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『2020年6月30日にまたここで会おう』期間限定全文公開

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2020年6月30日火曜より7月6日までの1週間、「瀧本哲史伝説の東大講義」を収録した星海社新書『2020年6月30日にまたここで会おう』の全文を無料公開します(その後は第二檄ま… もっと読む
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#瀧本哲史

全文公開 『2020年6月30日にまたここで会おう』 第一檄「人のふりした猿にはなるな」

 はい、瀧本です。  とくに今日は自己紹介する必要もないと思うので、バーッと進めますね。  僕は話すのがちょっと速すぎるようで、よく通訳が必要とか言われるんですが(笑)、ここに集まったみなさんは頭も良いかと思うので、京大の授業でいつもやっているようにやります。  はい、ついてきてもらえればと。  で、今日のこの会場は、東京大学の伊藤謝恩ホールです。みなさん、「伊藤」って誰のことだか、わかります? イトーヨーカ堂、セブンイレブン・ジャパン創業者の、伊藤雅俊さんなんですね。  伊

全文公開 『2020年6月30日にまたここで会おう』 第二檄「最重要の学問は『言葉』である」

 この講義のテーマは、「次世代の君たちはどう生きるか」ということで、僕が思っていることをどんどん言っていきます。  はい、つぎです。  みなさん、『アメリカン・マインドの終焉』という本、ご存じですか?  この場には10代と20代しかいないので、知ってるはずがないんですよ。知ってるとしたら、その人はかなり変わった人だと思うんですね。  なぜかというとその本は、みなさんがまだ生まれてないか幼児だった1990年頃に流行った本だからです。  イェール大学とかシカゴ大学で哲学を研究して

全文公開 『2020年6月30日にまたここで会おう』 第三檄「世界を変える『学派』をつくれ」

 では、ここにいるみなさんが猿から人間になって、一人ひとりが個人として正しく物事を決められるようになったり、言葉を磨いていければ、それだけで世界が良くなって「はい、メデタシメデタシ」となるかといえば、残念ながら現実は、そうはうまくいかないんですね。  なぜなら、就職とか結婚とか、人生に関する問題のほとんどは個人や個人間だけで決められるんですけど、社会に関する問題は、集合的な意思決定というのが避けられなくてですね、民主主義ではそれを多数決で決めていくしかないからです。  たとえ

全文公開 『2020年6月30日にまたここで会おう』 第四檄「交渉は『情報戦』」

 ちょっと10分間のトイレ休憩を挟みましたが、ここからは少し趣向を変えて、しばらく「交渉」の話をしたいと思います。 『武器としての交渉思考』という本を出したばかりだからその宣伝がしたいというわけじゃなくて……、何度も言うように本の売上というのは僕にはあまり関係がありませんので、とにかくパラダイムシフトを起こす可能性のあるみなさん方にですね、今日はちょっとした武器を持ち帰っていってもらいたいと思っています。  はい、ではなんで「交渉」を学ぶ必要があるのでしょうか?  本では、「

全文公開 『2020年6月30日にまたここで会おう』 第五檄「人生は『3勝97敗』のゲームだ」

 はい。では次のスライドいきましょう。  リーダー論を少し。 「なぜ日本にはリーダーが育たないのか?」  こういった議論を昔からよく見かけますが、これは問い方が間違っているんだと思いますね。  この問いが前提としているリーダーって、要は「カリスマ」のことなんですよ。誰か自分の代わりに世の中を良くしてくれる救世主、ジョブズみたいな巨大なリーダーを求めているわけです。  そうじゃなくて、今は、「どうすれば日本に『小さなリーダー』たちが育っていくのか?」を考えていくべきです。  今

全文公開 『2020年6月30日にまたここで会おう』 第六檄「よき航海をゆけ」

 はい。この講義も、そろそろ終わりに近づいてまいりました。  1時間半くらい経ちましたかね。  最後のスライドに行く前に、ちょっとここで質疑の時間を取りたいと思います。僕が一気にしゃべったんで、みなさん、ボワーンみたいな感じになっていると思いますが(笑)、もうちょっと普通の話をしたいっていうこともあるでしょうから、質問をいただければ、いくつかお答えいたします。  手を挙げていただければ、係の人がすごいスピードで走ってマイクを渡しに行きますので。今日の話に関係ないことでも、なん