佐山史織

武術家。白桃会主宰。http://hakutoukai.web.fc2.com/ 動画…

最近の記事

武術からみる東洋思想3 自己肯定感という虚妄

世間では目標を持とうとか自己肯定感をもとうとか、そうしたことが言われています。しかしそれで幸福になった人間はあまりみたことがありません。ということはあまり汎用性のある方法論ではないでしょう。 猫はかわいいし泰然としており、幸福そうに生きています。何かになろうとしたり、猫に生まれた自分を間違いだと感じたり、自分を肯定しようと努力してないからでしょう。そう、なんなら意識高い系の自己啓発自体が迷いと不幸を生んでいます。目標が出来た瞬間にそれ以外のことは無駄な寄り道になり、今いる地

    • 武術からみる東洋思想2 捨己従人

      前回、タオとは一語で言い表せる公式ではなく構造、モデル、系のようなものであると書きました。その系譜に連なる太極拳もご多分に漏れず、そうしたシステムを持っています。それゆえに誤解されやすいのが、最大の特徴である捨己従人という概念です。 人に従うなんてまっぴらごめんよ、てやんでえ、こちとら世界中の人間を敵に回してもたった独り、自分だけは自分を見放さないと腹を決めてんだ、というような人(その意気や良し)は早とちりしますが、これは長いものに巻かれろというような話ではないし、受動・消極

      • 武術からみる東洋思想 1 赤子に還る

        生徒から疑問があったので書いてみます。 といってもまあことさら学ぼうとしなくても太極拳をやってれば大体タオイズム的なものは勝手に入ってくるし、最良のテキストは自己自身であり万物なのですが。 畢竟、悟りとはなんでしょう? それを求むるに禅では未生以前の我という公案を立てます。生まれてくる前の自分とは何か、という自己の最小単位がわからなければ自分の言っていることが民族、国家、時代によって変化する後天的学習の刷り込みなのか、普遍的事実なのかわかりません。 生まれてくる以前のこと

        • 『Epic Rush』完全攻略への道

          スマホアプリのゲームEpic Rush(エピックラッシュ)の攻略記事です。 なんで急にそんなものを書くかというと、どこにもなかったからです。 壮大な物語、作りこまれた世界観、美しいグラフィック…。そんなものはどこにもなく、ただ淡々と自分の部隊を育て、敵と戦うだけの、ぶっちゃけ面白いかどうか分からんゲームですが、それだけに身を持ち崩すほど課金したり、時間を奪われもしないので、ほどよい感じです。 適当にやってても大体のことは分かるので、ざっくりとしたことだけ書きます。(完全攻略

        武術からみる東洋思想3 自己肯定感という虚妄

          俺の町には崖がある。 といっても目も眩むような断崖絶壁とかではなく建物の二階くらいの高さだ。下も草の茂った平地で仮に落ちたとしても、まあそうそう死ぬようなことはないだろう。 もともとは崖上と崖下に二棟づつ建売住宅を作る予定だったらしいが思った以上に地質が脆かったとかで、そのままずっと放置されている。 この崖には、わらわらと近隣のオババたちが集まってきて、あれやこれやと立ち話をしている。低いとはいえ柵も何もないむき出しの崖にオババが集まっているのを見ると何やら不穏でシュールな

          森の魔女とその弟子

          森にひとりの魔女がおりました。 魔女はいつまでも若く美しかったので、人は魔女が若返りの霊薬の作り方を知っていると噂しました。また、魔女はそのほかにも、多くの秘密の知識を持っていると言われていました。 この魔女のところに、二人の若者が弟子入りに来ました。 一人目の若者は、見るからに利発そうで自信に溢れていました。 二人目の若者は、おっとりとして、穏やかな気質でした。 魔女は、「霊薬の原料は七色に光る結晶じゃ、それを先に見つけた方を弟子にしよう」と言いました。 二人の若者は森

          森の魔女とその弟子

          創世記

          むかし、世界が出来て間もないころです。 世界の中心に混沌の神さまがおりました。 生き物たちはこの世界で生きていくための力を分けてもらうため、混沌の神さまの元に集まってきました。 「オマエハ ドンナ 足ガホシイ?」 混沌の神さまがそう尋ねたので、生き物たちは色々な答えを言いました。 「足はやはり速くなくっちゃ!」 そう答えたものは、蹄(ひずめ)を手に入れました。 「いくら速くても横にしか動けないなんてつまらない! 何にでもくっついて登れる足がいい!」 そう答えたもの

          釈迦と三人の弟子

          釈尊が食べ放題バイキングに三人の弟子を連れていった。 一人目の弟子は元を取ろうと思い、一番原価の高そうなものだけを食べたが途中で飽きてしまった。 「そなたの失敗は原価という世間の決めたかりそめの価値観に乗ってしまったことだ」と釈迦は言った。 二人目の弟子は栄養と健康に気遣ったものをバランスよく取った。 しかし満足が得られなかった。 「そなたの失敗は健康という不確定な未来の為に、今この瞬間食べたいものは何かを大事にしなかったことだ」と釈迦は言った。 三人目の弟子は

          釈迦と三人の弟子

          佐山史織のデザイン

          こんな感じのものでよければデザインします。 図案一点三千円くらいで。 グッズはこちらで販売中です。

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          リング

          この間、寝ていたんですよ。リングで。 そうしたら、誰かが私に被さって来たんですよ。 で、これが全っ然動かない。 うわー何だろう、やめてくれ、やめてくれって思っていたら、 耳元で、 バンッ!バンッ! って凄い音がするんです。 で、何か凄く嫌な感じがしましてね。 何故だか分からないけど、あと一回音がする前に起きなきゃ、と思って、ウワーッて必死で肩を上げたんです。 そうしたら、私に被さってた相手は消えていましてね。 あれっ?と思って見たら、 コーナーポストの上に誰か立ってる

          武田惣角という人

          合気道の源流である大東流合気柔術の事実上の始祖、武田惣角。その生涯は津本陽が小説化していたり、wikiなどで検索すると出てくる。史料を研究している人もいる。 にもかかわらず、あまりそれら研究者の語る惣角像があまり芯を食っていないな、と感じるのは、ひとえに大東流をやってない研究者が書いてることが多いのに由来するだろう。まあ私も正規に習ったわけではないのだが、ちょっとでもやれば分かるだろ、というレベルのことが分かっていないように見える。 たとえば惣角を狷介、求道者、偏屈というよ

          武田惣角という人

          映画『犬王』感想

          ネタバレありです。そして批判的な評価が含まれています。 ずっと前から予告で気になっていた映画、『犬王』を観てきた。 感想としてはアニメーションは素晴らしく、声、歌の演技もよかったと思う。 もともと世阿弥を描いた木原敏江の『夢幻花伝』や、手塚治虫の『どろろ』歌舞音曲の道でつながる二人の青年を描いた映画『覇王別姫 さらば我が愛』なども好きだったしキャラクターデザインの松本大洋の漫画はほぼ全部揃えている。 また『美女と野獣』『オペラ座の怪人』などのお話も大好きである。 そして

          映画『犬王』感想

          異説シンデレラ

          「シンデレラ! 野良仕事は終わったのかい! 次は薪割りだよ!」 「何をぐずぐずしてるんだい! ほら、今度は掃除だ!」 シンデレラ(灰かぶり)は今日も継母にいじめられています。 シンデレラを産んだ際に母は命を落とし、父は再婚しましたが、これも流行り病で死んでしまいました。 途端に本性を現した継母と連れ子たちは、この家を乗っ取ってしまいました。 お城では近々舞踏会があるそうで、姉たちはドレスをとっかえひっかえ思案していました。 「もっと胸と背中を出した方が王子の目に留まるか

          異説シンデレラ

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          月兎倭異流刀のご紹介

          初期ロット15丁。残り数、光沢3、艶消し3です。 単品15000円。二個セット28000円。 発送は二月中旬以降になります。ご予約お待ちしています。

          月兎倭異流刀のご紹介

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          バレエ・ヤマカイ氏とヒューマ氏の問題について考える

          youtubeを観ていて偶然、この動画にたどりついた。 10代バレエダンサーの真剣な思い ざっとかいつまむと19歳の気鋭の舞踏手がバレエ系youtuberの先駆者であるヤマカイ氏に対し苦言を呈した動画である。 かなり強い口調で批判、非難している。 それに対してヤマカイ氏は指摘された内容ひとつひとつに釈明、反論した。 悲しい.. 実はバレエ界の敵になっていたらしい この二つの動画を見て幾つか思うことがあったので書いてみたい。 もともとこうした対立はおそらくすべての文

          バレエ・ヤマカイ氏とヒューマ氏の問題について考える

          奔馬とかつ丼

          男女の交互の視点から見た物語です。 ♠ 準急も停まらない私鉄の小さな駅。 その駅前からさらに徒歩で30分という絶望的立地に、この、何かの間違いで出来てしまったような商店街はある。 商店の多くはシャッターを閉めており、どうやって生計を建てているのか謎の店ばかりが立ち並んでいる。 薄暗い寝具店だの、ミカンしか置いていない果物屋だのだ。(あるいは陳列棚で寝ている猫も売っているのかも知れない) 救いようのないラインナップのリサイクルショップでは、不機嫌そうなババアが往来を睨

          奔馬とかつ丼