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『THIS IS SERVICE DESIGN DOING.』のあるきかた

前提:サービスデザインとは何か

サービスデザインとは何か?本書の2.2「さまざまな見方」で言及されているように、サービスデザインは多様な側面を持つ。それゆえ、その定義も様々だ。
が、本書においては150名のサービスデザイナーから最も支持を受けた定義が記載されている。そちらを引用し、本稿で扱う「サービスデザインの定義」とする。

サービスデザインは、組織がそのサービスを顧客の視点からとらえるのに役立つ。それはシームレスで質の高いサービスエクスペリエンスの創出を目指して、顧客ニーズと企業ニーズのバランスがうまくとれたサービスをデザインするためのアプローチだ。その根幹にあるのはデザイン思考であり、クリエイティブで人間中心のプロセスを通じてサービスを向上させ、新たなサービスのデザインに取り組む。顧客とサービスを提供する側の双方を関与させるコラボレーティブな手法によって、サービスデザインは組織が自らのサービス全体を正しく認識し、ホリスティック(全体的)で有意義な改善を可能にするのに一役買う」ーメーガン・エリン・ミラーによるまとめ

なお、サービスデザインについて論じる際には「UXと何が違うの?」「デザイン思考との関係は?」といった議論がおきがちだが、本書においては「一括主義者(ランパー)」の立場をとっている。相違点より共通点のほうがはるかに多いのと、実践してさえいれば呼び名はなんだってよい、という価値観だ。

「サービスデザイン」実践のバイブル

「This is Service Design Doing」ー。そのタイトルが示す通り、本書はサービスデザイン実践に関する情報がこれでもかと網羅された一冊だ。
章構成は以下の通り。

01. なぜサービスデザインなのか?
02. サービスデザインとは何か?
03. サービスデザインの基本ツール
04. サービスデザインのコアアクティビティ
05. リサーチ
06. アイディエーション
07. プロトタイピング
08. 実装
09. サービスデザインプロセスとマネジメント
10. ワークショップのファシリテーション
11. サービスデザインのためのスペースを構築する
12. 組織にサービスデザインを組み込む

先ほども言及したように、網羅的な一冊だ。よく活用されるツールや手法、アクティビティに加えマネジメントやファシリテーション、場の作り方、そして組織への浸透のさせ方までが書きつくされている。

そして、網羅的であるがゆえに、決してとっつきやすくはない。なんせ600ページ近くもあるのだ。その重厚なたたずまいを前に、手に取らず立ち去ってしまっても致し方ない。

しかし、だ。非常に有用な本である、というのも事実。そして網羅的であるため、まずはツールに興味をもって手にとった人がマネジメントプロセスにまで思い至ったり、逆に「なんかサービスデザインっていいらしいじゃん」と組織への導入を検討しているマネジメントレイヤーの人物が詳細なアクティビティへの理解を深めたりすることが可能なのだ。これは、ぜひ多くの人に手にとってもらいたい。

というわけで、このnote記事の目的はこちら。

「本書の構造を理解し、どこから読み進めるべきかを知る。できれば、手にとりたくなる」

本書の構造

私なりに解釈した本書の構成は以下のとおり。

この構造をもとに、どのように読み進めるかを解説していく。

A:「そもそもサービスデザインって何?」という人向け

なぜサービスデザインが重要視されているのか、そもそもサービスデザインとは何か、基本的なツールは何か。しっかりサービスデザインを理解したい、初めて触れる、という方はここから読むことをお勧めする。

B: 実践方法を模索している人向け

「サービスデザインの実践」という本書のコアは、ここ。網羅的に学習するという用途はもちろんだが、見聞きしたことがあるワークショップをどう実践するかの手引書としてカタログ的に利用することもできる

例えば、以下のような手法が紹介されている。(ここで紹介しているのは一部。)

リサーチ
参与観察
非参与観察
インデプスインタビュー
ペルソナの共創
ジャーニーマップの共創
システムマップの共創
アイディエーション
ブレインストーミングとブレインライティング
インサイトとユーザーストーリーをもとにした質問「どうすれば…できる?」
多くのアイデアの創出:10プラス10
プロトタイピング
段ボールプロトタイピング
ペーパープロトタイピング
ワイヤーフレーミング
ビジネスモデルキャンバス
オズの魔法使い的アプローチ

C: 推進し、組織に浸透させたい人向け

本書に通底するメッセージとして「サービスデザインは反復的に行われる」というものがある。そう、一回こっきりで終わり、というものではないのだ。そして反復的に実施するためには組織に浸透させていくということが重要だ。そのための方法を模索している段階の人は、この9章以降のパートが刺さるだろう。

さらに理解を深めるために

本書は、比較的余白が大きめに設定されている。私個人としては、この余白に自分自身の理解や疑問を書き留めておくことを勧めたい。たとえばこのように。

また、図表中に自分なりの補助線を引き理解を深める、というのも良い。

「6,000円を超えるような本に直接書き込むなんて…」と思うかもしれないが、逆だ。6,000円も投資しているんだから、ガンガン書き込んだり、自分なりの使い方をみつけたりして、学びを深めるために有効活用していくのがよいと、私は思う。

以上が、私が考える「This is Service Design Doing」のあるきかただ。本書とどのように向き合おうか悩んでいる方や、サービスデザインを学びたい、実践したいと考えている人の参考になれば幸いである。

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