70/365 【ショートショート】 フォーフォーフォー
フォーフォーフォー
こう書くと遠吠えするバルタン星人のようだが、これでちゃんとした文章なのだ。英語で書くと、
Pho for four (フォーを4人前、お願いします)
ベトナム料理屋さんにお友達4人で行くとする。きっとお昼時だ。昔馴染みの4人組。
その中の一人が最近旅行したベトナムでフォーにハマり、帰国後、あの味の追体験をしながらベトナムを語りたい!と思い立ち、いつもの仲間を誘ってきたのだ。
4人はウキウキしながら席に着く。みんなが揃うのも久しぶり。4人がけのテーブルの端っこには、ニョクマム。長方形の藤のかごには、お箸とスプーンが数膳、端然とスタンバイしている。
メニューを開くまでもない。だって彼女のお誘いを受けて以来、今日のお腹はアレ仕様になっている。バインミーも生春巻きも目に入らない。いわんやご飯ものをや。
そして主役の彼女はおもむろにウェイターを呼び、オーダーをする。
「フォーフォーフォー」
フォーを4人前、お願いします。
そして彼女らは、やれベトナムの小物はいちいち可愛いだとか、ハロン湾クルーズで立ち寄ってくれる鍾乳洞は最高だとか、ベトナムのお土産話に花を咲かせる。
あっさりとした鶏出汁スープにパクチーを乗せた、透明なツルツルの、4人の為のフォーを待ちながら。
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