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◆全国郷土ずし紹介 9月  熊本県人吉市の「アユずし」

 山深い地方の中心地的存在、人吉市。ここで大正3年(1923)に誕生した駅弁屋「やまぐち」で、昭和33年(1958)に発売となったのがこの駅弁、「鮎ずし」です。「いつ買っても、昔と同じ味がする」と評判の名品です。
 同じ味に仕上げるためには、作り方も同じであるべき。今はアユは地元産が使えませんが、そのほかは同じ。鮎ははらわたが取り除かれて仕入れ、店で中骨を取り、1時間ほど塩漬けします。次に酢に漬けるのですが、これが2〜3時間で、要は作り手の腕の見せ所。時間や天候を見て判断するのです。酢に漬けることは酢で締めること。ほどよく身が締まると美味しいすしになります。また、ご飯は人吉産。米どころなので、もちろん美味しいご飯です。すし味をつけたら、ご飯を丸太型にし、巻き簀で半身ずつ、形を整えます。すしが2本。アユ1尾分です。
 ところでみなさん、この駅弁屋が有名なのにはもうひとつ理由がある(あった)のですが、ご存知でしょうか? それは、駅弁の立ち売りが遅くまで残っていたこと、でした。ですが、令和2年(2020)の熊本豪雨で、人吉駅を通る肥薩線が全面運休となり、駅構内での販売から撤退したのです。駅の名物駅弁販売員の菖蒲豊實さんも昨年、亡くなってしまいました。味は守られてはいますが、残念なことです。
 

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