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歴史香水 Les Parfums de Marcy(改訂版)

Les Parfums de Marcy

 パルファム・ドマシーは1910年頃にパリの東にあるレ・リラ(Les Lilas)で創業。後にシャンゼリゼ通り120番地にブティックを出店。WW2後はソシエテ・アノニム・デ・パルファム・シドレイとポール・エイマン(Société Anonyme des Parfums Sidlay, Paul Heymann)と提携したが、会社は消滅している。決して大きな店ではなかったが、第一次世界大戦後に伝説的な香水ボトルをいくつも残している。


L'Orange

 

 

 

 パルファム・ドマシーの傑作。半分むかれたオレンジ皮風容器はエナメル加工の陶器製。ラベルを貼りエナメル加工が施された小瓶の蓋を隠して8本が納められるように穴が空いていた。オークションサイトに大きさは6インチと記載があるが外箱の大きさだろうか。発売当初の1925年から1930年代の人気製品であった。ちなみに箱に記載されたフレグランスノートにはオレンジ精油は見当たらない。ロランジェなのに? 使用メイン香料はChypre, Amber, Heliotrope, Rose, Jessamine, Mayflower, Violet。もしかするとベースにオレンジやオレンジフラワーが使用されていたのだろうか?
 パウダリーかつ甘めのシプレフローラルだったと推測。8本とも同じ香りの香水が入っていた。常に新鮮な香りが使える、合理的だ。

 1930年には別会社から陶器製フロリダオレンジの型の香水が出回るが細工の細やかさでは劣ってしまう。


Formede bouteille de champagne

 

 1922年のシャンパン香水箱の大きさは7 x 8cm。ジャスミン、ミモザ、シプレー、バイオレット、アンバー、ローズ、ミュゲ、ヘリオトロープの8種の香水がミニシャンパンボトルに入ったセット。アンバー、バイオレット、ローズの3本セットも存在した。わざわざボトルに銀紙をつけているのが心憎いデザイン。


Le Bracelet Miraculeux

 ル・ブレスレット・ミラクルは収納時に5種類のボトルキャップがラインストーンとキャップが並びブレスレットのように見えるコフレ。1928年の商品。黒のキャップと赤のキャップのボトルタイプがあり、それぞれ5種類の香水が入っていた。

Trois flacons en forme

 

 鳥の巣に見立てたベルベット敷き陶器に横たわる卵が3個。これもボトルのコルク蓋を容器の下側へ隠している。1920年に発売された女性用のNoediaとAmbre、男性用のChypreが一つづつ入ったコフレだった。

L'Heure est Venue

 直訳すると「時が来た」。フローラルブーケ調の香りだったらしい。コバルトブルーに白い文字がエナメル装飾された置き時計タイプは1925年の生産。赤いベルベットの箱に入った懐中時計タイプは1919年の作。

Le Collier Miraculeux

 ドマシーの傑作、その2。パールネックレスにしか見えない。全長27cmの木箱にピンクパール加工を施した大小のボトルを13個下向きに並べたコフレは1927年発売。フローラル香水。パールの塗料は粉末化したニシンの鱗を魚の油に溶かしたエッセンス・ドリエント(essence d‘orient)と呼ばれるもの。1600年代後半からフェイクパールのアクセサリー制作に使用されてきたが、第一次世界大戦後にフランスのガラス職人アンドレ・ジョリヴェ(Andre Jolivet)はガラスボトルにパール装飾をした香水を数社で手がけ1920年代後半に流行した。1927年に素晴らしいパールネックレスに見える作品をポール・ヘイマンがパルファム・ドマーシーで手がけたデザインは「奇跡のネックレス」 (“Le Collier Miraculeux" 又は“The Miraculous Necklace”)と絶賛された。それは1923年に自らデザインしたDelettrez社のParfum XXIIIのボトルの成功によるものだろう。

 ネックレスの香水ケースの構造はこのような内部だったらしい。

 アンドレが手がけたイザベイの "Le Collier de Isabey" シリーズの6個のパールボトルコフレはパリ万博で金賞を受賞している。

 イザベイのパールボトルは2014年に新たな経営者によってLES TROIS PERLESシリーズとして復刻している。(日本発送可能)。会社が存続しているって素敵。

ISABEY
https://www.isabey.paris/

Le Bouquet du Caméo

 黒いボトルにカメオをあしらったボトルは1925年の作。

FLACON EN FORME DE FIOLE

 こちらもパール塗料仕上げだろうか、美しいフラコンボトル。1925年作。高さは8Cm。

COFFRET TITRÉ CONTENANT

 1923年作。ミュゲ、バイオレット、香りの内容不明の香水のセット。高さ7cm。

 とにかくデコラティブなものが得意であったMARCYの香水瓶。復刻版があればと思うが、業務を受け継いだSociété Anonyme des Parfums Sidlayも既に会社が消滅している。パルファム・ドマシーの香水瓶は同時代のラリック作品と変わらぬ高値で取引される。数年に一度しか世に現れないようだ。(ミラノの香水美術館にあるだろうか?)

 高名な作家やブランドだけが物の価値を決める手段では無いと改めて知ることができる力作の数々である。


【出典】一部の写真は詐欺サイトに掲載されていたため、リンクは貼っておりません。購入可能データは2021年3月現在のもの。

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https://cleopatrasboudoir.blogspot.com/2015/04/les-parfums-de-marcy.html

https://images.app.goo.gl/16ZCkq3UwZQqok5G9

https://www.skinnerinc.com/auctions/3319T/lots/1016

https://www.reddit.com/r/DesignPorn/comments/e4lawv/a_lorange_perfume_french_bottle_set_for_parfums/

https://pin.it/6IPD1f5

https://www.worthpoint.com/worthopedia/vintage-florida-orange-glass-perfume-430684618

https://www.perfumebottlesauction.com/2016

https://www.liveauctioneers.com/item/36083169_1920s-de-marcy-figural-novelty-perfume-bottles

https://www.parfumo.net/Perfumes/Parfums_de_Marcy/Ambre

https://www.parfumo.net/Perfumes/Parfums_de_Marcy/L_Heure_est_Venue__

https://aromo.ru/fragrance/parfums-de-marcy-le-collier-miraculeux-929635/

https://www.drouot-estimations.com/catalogue/20171?npp=50&offset=180&

https://www.isabey.paris/

https://www.lombrail-teucquam.com/lot/5452/1177354?

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