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段階でつくるインセプションデッキ

はじめに

この記事はインセプションデッキ Advent Calendar 2019一日目の記事である。


なくてはならないインセプションデッキ

初めてインセプションデッキを作ったのは何年前だったか。
プロジェクトが、チームが向かうべき方向を明確にし、スコープを定め、トレードオフの基準を示したこのデッキはチームにとってなくてはならないものだと感じている。
個人的には、出来上がったデッキそのものよりもデッキを構築するプロセスに重きを置いている。メンバーそれぞれで少しづつ異なる思惑が対話を通して近づいていくプロセスは、何度体験してもエキサイティングだ。

かんたんではないインセプションデッキ

しかし、インセプションデッキを作るためにはハードルがある。
項目がたくさんあり、埋めるのに物理的に時間がかかること。
プロジェクトの根幹に関わる意思決定となるため、事前の情報収集などがそれなりに重いこと。
「インセプションデッキいいですよ」と勧めたときに「よさそうだけど、あれを作る時間はいま取れないんだよね」とかわされることも少なくない。

「いやいやプロジェクトにとって大事なこと決める時間ですよ、とりましょうよ」とも思うが、そういっていても物事は動かない。

今回紹介する、私がいつもやっている「段階のインセプションデッキ」であれば比較的軽量に始められる。
時間がない、大変そう、という理由で始められていない方が一歩踏み出すきっかけになれば幸いだ。

小さく始める

私が新しいチームでインセプションデッキをつくるときは、だいたい2,3項目だけ作成する。
「我々はなぜここにいるのか」はチームの方向性を示すうえで欠かすことができない。
それ以外は、チームの状況によって選んでいる。
たとえばプロダクトのウリをはっきりさせたいチームであれば「エレベーターピッチ」「やらないことリスト」をつくる。
つくるものがぶれやすい、意思決定に時間がかかるチームなら「やらないことリスト」「あきらめること(トレードオフスライダー)」をつくる。
このようにして作成項目を絞ると、だいたい1-2時間もあればつくることができる。

デッキを見直す

まずは最小構成で動きはじめる。いくつかイテレーションを重ねると、そのデッキがチームにうまく作用しているか見えてくる。
だいたい1-2ヶ月か、長くても3ヶ月で見直すようにしている。
「よし、これだ!」と合意できた「我々はなぜここにいるのか」が、時間が経つことでずれてきたりする。
また、実態が理想と離れていることに気づき、チームの方向性を見直すきっかけにもなる。

そして、このタイミングで前回は作らなかった項目をつくるようにしている。
何をつくるのか?
その期間に存在しないことでチームが困った項目だ。

私の場合、「関係してる人は自明だろう」と「おとなりさんを探せ」をスキップしていたが、メンバーによってステークホルダーとして捉えている人物が違っているといった課題があったため改めて作成した。

トレードオフスライダーは高頻度に見直す

チーム自身の、そしてチームを取り巻く環境の変化で優先するべきことは変わる。それも高頻度に変わる。
私がみていたとあるチームでは、プロダクトのクオリティとそのAPIのレスポンスタイムをトレードオフ項目に取り入れていた。
レスポンスタイムのみを追求するときめ細やかな条件分岐は犠牲にならざるを得ず、また逆もしかりだからだ。
ここは、そのときのクオリティとレスポンスタイム、そしてビジネス的な要請によって変化しやすいポイントだった。
時には、「トレードオフスライダーとは逸脱した選択だ」ということを確認したうえで踏み抜いたこともある。

さあ、インセプションデッキを始めよう

今回紹介したとおり、私はインセプションデッキを小さく始めるようにしている。
成果物自体よりは作り上げるプロセスを重視し、
絶対的に遵守するものというよりは意思決定のものさしとして利用している。
明日以降のアドベントカレンダーで、さまざまな現場のノウハウが紹介されていくだろう。それがとても楽しみである。

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