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フロア全体が作り上げた世界観 エンタスハロウィンSPイベントレポート

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2020年10月31日(土)、毎月開催されるDJイベント「スーパーチャット」のハロウィンパーティが、秋葉原エンタスで開催された。この日は、ハロウィンにちなんだ出演者たちを含め、フロアには数多くの来場者たちが各々ハロウィンを楽しんでいた。ハロウィンの効果もあってか、VTuberのクラブイベントには珍しくコスプレをした人が多く、存在するだけでパーティを彩るかのような光景に新鮮さを感じた。

そしてこの日は、バーチャルエンタスとTwitch配信も同時に行われ、今やお馴染み、「現地、バーチャル、配信」の三刀流方式で、場所のハンデを物ともしない体制で開催。まだまだ予断を許さないコロナの影響下でもできるだけ多くの人が楽しめるような仕掛けがこの日も施されていた。それでは簡単ではあるが、当日現地の様子をレポートしていく。

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見た目の高揚感に気を取られそうになるほど、よりパーティ感を増したエンタスのフロアには、各々が好きなコスチュームを身に纏い、まさにお祭りだった。サブカルチャー界隈のクラブパーティは基本的にコスプレする人が多い印象があるが、VTuberというシーンではまだまだ浸透していない印象。こういったイベントを皮切りにクラブでコスプレする人が増えると、更にカルチャーの音楽シーンが浸透して、幅広い層に興味を持ってもらえるんじゃないかと痛感した。何を言いたいのかというと、女の子のコスプレイヤーがもっとたくさん来てくれたら嬉しいと言いたいです。

TAKUYA the bringer

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この日1番のクオリティなのでは?というレベルで開幕フロアを沸かしたのは、EDM屈指の人気者スティーヴ・アオキのコスチュームを身に纏ったTAKUYA the bringer。見た目はスティーヴ・アオキだが、選曲は彼らしい世界観で安定のプレイを見せた。HIPHOPを主体とした、VTuberからNujabesまで高低差ある選曲でフロアを開幕から揺らした。

霊界ラジオ

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この日、秋葉原エンタスを世界で1番あの世に近づけた「霊界ラジオ」がライブ一発目に登場した。ここまで世界観を確立した音楽系VTuberユニットも数少ない。ニッチなジャンルではあるが、この日ハロウィンの舞台となれば、存分に存在感を現すのは安易だろう。独特のワードチョイスと、ミクスチャーからリリカルな楽曲まで終始フロアをロックし続けた。「For Domingo」では、客演で咲乃木ロクも登場。息のあったパフォーマンスで一気に駆け抜けるようにあっという間にパフォーマンス終了。HIPHOPを主体にしたユニットなのだが、声量と発音がかなりいい。騒々しいフロアの中でもはっきりとリリックが聴き取れる技術に感銘を受けた。そして、個人的にコールアンドレスポンスというかマイクパフォーマンスがかなり好きで、「逆手で拍手しろ!」とか、「3回見たら死ぬ絵を5回以上見たやつどんだけいんだよ!」とか、かなり独特の煽りを見て、霊界ラジオが大好きになった。

AMOKA

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続いてライブパートに登場したのは、VRミュージックグループの「AMOKA」。こちらも世界観、パフォーマンスに関しては、引けを取らない。バーチャルの魅力を音楽を通して最大限表現することができる数少ないグループで、完成された世界観と、ハイクオリティの音楽性、ライブパフォーマンスはまさに圧巻。特に「不完全存在」のあいぽともいさんのユニゾンが素晴らしくて、フロアが純粋に見惚れていたのが印象深かった。クラブに似つかわしくないあいぽの力強くも透き通る歌声に、もいさんの圧倒的美声、優しく包み込むような歌が合わさる様が、芸術的で圧倒された。なんと言っても生歌であのクオリティを叩き出せるポテンシャルを見ると、これからもバーチャルの垣根を超えてライブパフォーマンスをもっと色んな人に見てもらいたいと感じた。

FAIO

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連続のライブに余韻冷めやらぬフロアを容赦なくFAIOが音の暴力で支配する。遠目で見れば可憐な乙女のような装いからは想像できないような重低音が鳴り響くセットリストで、オーディエンスを一気にフロアまで引き上げる様子が印象的だった。光彩が目まぐるしい映像表現と、鳴り響かす音楽の調和が最初から最後まで止まらなかった。幅広いジャンルの合間に、VTuberの文脈を要所要所で感じさせるプレイは、カルチャーのファンから音楽好きまで唸らせるような時間を堪能できた。

あくまのゴート

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ライブパートも中盤、エンタスのステージに悪魔が降臨する。あくまのゴートは、悪魔の看板とは裏腹にキャッチーなポップ・ロックを世に送り出す唯一無二のVTuber。この日は、エンタスのスタッフに憑依し、ステージに上った。代表曲でもある「品川シーサイド」を皮切りに、「Lunatic Mountains」「センチメンタル」を熱唱。フロアに鳴り響く重苦しくもキャッチーなギター音と、渾身のシャウトの殴打に、この日1番の"ライブ感"と一体感を演出する。最後には、「今日この日のために作ったと言っても過言ではない」とコロナの影響で疲弊する世の中に向けた「無題」を弾き語りで披露する。フロアからは手拍子が鳴り響き、あくまのゴートはそれに応えるかのように叫びににも似た歌声を精一杯届けていた。

九条林檎

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続いてライブパートに登場した九条林檎は、持ち前の話術で一気にフロアを九条林檎の世界へと変貌させる。妖艶な立ち振舞通り、歌もMCパートも目を離せないような力でオーディエンスを引きつける様はさすがとしか言いようがない。赤をベースとした映像演出の中央で初のオリジナル楽曲「Malus」を堂々と披露。次作の新オリジナル楽曲の告知をナチュラルにトークに織り交ぜつつ、続けて「ローラ」「エンゼルフィッシュ」を披露。トークからはあまり想像できないダンスナンバーも歌いこなしながら、ハロウィンの舞台を可憐に染め上げていく。「音楽系のイベントに呼ばれることが少ない」と本人が語っていたが、歌もトークも場馴れ感が半端ではなく、どんな場所でも流されることなく最高のパフォーマンスができることをこの日証明したんではないだろうか。最後に「月下宴」を歌い上げ、九条林檎のステージは幕を閉じた。

BOOGEY VOXX feat. clocknote.

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ライブパートのトリを飾ったのは、今ではお馴染みBOOGEY VOXX feat. clocknote.が登場。ライブの役割を任せる上でこれほどの安心感があるだろうか。軽快なトークの開幕、浮足立つハロウィンのお祭りムードから音楽という大前提の領域へとオーディエンスを一気に引き戻す。「この日はハロウィンっぽい曲を持ってきた」と、「Go!!Go!!Undead!!!!!」でフロアのバイブスを上げると、ハロウィンらしく死神・森カリオペのカバー「失礼しますが、RIP♡」を披露し、粋な選曲でガッチリとロックしていく。楽曲パフォーマンスとは裏腹に、ボケとツッコミの両刀を合わせ持つトーク、そこからガツンとライブに展開させていく流れはさすがとしか言いようがない。そこからはMZMの「Bite me. Remix」、「幽霊東京」から最新オリジナル楽曲「Escobar Dance」、そして「D.I.Y.」で最後まで熱量を落とさないパフォーマンスでハロウィンの日を盛り上げた。

遊美深夜

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スーパーチャットのfixer、遊美深夜が白衣を装い不気味に登場する。幅広いジャンルの音楽を巧みに操る遊美深夜は、この日Funkotをベースにフロアを振動させた。サイドキックにライブを終えたばかりのBOOGEY VOXXのFraが登場し、高速BPMの波に雨を降らせていく。イベント終盤、まさにラストスパートの名に相応しく休む暇も与えない約30分の時間が嵐のように過ぎていった。

TAMU

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スーパーチャットハロウィンSPのトリを飾ったのはUSAGI Production代表のTAMU。自身が総合プロデュースするVirtuaREALの楽曲を皮切りに、VTuberのダンスミュージックでフロアを盛り上げる。最初から最後までさすがの安定感。界隈のアンセムから、紡音れいの新曲まで幅広い文脈を存分にすくい上げていく。酒に溺れ、十分すぎるほど音を堪能したオーディエンスを再び生き返らせる様を最後の最後に実現させるパフォーマンスはさすがとしか言いようがない。

スーパーチャット1周年スペシャル

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イベントの最後には、スーパーチャット1周年スペシャルの告知が行われた。コロナの影響が及ぶ中、最大限やれることをやり続けたスーパーチャットの1年は、並みの1年ではないと思う。お馴染みの出演者から、電音部というビッグネームまで、エンタメの真髄を新たに目撃できるイベントになるんじゃないかと思っている。

イベントを終えて

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なんだろう。VTuberのコスプレってハードルが高いんだろうか。こういったサブカルチャー系のイベントにあまり行ったことがなかったから何が常識で何が王道なのか不明なところはあるけど、コスプレする人がオーディエンスに紛れ込めば紛れ込むほど、イベント自体の高揚感が普段とは段違いに違うと印象を受けた。恐らく、もっとコスプレする人が増えるべきなんじゃないかとも感じた。クラブに行き慣れていない人が抱えるぼやっとした不安なんかは、コスプレする人が増えるほど緩和されていく気がする。コスプレとクラブの親和性が他のイベントを加味してどれほどなのかはわからないけど、"クラブ"という概念を大きく柔らかくする調味料になり得るものなんだなと筆者はこのハロウィンイベントに行って体現した。





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