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場の方向性が揃いすぎていると感じたら、迷わず揺らせ

はじめに

これはファシリテーター Advent Calendar 2021 4日目の記事だ。

今回は、場が局所最適解に陥るメカニズムとファシリテーターとしてその状況を脱却する方法について書く。

スムーズに話が進んだ割に、結論がしっくりこない

ミーティングにおいて、活発に議論が交わされる。強い感情のぶつかりあいはなく、自然と意見がまとまってゆく。決定事項に対してもすぐに同意がとれる。

それなのに、その決定事項がしっくりこない。いざものごとを進めようとすると、進まない。そんな経験はないだろうか。こうなってしまうのは、議論の着地点が「局所最適解」に陥っているからだ、と私は考える。(単純に掘り下げが足りず、実行可能解にさえたどり着いていないこともある。なので、アクションを決める際に「実行するための前提条件」「どうやったら完了か」という点は明らかにしておこう)

本当はもっといい答え(大域最適解)があるのに、それなりによさそうな解が出た時点で満足してしまう。そして、議論した時点では満足していても、のちのち「なんだかしっくりこない」ものになってしまう。では、なぜそのような着地をしてしまうのか。

ミーティングが局所最適解に陥るメカニズム

これには様々な理由がある。

・時間が不足しており、局所最適解にたどり着いた時点でタイムアップになる
・場の心理的安全性が低く、思ったような発言ができない。結果として権力者の発言に場が支配されていく
・チームの同質性が高く議論の視点に偏りがある

議論を尽くした結果、時間がなくなってしまう。

場の心理的安全性が低いため、「それはちょっと違うんじゃないかな・・・」と思っても発言できない。

ミーティング参加者の同質性が高く、「それはちょっと違うんじゃないかな・・・」と意義を申し立てるような人間がそもそもいない。

様々な理由でミーティングは局所最適解に陥るのだ。

ファシリテーターはどうするべきか

時間の問題なのであれば、シンプルに時間を増やすとよい。また、主題と離れた議論で発散していたら軌道修正する、などオーソドックスなファシリテーションスキルが役立つだろう。

心理的安全性が問題であれば、事前にミーティングのルールとして「発言を否定しない」などを盛り込んでいく、ラウンドロビン形式で意見を聞く、といった方法が有効だ。この心理的安全性を欠いた状態は、タックマンモデルでいうところの形成期、混乱期のチームで発生しやすい。(そのミーティングではじめまして、という関係性はまさに形成期だ)

実は、ファシリテーターの介入が難しいのが「同質性の高い人達」だ。本人たちはひとり残らず結論に納得しているわけで、そうなると「○○さんどう思いますか?」ときいたところで同じ答えが返ってくるだけだ。

同質性を突破するための問い

タックマンモデルでいうと、統一期に突入したばかりのチームというのが「同質性の高い人達」に該当しやすい。

チームが一丸となっているときに、どうアプローチするのがよいのか。
「ちょっと違うんじゃないでしょうか」と言ったところで「いや、私達はこれでいいのだ」とかわされるのが関の山だ。

これは、自分たちで局所最適解を抜け出してもらうしかない。では、ファシリテーターに何ができるか、というと問いを投げかけることだ。

Q1
「その結論通りに行動すると、何が成果として得られますか」
「その結論通りの行動をとらないと、どのような課題が表出しますか」

この問いで、あらためて求めている成果というものを明らかにする。同時に、回避したいと考えているリスクもあぶり出す。

Q2
「表出課題はどのような損害をもたらしますか」

この問いで、「回避してしかるべきもの」と頭の中で固定されている課題に対して本当に回避の必要があるものなのか再考してもらう。この問いをこの段階で投げておくことで、新しいアプローチを考えるときに無意識的に「課題」がブレーキとなることを防ぐ。

Q3
「その成果を生み出す別のアプローチはありますか」

この問いで、他の解を探索してもらう。SCAMPER法を参考にすると、これまでに見えていなかったアプローチが発見しやすい。

場の方向性が揃いすぎていると感じたら、迷わず揺らせ

このように、同質性の高い状態で大域最適解へと向かうためには場を揺らすことが大切だ。一体感があるからこそ失っている視点をインプットできるのは、中立な立場であるファシリテーターのあなただけだ。

今回は、このへんで。

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