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社内向け研修は、それが必要だと気づいていない人に気づいてもらう絶好の機会だ

社内向けにアジャイル研修を実施した

自分のチームでアジャイル開発に取り組み始めてから数年。チームが歩んだ道や成長、重ねてきた成功や失敗は、ありがたいことに様々なカンファレンスやイベントでお話させていただく機会に恵まれてきた。

さらに幸運なことに、2020年には現Red Journeyの市谷さん、新井さんと「いちばんやさしいアジャイル開発の教本」を執筆する、という機会に恵まれた。

そういった、外部で発信しているという実績も手伝い、所属する会社内でアジャイル開発に関する相談を受ける機会が多くなっている。相談を受けて、そのあと支援するというケースも多々ある。

そして今年、ついに社員向けにアジャイル研修を行う、という機会に恵まれた。背景としては、アジャイル「らしき」方法で開発しているチームが増えたこと。一方でそれは見様見真似だったり、自信をもって実施できていなかったりと、課題を抱えた状態で走っているケースが多かった。そこで、今一度「アジャイルとはなんぞや」という基礎から学べるようにしてほしい、というニーズがあったのだ。

折しも、政府情報システム開発から「アジャイル・ガイド」が公開されたタイミングだ。これは、アジャイル開発を実践するということが特別なことではなくスタンダードになっていくという国レベルでの意思表示だろう。であれば、この時流にはのっかっておきたい。

というわけで、社内向けにアジャイル開発とはなんぞや、を伝える研修を実施した。そこで気がついたのが、「社内向け研修は、それが必要だと気づいていない人に気づいてもらう絶好の機会だ」ということだ。

勉強会のジレンマ

IT業界には、勤勉な人が多いと感じる。日夜、大小様々な勉強会が開催され、多くの人がそこで自己研鑽している。

しかし、こういった勉強会は自主的に参加しているケースがほとんどだ。勉強するモチベーションがない、つまり必要性を感じていなかったりもっと大切にしていることがあったりする人は、参加しない。

これは社内で開催される勉強会でもそうだ。自由参加型の場合、雑にいうと「意識が高い」人が集まる。集まらない人が「意識が低い」ということでは決してないのだが、そこにある種の分断が生まれてしまう。「勉強会に参加するような人たちには勉強会は必要なくて(自分たちで勉強するから)、参加しないような人たちにこそ参加してほしい」という課題は私の周りではよく聞く。

しかし、「研修」となると話は変わってくる。
※勉強会と研修の何が違うのか?という点だが、ここでは「自主的に参加するもの=勉強会」「ある程度参加に対して強制力が働くもの=研修」とする

学んでほしい、身につけてほしい、という人に受講してもらうことが可能なのだ。たとえ、その時点でその人が望んでいないとしても。なんたって、業務なのだから。

いや、これは賛否あると思う。私も、以前は「自主的に学びたい人が学べばいいのではないか。無理に学ばせてもモチベーション上がらないだろうし」と思っていた。

しかし、自主的に参加していない理由には、「それが必要だと気づいていない」「気にはなっているけれども取り組む自信がない」といった理由も含まれるのだ。(そもそも絶対にそれを学びたくないのだ!という確固たる理由があるなら、それはさすがに難しいかもしれない)

ある程度強制的に学びの席につかせることで、そういう人たちが学びの重要性に気づくきっかけを得ることができる。うまくいけば、モチベーションだって上がる。

実際、今回私が社内で実施したアジャイル研修でも、そういうことがあった。研修終了後の感想戦で、それは表出した。

「自分ではうまくやってるつもりだった」

ある参加者いわく、参加するまでは「自分の現場はそれなりにうまくいってるし、わざわざ研修受けなくてもな」と思っていた、とのことだ。しかし、実際にインセプションデッキを作成したり、自分たちが取り組んでいることをプロダクトバックログ化したりといった演習を通してコミュニケーション面での課題、Whyの明瞭さの不足など課題を認識することができた、とのこと。

「過去にうまくいかなかったから、乗り気じゃなかった」

また別の参加者いわく、過去に取り組もうとしてうまくいかなかった経験があった。その経験から、「研修受けても、変わるかなぁ」と懐疑的だったようだ。しかしいざ受けてみると、ふりかえりを起点に少しづつ変えていけばよいのでは、という気付きが得られた。

きっかけは外発的でも、研修を通して内発的動機に転換させる

これまでに紹介した二人だけでなく、どの参加者も主体的に参加していた。最後の感想を聞く限り、そういった前向きな姿勢で研修に臨めた背景としては「実際に体験した」ということが大きかった。今回でいうと、アジャイル開発。研修中に、実際にイテレーションを回す演習を設けたのだ。そのイテレーションを回す中で、実際に自分たちの成果物が進化していくのを目の当たりにし、モチベーションが湧いていった。

きっかけとしては、外発的だったわけだ。これがずっと外発的動機しかなかったら、もしかしたら受け身な研修になっていて、学びは限定的だったかもしれない。しかし、「身を持って効果を体感する」というところから、その外発的動機は内発的動機に転換していった。また、度々発していた「なぜこれが大切なのか」というWhyメッセージも効果があった。

Whyを伝える
それの効果を体感する

この2つが合わさると、外発的動機は内発的動機に転じる。
この転換の仕掛けがある、というのが前提にはなってくるが、これは社内研修ならではの妙技だ。まだ必要だと気づいていない人に気づいてもらう、そのために効果的な社内向け研修。これは今後も活用していきたいな、と思った次第だ。

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