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しらふで生きる

という本を半年くらいかけて読みました。なにも数千ページにも渡る大長編だとか、難解すぎて1頁読むのに普段の10倍かかると言うわけではなく、単純に読書に当てられる時間が少なかった。という事と、31章建ての本作で30章くらいまで読んで次に本を開く(電子書籍です)と何故か20章前後に戻ってしまっていて、こいつ何回同じこと書いてんだ?と不思議にも思わずループしていたからでございます。端的に言えば著者の禁酒物語で、私もアル中に片足ともう片方の指先くらいは突っ込んでいる自信があるくらいの酒好きなのですが、この度入院(酒とは関係無い)という強制禁酒を食らったお陰で無事読了できた次第であります。

本書は禁酒のために自己の認識を改めるということを要旨としていますが、別に禁酒だけでなく人生における鬱憤や憤懣全般に効果があるように思います。作中では「自分は特別ではなく普通の人間で、人生は楽しくないし、幸福でなければ人生は失敗したというわけではなく、それが普通。」と普通という一番フワフワッとした平均に自分を当てはめることで逆説的にある種の解脱というか悟りを開いているのですが、要は楽観的であったり甘く見積もらずに自分の立ち位置を認識することで酒(以外も)の耽溺に溺れることがなく人生を歩めますよ。と。

なお失礼な言い方で申し訳ないが、著者の町田康氏は私の知る限り唯一人のバンドマン崩れが芥川賞を受賞したという稀有な方で、禁酒について難しそうな論理や御託を並べている割にとても読み易い文章になっています。

さて、本書を読んで私が禁酒するかというと、しません。「今夜、すべてのバーで」や「失踪日記」、「アル中ワンダーランド」等も愛読していますが、いつかその境地に辿り着いてしまうことがないように。と祈りながら、ウィスキーを煽るのです。


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