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56/365 【祈り】 瀬戸内海の恵み

2020年、感情noteを始めます。心が震えたお芝居や映画や本、訪れた場所といったコト録も続けますが、それらは言わばハレの日。その合間にある「普通」の毎日を、も少し書いてみたいのです。でも、何でも良いってなると、ちょっぴりハードルが高いんです。

その点、感情は毎日動くもの。喜怒哀楽のようにパッキリしたものもあるけれど、その隙間にある色とりどりのあわいも見つめてみる。良くも悪くも、なんかもやっとしたやつ。1日を振り返って、感情がなーんも沸かなかった、なんて日もあるかも知れません。それはそれで興味深い。

写真と140字だけの日もOK。ちゃんと整理できていなくてもOK。毎日書いていたら、何かが変わるかも知れないし、何も変わらないかも知れません。なーんも定かではありません。

でも、やってみたいをやってみる。できることなら、365日。意地っ張りな自分を見据えた上での、やってみようを始めます。

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瀬戸内海が、やっぱり一番やけん

旅行好きの祖母は、愛媛のお家に帰るたびにこう言っていた。

旅は楽しい。旅の間一番興奮しているのも祖母だし、一番おしゃべりなのも祖母だ。

だが愛媛に帰ると改めて思うらしい。瀬戸内海ほど美しい場所はない、と。

愛媛から離れたことがない祖母がいるお陰で、根無し草のように国内外を転々と移り住んでいる私にも原風景ができた。それだけでもありがたいと思う。

瀬戸内海の海の幸は、祖母の自慢だ。中でも海老や鯛を語り始めたら大変。明石や北陸を引き合いに出そうものなら、鼻の穴を膨らませて反論される。

そんな祖母との思い出のお食事どころが、大潮荘だ。

お天気がよければ、遠くの島々、そこに架かる優美な橋、濃淡豊かな瀬戸内海が一望できる。海の青、空の蒼、島の碧。五感がアオに侵食される。

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この、来島海峡の袂にあるお食事どころの名物が、法楽焼きだ。

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どーん!潮の香りまで漂ってきそうな豪華な焼き物!サザエの噛み応え!エビのプリプリ具合!締まりに締まった鯛!見てるだけでも、目からよだれが垂れる。

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日替わりでお造りもお願いできる。この日は、なかなかお目にかかれないアコが入っていた。なんて綺麗な桜色。歯ごたえもしっかり。甘みバッチリ。

写真は無いが、最後は鯛めし!

祖母の鯛めしは、ほそーーーくかいたゴボウのささがきとこれまたほそーく刻んだ人参が入ったりするけれど、ここのは鯛だけ。鯛めしの味だけで言うなら我が家の鯛めしが一番美味しいと思うが、それは「カレーはお母さんのが一番」議論になるので、深くは語るまい。だってここのも十二分に美味しいのだ。鯛出汁を吸った白米を一口食べたら最後、お腹がギブアップ状態にあったとしても、口が欲しがる。おこげに凝縮されたお出汁の味ときたらもう。ああ、またも目からよだれが。

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その祖母が、固いものが食べにくくなって久しい。去年まではもう少し食べられたのだが、今は殆どの日が流動食で、時折調子がよくても甘エビ止まりだ。そこでも海鮮なのが微笑ましいが、数年前の誕生日に何が食べたい?と尋ねたらサイコロすてえき!と満面の笑顔で即答していた姿を思うと、少し寂しい。

そんな祖母に、今は会えない。

昨年からお世話になっている祖母の施設は、今、県外からの面会を禁止している。そのこと自体には何の不服もない。当然の措置だと思う。むしろ、かなり早い段階からそれを宣言していたことに感謝もしている。

でも、日に日に弱りつつあるという報告を聞くと、胃がきゅっとなる。苦酸っぱい何かが丹田に向かって数滴落ちる。

どうか早くコロナ騒動が落ち着きますように。そしてどうか祖母がずっと元気でいますように。落ち着いたら、すぐに会いに行くから。そして、祖母の代わりに、瀬戸内ブルーを眺めながら法楽焼きを食べ、写真を撮って祖母に見せるのだ。

「美味しそうでしょう〜?元気になって、一緒に行こうね」
って茶化すために。

言葉は言霊!あなたのサポートのおかげで、明日もコトバを紡いでいけます!明日も良い日に。どうぞよしなに。