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【50】変化に強い人は、アンラーニングが上手い

VUCAと呼ばれる時代、変化が激しく予測がしにくい現代を生き抜く力として、「アンラーニング」に注目が集まっています。

アンラーニング(Unlearning)は、ラーニング(Learning/学ぶ)の反対。

日本語では「学習放棄」「学び直し」と表現されることが多いのですが、厳密には、これまで学んできたことを捨てて新たに学び直すという意味ではありません。

アンラーニングとは、これまでの人生で培ってきた「物事を見る前提(フィルターの一種)」をいったん取り払って、まっさらな状態でインプットすること。

これが上手にできると、状況に適応してどんどん変化していくことができます。

逆に、アンラーニングがうまくできないと、未知の出来事が次々と起こるであろうこれからの世界ではついていけないことが増えてしんどくなっていくとも言えます。

というわけで、今回は、アンラーニングについて、動作学のレンズを通して見ていきましょう。

アンラーニングはなぜ重要か

先ほど、アンラーニングとは「これまでの人生で培ってきた『物事を見る前提』をいったん取り払って、まっさらな状態でインプットすること」だと定義しました。

これ、言葉にすると簡単そうですが、実際にはよほど意識しないと、自分が何らかの前提に基づいて物事を見ているということには気がつきにくいのです。

例えとして、天動説と地動説を挙げてみます。

ご存じのように、天動説は天体が地球の周りを回っているという理論で、地動説は地球が回っているという理論。

15世紀まで主流だった天動説は、16世紀になって地動説に取って代わられるわけですが、その間、宇宙で起こっていることが変わったわけではありません。

コペルニクスという人が、そもそも天体が動いているという前提ではなく、地球が動いているという前提で見てみたところ、そっちの理論でもいろいろな説明がつくことがわかり、それを後押しするような研究がなされるようになったんですね。

何が言いたいかというと、天体が動いているように見えるという現象は変わらないのに、天動説が前提だと「天体が動いているからそのように見えて当たり前だ」となるし、地動説を前提にすれば「地球が動いているからそのように見えて当たり前だ」となるということ。

ある前提を置くと、脳はその前提をもとに情報をインプット&プロセスするので、その前提の通りだと納得させる回答が出てくるのが自然なんです。(参考記事【29】

それが自然だから、自分の持っている前提に気づくことが難しいのですが、だからこそ、意識的に前提を疑うというアンラーニングが必要になってくるのですね。

というのも、自分が見聞きしていることと、解釈する前提がずれていると、見聞きしているその物事を正しく理解できないから。

物事の前提そのものが違うような大きな変化に素早く対応していくためには、いかに自分の持っている前提を取っ払えるか(=アンラーニング)が肝になるのです。

「面白くない」は前提に気づくチャンス

実際にアンラーニングを実践するにあたっては、自分が無意識に持っている前提にどれだけ気づけるかがポイントだと言えます。

ですから、まずは、私たちは無意識のうちに何らかの前提に基づいて物事を見ていることが多い、ということを意識することがアンラーニングの第一歩。

さらに、自分が頑張って学んてきたことほど強固な前提になっていることが多い、ということも知っておくと、より気づきやすくなると思います。

もう一つ、実践できることを挙げるとしたら、「好きじゃない/面白くない」と「よくわからない」の微妙な違いに敏感になること。

とりわけ自分にとって新しい何かに対して、「好きじゃない/面白くない」と感じる時は、実はその物事の根本的なところ、すなわち前提が理解できていないために、「よくわからない」から、「好きじゃない/面白くない」と感じることがあるんですね。

たとえば、ガラケーからスマホに変わった時、これまでのように携帯できる電話だという前提でいたら「電話にこんなにいろんな機能はいらないんだけどなぁ」と感じるのに、モバイルコンピューターに電話の機能があるとふうに見る前提を変えたら「これがあればもうPCを持ち運ぶ必要がなくなって便利だな!」と感じたりする、そのくらい前提によって出てくる感想が変わることがあるのです。

ですから、「好きじゃない/面白くない」と感じる時は、そこで終わりにせず、「根本的なところを理解できたけれど面白くないのか」それとも「根本的なところを理解していないから面白くないのか」を、自身に問うてみてほしいのです。

もし、理解していないために面白くないのだと気づけたら、そもそも前提が違うかもしれないと疑ってみる…日々の中でそんな意識をしてみることが、結果的にアンラーニングのトレーニングになっていくのではないでしょうか。

アンラーニングは、生命のシステムが本来持っている変化に対応する力を発揮させるための鍵。言い換えると、アンラーニングが上手になれば、誰でも変化に強い人になれるはずなのです。