために制作したいのか。それをどのメディアに掲載するのか。その場合のKPIは何にするのかといったことの戦略策定が疎かになりがちです。

そこで、ワークショップでは下図のような動画活用戦略マップを使用し、事例を提示しつつ、自社のケースに当てはめるとどのように戦略を策定すればよいかを、シートに記入しながら考えて頂いています。

画像1

動画のクオリティは、あなたの企業とユーザーとの関係性で考えよ

このようにして動画活用の目的を整理したうえで、動画のクオリティにについて考えていきます。制作する動画のクオリティを決めるに考慮したいのが、ユーザーと自社企業との文脈度・関係性です。下図をご覧ください。

画像2

下の横軸が、その動画を見せて動かさなければいけないユーザーの心・感情の幅。
縦軸がそうした動画を制作するときに必要なコスト(費用や時間)です。
もう1つ、上の赤線の横軸は、下の感情の軸とは高低が逆になっており、これはユーザーと企業の関係性・文脈度を表した軸になっています。

上述したように、テレビCMはそのCMを見たいと思って視聴していませんから、ユーザーとの関係性は低いです。そうした関係性にあるユーザーに対し、映像に興味を持ってもらうためには、ユーザーの首根っこをつかまえて「ほら、すごいでしょ!」と言わせるような映像をつくる必要があります。
その映像を見て、ユーザーに「すごい!」「かっこいい!」「感動した!」「面白い!」と思わせなければなりません。

では、ユーザーとの関係性が高い場合はどうでしょうか?

既に自社サイトやLP(ランディングページ)に来てくれているユーザーや、自社サイトを回遊後、商品詳細ページを閲覧しているユーザーであれば、企業との関係性は高いと言っていいでしょう。そうしたユーザーに呼び起こす感情は「すごい!」といったテレビCMのような感情である必要はありません。「そうなんだ」「なるほど」「納得!」といった感情で良いのです。これは表現を変えれば、ユーザーとのエンゲージメント度が高ければ、クオリティは必ずしも高くなくて良い、ということかも知れませんが、これについては別のnoteで考察したいと思います。

そうした動画制作にかかる費用は、相対的に低く収めることができるのです。動画制作に必要なコストは別の記事で説明しますが、費用をかければその分クオリティを高くすることができます。ただ、そのクオリティの基準をどこに定めるかでROI(費用対効果)が大きく影響を受けます。
企業のマーケティング活動で動画がいまなおうまく活用されていないのは、
動画制作にかけた費用に対して得る効果が低いといったことや、KPI設定が適切でないことに理由がありますが、目的に対するクオリティの基準の儲け方が適切でないことが大きな原因ではないかと考えます。

テキストと相互補助する動画を制作せよ

目的に対する動画のクオリティについておおよそのイメージを持っていただけたでしょうか?次にご紹介するのは、動画をマーケティングに活用したい方が、ユーザーとの関係性がある程度高い状態で使用する動画の制作方法です。

ここでもテレビCMを引き合いにして紹介致しますと、テレビCMはテレビという筐体で映像を視聴します。一方、webの場合はPCやスマートフォンなどの筐体で使用することが中心です。この違いは、テレビがテキスト・文字情報をも筐体内で動画として見せなければいけないのに対し、PCやスマートフォンの場合はwebページの中で動画を見せればよいということを意味します。(※Netflixなど全画面で映像を視聴するものは除外します)

webページにはすでにテキストや写真情報が存在しています。そこで十分に伝わっている情報であれば、それをわざわざ動画化する必要はない、ということです。

例えば、あるECサイトで子ども用玩具を紹介する動画を制作するとしましょう。
その商品購入ページには、商品タイトル、操作方法、価格、対象年齢、ユーザーの感想(レビュー)、メーカー、発売日、使用している素材、工法など、多様な情報が記載されています。そうした情報のうち、商品購入を検討しているユーザーに対して、テキストでは十分に伝わっている情報と、テキストでは十分に伝わらない情報を選別し、動画化する情報が何かを決定すればよいのです。

商品情報を伝えるにあたってテキストが得意なことはテキストに任せ、不得意なことを動画で表現する―と、考えてみましょう。

私は、この動画にする価値のある情報のことを、”「動画化価値」が高い”と表現しています。
動画化価値が高い情報とは、対象が動くことでその価値がより伝わる情報と言い換えてよく、食べ物であれば、お椀に盛ったお米からモクモクと立ち上が絵る湯気。ハンバーグを半分に割ってあふれ出る肉汁。お鍋のスープがぐつぐつと煮えたつ様子。氷の入ったグラスにジュースやビールが注がれて、カランカランと音がして氷がくずれる様子など。掃除機であれば、ゴミが吸い込まれていく様子や掃除機が通ったあとのビフォーアフター。マッサージ器であれば、グイングインと縦横無尽に動く様。ジュエリーであればキラキラと光が反射する様子などが動画化価値が高い情報です。

この動画化価値を軽んじることができないのは、クライアントであるメガECサイトにおもちゃ動画を制作して商品購入ページで配信したところ、製品の動きがよくわからない、使用方法がわかりにくいもので、かつ高価格の製品が、よく売れたという成果があることです。

誰が見ても使い方を知っているような製品であれば、動画化価値は高くありません。製品の操作方法、使用することによる効果がわかりにくいものを動画化すべきなのです。

みなさんの商品のうち、どの情報がテキストでは十分に伝わっていて、どの情報が動画化価値が高いかを、ぜひ考えてみてください。

動画をマーケティングに活用するにあたり、ここまで動画のクオリティと制作方法について解説してきました。大事なポイント2点をあらためて振り返っておきましょう。

●動画のクオリティは、目的や課題、ユーザーとの関係性によって変わる

●制作コストを下げ、効果を上げるために「動画化価値」を意識する

次の記事では、動画を活用したマーケティング効果を上げるための実事例とそこから抽出した考え方について解説しています。

みなさんのマーケティング活動においてこの考え方やフレームワークが役に立ちそうでしたら、ぜひチーム内で記事シェアください。

また、このフレームワーク制作に取り組むセミナー・ワークショップも、研修スタイルで一社ごとに提供しています。自社製品と動画化価値を発見し、どのような動画を制作していくか、必要性を感じて頂けましたら、お気軽にメッセージください。

こうしたフレームワークをさらに詳しく解説した書籍を刊行しました。

書籍の概要は下記の動画でも解説していますので、よろしければご覧ください。


明日、動画を活用せよと言われた時に役立つフレームワーク、切れば血の出る事例、ビジネスアイデアを紹介していきます。zoomを使ったオンライン個別相談にも対応していますので、お気軽にメッセージください。 https://www.1roll.jp/demo/