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『ムービング』で話題のチョ・インソン氏の沼へ頭のてっぺんまで浸かる旅①〜出演ドラマ紹介〜


はじめに

 最近、ディズニープラスで見始めた韓国ドラマ『ムービング』。SFアクションの気持ちで開封し、物語の展開を追っていると、止められなくなった。SFアクションに変わりはないし、そのジャンルも好きだけれど、『ムービング』は深いメッセージが込められたヒューマンドラマでもあったのだ。

多様性と生きづらさ。そして多様性を排除しようとする存在との戦い。特別な力を持った彼らは、日陰で働き日なたを目指し、目立たぬよう生き続ける。本作では、超能力を個性と呼ぶのがポイントで、空想の設定を身近な物語へと昇華させているのが新鮮だと思う。

劇中で一際光輝く存在……それがチョ・インソン氏だ。自信たっぷりで、大人の余裕があるように見えて、好きな人の前では目が泳いでしまうお茶目さもあって、実は心の底に影のある男性を演じているのだが……こういった役柄が本当に上手すぎる。いやぁ……かっこいい、この文章を書いている時もついため息が出てしまうほどかっこいい笑。彼がナチュラルにウィンクすると、もう肩まで沼の中にいる気がする。ここでは、そんなチョ・インソン氏の出演作を少し書き留めたい。

ディア・マイ・フレンズ

 折り合いの付かない心の傷と向き合いながら、懸命に生きるシニア世代の親友たちの日常を描いた作品。“あなたの人生はあなたのもの”と教えてくれるような作品で、悲しい時は自分以上に泣いてくれる仲間達に涙が止まらない。2017年百想芸術大賞ドラマ部門作品賞に輝いた作品で、脚本家は『ライブ』『大丈夫、愛だ』など名作品を手がけたノ・ヒギョン作家。『応答せよシリーズ』、『サイコだけど大丈夫』、『刑務所のルールブック』が好きな方は特に好みだと思う。

チョ・インソン氏と聞くと、個人的には本作を一番最初に思い浮かべてしまう。セリフなしで心情を描く神回があるのだが、一体何度見ただろうか。
(以下URLは、是非視聴後に。)

「おいで…僕の腕の中に。君を抱きしめさせて。」と言っているように聞こえてくるのだが、セリフがないのだ。潤んだ目と手の動き、その二つだけなのだが、不思議とセリフが聞こえてくる。そんな彼の繊細な演技力に心臓を一瞬で鷲掴みにされて、何度観ても鼻の奥がツンとなる。

大丈夫、愛だ

 心の風邪をひいた登場人物たちが、過去の自分や胸の奥につっかえる誰かを許しながら生きていく愛の物語。愛に対する不安障害を持つ女性と、トラウマを抱える男性が、お互いを大切にし合うことで縛られた心を少しづつ解放していく一作。自分1人では受け止めきれない現実も、ただ誰かに聞いてもらうだけで心が軽くなることを描いており、自分の足りない部分に目がいって、つい頑張り過ぎてしまう方へこそ贈りたくなる。

イケイケで人気の推理小説家を演じるのが、チョ・インソン氏。あるトラウマを抱える難しい役柄なのだが、大胆さと繊細さを行ったり来たりする演技に、気付けば心を奪われている。

特に、このシーン……しがらみから解放されていく重要な場面。お姫様抱っこで水の中に入り、お互いありのままの姿に戻っていくのだが、そこからのキスが……もう言葉にならない程で、今観ても泣いてしまいそう。

その冬、風が吹く

幼き頃に親に捨てられて育った男性が、お金目当てで同姓同名の大企業の息子を演じる所から始まる物語。孤独な世界で生き続けることに怯える目の見えない妹と出会い、互いが生きる唯一の理由になっていく過程を描く。人は誰もが生きづらさを抱えて生きている。もうこれ以上歩けない程にくたびれた時、許しではなく慰めという名のエールをくれるような一作。

冬に観たくなる韓国ドラマの一つとして思い出さずにはいられない本作。目で怒り、目で全力で涙し、目で相手をぎゅっと抱きしめるチョ・インソン氏から目が離せなくなる。切なくて堪らない冬の想い出をいっぱいに詰め込んだ、ノ・ヒギョン作家が贈る日本ドラマ『愛なんていらねえよ、夏』のリメイク作。

ドラマだけでなく、映画でも大活躍のチョ・インソン氏。
書ききれないので、続きは第二回へ……!