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494/1000 【最初の一歩】 あなたが目撃したことを (Believe in what you saw)

昨日の続き。


ミネソタ刑事逮捕局の特殊エージェント、ライアーソンさんの証言のポイントは、薬物使用についての証言。

I ate too many drugs(ドラッグを食べすぎた)

「フロイド氏はこう言っていますよね?」という弁護側の質問に対し、「そう言っているように聞こえる」と答えている。(55:45あたり)

そもそもこれは誘導質問で、検察側が異議を唱えないのが不思議なのだが、証言してしまったものは引っ込められない。

ただし、その後検察側は、「これを聞くのは初めてで、どう聞こえるかを確認したのも初めてか?」と反対尋問をしてはいる。

フロイド氏の死因が呼吸困難によるものなのか、それとも他のファクターが加味されていたのか(薬物使用、コロナによる影響、一酸化炭素中毒等々)に関わるかなり大事な場面だった。

薬物使用者を警戒した警察が力を使いすぎた、という方に持っていく基礎にもなりうる。

薬物については、フロイド氏の車内やパトカーで薬物が発見されるタイミングにも疑義があり、真実はよく分からない。誰かが仕込んだのでは?を想起させるようなやり取りがあったことも事実で、その検察vs弁護人の間で繰り広げられた法律用語のスパーリングに証人が振り回されていた感もある。

最後。呼吸関連の専門家、トービン先生の証言。「呼吸をするとは」に始まり、フロイド氏の肺活量、体内の残酸素量等、当日の動画をスロー再生しながらの科学的な説明が繰り広げられた。(一部、「賢い人が簡単な言葉で説明しようとしたらもっとこんがらがった」沼が広がった。専門家あるある)

That's the moment life goes out of his body。この瞬間、彼は息を引き取ったのです。(2本目、1:12:00前後)

ゴンゴン動画を見せられながら淡々とそんなことを言われたら、遺族の方々辛かろうよ...

フロイドさんが最後に動いていたのは、逮捕への抵抗ではなく、ただただ呼吸をするためであったことを、ここまで極めて科学的に述べられると、こちらも一緒に呼吸困難になりそうになる。

ものごとの見え方を決めつけてはならない。どんなことであっても。

3本目では、ゆっくりと呼吸ができなくなって死んだ場合、解剖してもその痕跡は残らないことをじっくりと証言されていた。

彼の死因が解剖結果ではっきりしなかったことも今回の裁判を難しくしているのだが、なぜそうなのかが彼の証言で腑に落ちた。

解剖結果ではっきりしないからこそ、フロイド氏の死因の一部は、一酸化炭素中毒やドラッグのオーバードーズ、そもそもの基礎疾患等も一因なのでは、と弁護側に主張する隙間を与えていたのだ。

だからこそ、ここまで丹念に呼吸ができなくなって酸素が無くなり、臓器が止まったと説明しなければならなかったのだ。この先生の証言でもはや有罪は確定になったかに思える。

だが、情状酌量の余地を感じる人が1人いればショービン氏は有罪にはならない。3つの罪状があるわけだから、議論の末にどれかが無罪になる可能性もある。陪審員の議論の中では、そんな譲歩の仕方もあり得る。

「12人の怒れる男たち」のように、たった1人がほんの少しの疑いを持っていたならば、陪審の結果がどうなるかなど誰にも分からないのだ。

そんな思いも、検察側の最終弁論を聞いて、全て消えた。

57:00くらいに、20ドルの偽札を使って買い物をした後、自分の車に戻ったフロイド氏が警察にアプローチされたところの映像が出てくる。いきなり銃を突きつけられたら、誰だってパニックを起こすだろう。

それでも彼は警察に従い、パトカーまでついていく。路上に座れと言われれば座る。だが、自分が連行されることとなるパトカーの狭い後部座席を見て「閉所恐怖症」と口走ったのだ。

I'm not trying to win. I' scared.((警察に)勝てるなんて思ってない。怖いだけなんだよ)

例え閉所恐怖症では無かったとしても、パニックを起こしていたことは間違いない。そして彼は車から一瞬でも出して貰えたことに「Thank you」と言っている。その直後、フロイド氏は3名の警官に拘束され、ショービン氏が首と背中にかけた9分30秒の力の作用で、ゆっくりと呼吸困難になり、死に至った。

州にも、裁判長にも、彼を有罪にする力はありません。彼を有罪にできる力を持っているのはあなた方なのです。この権力行使は過剰であると声を上げられるのは、あなた方だけなのです。

そんな言葉が最終弁論の終盤にあった。

当時、この事件を目撃していた人々は無力でした。それでも自分にできることを全て行ったのです。動画をとり、アップロードし、そして証言台に立ったのです。

人には力がある。社会を運営するために、その力の一部を公権力に託している部分もある。だが、最終的に力を持っているのは、市民一人一人なのだ。だから州は皆さんに委ねる。そんな言葉が続いていた。

結果的に10時間の議論ののちに速やかに全ての罪状で有罪判決が出た。

そこに私は裁判関係者の覚悟を感じる。

どんなことがあっても今回ばかりは妥協をしないこの差別の連鎖に終止符を打たねばならない。その決意の眼差しの強さを感じた。

1月の議会占拠等も歴史の教科書もんの出来事だったけれど、この裁判も、歴史にも裁判史にも残ると思う。

What you saw happen, happened. (中略)Believe in what you saw. (みなさんが見た事は、事実です。ご自身の目を信じて、判断してください)

3日前、公正な裁判を受けられなかったことから、本裁判のやり直しが申し立てられた。

更に、残りの警官に対する連邦地裁への起訴が今日、発表された。

アメリカは、一気にウミを出そうとしているのかも知れない。

protect with courage 勇気で守り
serve with compassion 思いやりで奉仕を

日本にもこんな言葉があった... と思っていたら、愛と勇気だけが友達な人がいた。

大事な事は物語が教えてくれる。これは古今東西の事実。

そして日本にも差別は確実にある。見えにくい分、より厄介だと思う。

この一歩が、日本にとっても大きな一歩になって欲しい。そう信じてやまない。

明日も良い日に。







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