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【コラム】動作学を学んで実感した変化

変化というのは面白いもので、変化の渦中にはなかなか変化しているという自覚はないものです。

それでも変化することを信じて動いているうちに、ある時ふと「あれ?いつのまにか変わっているかも」と気づく時がくるんですよね。

とりわけ、体に関わることについてはそれが顕著で、たとえばヨガであれば、昔は難しく感じていたポーズがいつのまにか簡単にできるようになっている…そんな経験は大なり小なり、皆さん、なさっていると思います。

動作学の学びもまさに同じで、このマガジンに書かれているようなことを、「まあ、なんとなく理屈はわかるので、取り入れてみるか」と日々の中で地道に実践していくと、ある日、いつのまにか変わっている自分に気づいてしみじみしたりします。

少なくともこのマガジンのライター・古澤は、動作学に出会って以来、その「いつのまにか変わっている自分に気づく」ということを何度も経験していて、どんどん動作学にハマっています。

2023年も、新年早々、変化を自覚した出来事があって、一人地味に感動しているので、ぜひそれを共有させてください。

出てくる反応が勝手にポジティブ!

その出来事というのは、このマガジンのとある原稿を公開前に川尻隆*に確認してもらった時に起こりました。

川尻からのフィードバックが「なんか今回の原稿は違和感がある。数日後にミーティングして、その違和感について話したい」というような内容だったのです。

過去を振り返ると、川尻からそのような、一見するとネガティブなフィードバックがあったのは一度しかありません。

しかも、その時は、自分でも少し自信のない原稿だったので、違和感があると言われるのも当然とすぐに納得できました。

でも、今回は、自分としては「よく書けた」と感じた原稿でした。だから、「え?どこの何に違和感を感じたんだろう?」と、心は大きく動揺しました。

が、変化を感じたのはここから。

大きな動揺があったのはその一瞬だけで、その次の瞬間には、「違和感が何であれ、話を聞いてみないことにはわからないから、今一人で悶々と悩んでもしょうがない」という思いが出てきて、あっという間に落ち着いたんですね。

そこから実際にミーティングで話を聞くまでの数日間、「あの原稿について今の自分はどう感じるかな?」ということをちょくちょく考えはしましたが、ストレスを感じることは全くありませんでした。

それどころか、川尻から違和感を指摘されたという事実について、「自分で気づいていない違和感を教えてもらえるのは自分にない視点をもらえるということだからありがたいな」とか、「違和感の原因が何であれ、このマガジンがよりよく進化するために起こっていることでしかないのだ」とか、我ながらすごく前向きな思考で、むしろミーティングの時間が待ち遠しいくらいだったんですね。

しかも、ポジティブに考えようと思って思考を切り替えたわけではなくて、本当に自然にそういう考えが出てきていた…そのことに気づいた時、「わぁ、自分もずいぶん変わったなぁ」としみじみしたのです。

これがまさにアウトプットが変わるということなんだ、と。

もともとそのような思考回路ができている人には何も特別なことではないかもしれませんが、かつての自分は、自分がよく書けたと思えたものに関して違和感を指摘されたら、その瞬間に自己防衛モードに切り替わってストレスでいっぱいになっていました。

自己防衛モードというのは、つまり、自分が否定されたように受け取ってしまい、その否定を打破するために動き回る状態です。

今回のことで言えば、たとえば、ミーティングで川尻からの具体的な指摘を聞く前に「ここを直せばいいかも」と先回りして考えて書き直して自らの能力を証明しようとするとか、逆に「この原稿がベストである」と説得するために念入りに理論を組み立て武装してミーティングに臨むというようなことです。

でも、そんな発想はまーったく出なかった。

そして、それがまーったくない状態というのは、こんなにも軽やかで穏やかなのか、と驚いたのです。

大事なのは意志の力より意識の力だった

もちろん以前の私、すなわちすぐに動揺し、自己防衛モードに入り、ストレスを増大させていた自分も、もっと人間の器を大きくして、何事もおおらかに、前向きに捉えられるようになりたいなぁとは思っていて、実際、いろいろな努力はしていたのです。

ただ、動作学を知って最初に気がついたんです。

自分がしていた努力は、動揺を抑えるための努力だった、と

でも、動揺というのは反応で、反応は私から出てくるアウトプットです。その動揺と続くようにして出てくる自己防衛モードの焦り、プレッシャーもまたアウトプットです。

一度出てきてしまったアウトプットは変えようがないのに、私はそれらのアウトプットを抑えようとしていた…つまり、変えられないことを変えようという無駄な努力をしていたのだと知ったのです。がーん。

(関連記事:【22】 【23】 【24】 【28】 【29】 【30】 )

以来、私は、どんなアウトプットでも出てきたらただ認める、ということをするようになりました。そして、努力の方向を、アウトプットをどうにかしようとすることではなく、ただひたすらインプットとプロセスを変えることに集中させました。

それから3年、気づいたら自分から出てくるアウトプットの内容が自然と変わっていた…そのことを体感したのが、先に述べた出来事で、我ながらしみじみ、一人感動を噛み締めたのでした。

今、思えば、以前の私がしていたのは、出てきてしまった感情や思考を意志の力で変えようとする努力だったと言えます。出てきたものを意志の力で封じ込めよう、もしくは意志の力でポジティブに変えようとしていたんです。

でも、感情や思考を変えるのに必要なのはそれではなく、感情や思考を生み出す仕組みを知ること、そしてその仕組みの使い方を意識的に変えることなのだと、身をもって学びました。

意志の力より、意識の力、です。

この先も、動作学を学び、実践していく中で、またさらに変化した自分とどんどん出会うのだろうと想像すると楽しみでなりません。

数年先の変化した私は、今回ここで書いたような内容を再読して、「あの頃はわかったつもりだったけど、まだわかっていなかったことがたくさんあったわ」と恥ずかしく感じるかもしれません。

でも、そういった諸々全部をひっくるめて、人生について、また変化するということについて、より大きな興味と情熱を持って、面白がって取り組めるようになりました。それこそが動作学と出会ったことでもたらされた(今のところ)最大の変化であり、最高のギフトであると思っています。


*川尻隆:アスレチックトレーナー。SASS Centrum, Inc代表。旧ソ連や旧東ドイツの研究にルーツを持つ動作学を発展させて新たな学問の創出に尽力している一人。動作学を用いた組織マネジメントのコンサルタントとして、横浜DeNAベイスターズでチームビルディングや組織改革も担う。