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【怖い話】 ぬりかべ 【「禍話」リライト95.5】

「『ぬりかべ』と聞いて、どんなものを思い浮かべますか?」
 Yさんはそのように話を切り出した。

 ぬりかべと言えばあの、鬼太郎の仲間でコンニャクに手足が生えたような──と答えると、Yさんはそうですよね、と頷く。

「けどそのイメージは、水木しげるが想像……いや創造したモノなんです」

 元々「ぬりかべ」と言うのは、
「目の前が壁のようになって前に進めなくなる」
 という怪異・現象のことを言うのだとYさんは語る。

 民俗学者の柳田國男によって九州の福岡県で聞き取られた話でして。
 ただ呼び名や形状に違いはあるものの四国や中部、中国にも似たような話があるんです。
 当の水木しげるも戦地のラバウルでそっくり同じ体験しているんですよ、云々。

 割とよく見られる現象で、ひどい害があるわけでもない……平和な怪異なんですね、と言うと。
 Yさんは顔を曇らせた。

「……本当にそうなんでしょうか」
 ノートを取り出しながら言う。
「本当にただ、『目の前が壁のようになって前に進めなくなる』だけのことなんでしょうか?」
 Yさんはノートをめくりながら続ける。

 紹介が遅れたが、Yさんは怪談を聞き集めて記し、「禍話」に提供してくれている人物である。
 彼の元に寄せられる話は何故か、妖怪めいた内容のものが多い。

「その『壁』の体験を、ふたりの方から聞いたことがあるんです。聞いた時期も、体験者の年齢も、地域もまるで違うんですが」

 めくっていた指が止まった。

「このふたつの話を聞いたら、僕、『ぬりかべ』がとても怖くなってしまったんです。……聞いていただけますか?」

 そう言ってYさんは、ふたつの体験談を語りはじめた。




【1】Aさんのお父さんの話
 AさんはYさんの知人で、女性である。
「特段、よくないことは起きていないんですが……」
 Aさんがまだ若い頃、お父さんが道端で「変なもの」に会ったという話だ。


 その日お父さんは休みで、夕方近くになってから「ちょっと出かけてくる」と家を出ていった。
 これは休日となると毎度のことで、お父さんは歩いて、友人の家に行くのである。
 ちょっと世間話をして、暗くなりはじめると酒を飲む。
 ほろ酔いくらいで切り上げて、夜の早い時間に帰ってくるのだ。

「またあの人のおうちかなぁ」
「向こうさんにご迷惑じゃないといいけどねぇ」
 などと、Aさんはお母さんと苦笑し合っていた。これも毎度のことだった。


 しかしその日、お父さんはなかなか帰ってこなかった。
 9時を回り、10時を過ぎ、11時を越えてもまだ帰ってこない。
 人が手軽に携帯を持っている時代ではない。連絡もつかない。

 今日はどうしたのかな、ちょっと迎えに行こうか──
 Aさんとお母さんが流石に心配になってきたその時。
 玄関が大きな音を立てて開いた。
 あぁ帰ってきた、と安心していると、びしゃん、と戸が閉まる。
 廊下を走ってくる足音がしたかと思ったら、お父さんがすごい顔で居間に入ってきた。
「大丈夫か! お前ら何もなかったか! 無事か!」
 ただいまも言わずにAさんとお母さんに駆け寄って聞く。
「えっ、どうしたの?」
「私たちなんともないけど……なに?」
 ふたりが答えると、お父さんはそうか、そうか……と呟いて座り込んだ。
 やがて、赤くしていた顔を真っ青にして震えはじめた。額には脂汗が浮いている。
 尋常な様子ではない。
 具合でも悪いの? と聞いても無言で、首を横に振るばかりだ。
 Aさんとお母さんはタオルを出したり、お茶を飲ませたりした。
 やがてお父さんは落ち着きを取り戻して、ぽつぽつと、何があったのかを話しはじめた。

 友達の家で酒を飲んだ帰り道に、
 おそろしいものに出会ったと言う。



 Aさんの家は集落から少し離れた場所にあり、ちょっとした林の道を抜けてあちらへと出る。
 お父さんはいつものようにゆったりと歩いて帰っていた。
 夜で、少し酔っているが、何百、何千回と通った道である。

 月明かりの下をとろとろと歩いていた時に、それはいきなり現れた。

「お前たちみたいなもの・・・・・・だった」
 お父さんはそう言った。

 理由もなくふっ、と目を上げると、「それ」は脇の林の間からちょうど出てきたところだった。

 自分の妻と、娘だった。
 つまりAさんのお母さんと、Aさんである。

 しかし目にした途端に、自分の妻子ではないとわかった。

「引き伸ばされていた」と言う。

 お父さんもどう言ったらいいのか困っている様子だった。だがとにかく、現れた妻と子は「上下に長かった」そうである。


「上に引っぱられて平らになったって言うかさ……いや伸びきったって言うか……あれはどう言ったらいいんだろうな……
 とにかく腕も足も、胴体も顔も、天に向かってニュウッと伸びてて……」


 体全体が縦長に伸びきっていて、指や鼻や口、ほぼすべての部位がべろん、と溶けて垂れたようになっている。
 身長はふつうの人間の高さをはるかに越え、頭の先は木のてっぺん近くまであった。

 ゆるゆると出てきた「それ」は、お父さんの前でこちらに向きを変えた。
 溶けたように伸びきって、歪んで、寸尺のおかしい自分の妻と娘。
 その中で「目」だけが、生きた瞳でお父さんを見下ろしていた。

「全部グチャグチャなのに、目だけ生々しくってさ……」

 来た道を逃げ帰ることもできなかった。
 その二対の「目」に見られていると、足どころか手や首すらも動かせなかった。腕時計すら見れない。

 月明かりが雲で隠れて弱まり、また明るくなる。
 妻子のようなものは自分を見下ろしたまま、微動だにしない。
 時間がわからなくなり、どこにいるのかも曖昧になってきて、このままでは気が狂うのではないか──
 と思っていると、

「突然パッと消えたんだよ。いや、いなくなったのか……」

 お父さんは腰が抜けそうになったものの、いま現れたものの姿を思い出して走った。
 妻子に何かあったのではないか、と考えたのだ。
 夜道を駆けてきて、家に飛び込んで、ふたりに走り寄った、というのである。

「お前たちが無事でよかったよ。本当によかった……」
 お父さんはまだ震えながら、そう話を結んだ。



 ──これを聞いていたYさんは、「すごく怖い体験ですね」とAさんに告げた。
 するとAさんは首を横に振った。
 それだけじゃないんです、と言う。
「もっと気味の悪いことが、2、3日後にあったんです」



 お父さんが何事もなく帰宅したのはよかったものの、Aさんもお母さんもソワソワしていた。
 なにせ異形の自分たちが現れたというのだ。悪いことが起きる前触れかもしれない。

 それで数日後にAさんは、「そういえば一昨日の晩さぁ……」とお父さんに話を振ってみた。

 するとお父さんは、「あぁ、あれは怖かったなぁ」と答えた。


「帰り道にいきなり壁みたいなものができて、前に進めなくなってなぁ。壁って言うか幕って言うか……
 言ったよな? その壁に、顔か目みたいなのかついてたんだ。それが怖くって足が動かなくなっちゃってなぁ」


 違う。

「えっ、私とお母さんみたいなものが出てきたんでしょ?」
 驚いたAさんが聞くと、お父さんは顔をしかめた。
「お前と母さん? なに言ってるんだ? 俺は壁みたいなものにぶつかって進めなくなったんだよ。そう言っただろ?」

 そんな馬鹿な。

 Aさんはお母さんを呼んだ。
 お母さんも、「妻と子のようなものが出てきて睨まれた」というお父さんの話をきちんと記憶していた。
 確かに聞いたという証人がふたりもいるのに、お父さんの態度は頑なだった。
「そんなことがあったら忘れるわけないよ。壁だよ壁! 顔か目みたいなのがついた壁があったんだよ!」
 しまいにはAさんとお母さんの方がおかしい、とまて言い出す。俺はそんなもの見ていないし話もしていない。お前たちが勘違いしている、と。

 どこまでいっても押し問答だった。
 雰囲気が悪くなってしまったので、この話題は一旦、打ち切りとなった。


 お父さんの話はそれからも、どんどん変化して曖昧になっていった。

 ほとぼりも冷めたかなと思った10日ほど後のことである。
 Aさんはそっと、「そういえば2週間前、お父さんが夜中に帰ってきた時……」と水を向けてみた。

 お父さんはあぁ、あれなぁ。不思議な体験だったなぁ、と言う。


「見慣れた道が急に行き止まりになってとても困った。あれはとても変な出来事だったよ」


 そんなことを言う。
 玄関を開けて飛び込んできたり、「大丈夫か!」と聞いたり、震えてしばらく喋れなくなったことも、なかったかのような顔つきだった。
「妙なこともあるもんだよなぁ。まぁ俺が酔ってたのかもしんないなぁ」
 照れ臭そうに笑いながら、穏やかに語ったのだそうだ。



「……おかしいですよね。おかしくないですか?」
 Aさんは眉を寄せながら、Yさんに言った。
「2週間とか3日で、あんなに怖い体験がどんどん曖昧になって変わってしまうなんて……そんなことって、あるんでしょうか?」

 ──前述のように、お父さんもお母さんもAさんも、あの夜から現在に至るまで何事もなく、元気に暮らしているという。




【2】Bさんの話
 Bさんは、Yさんよりずっと年上の男性である。
 1話目のAさんとは何の関わりもなく、聞いた時期も地域もまるで別だ。

 BさんとYさんは、新聞社のイベントで知り合ったそうだ。山登りが好きで、Yさんが怖い話を集めていると知ると、
「じゃあ山でオバケが出たら、真っ先に知らせてあげるよ!」と笑っていたという。



 そんなある夜、Yさんの元にBさんから電話があった。
「きょう山に行って、さっき帰ってきたんけどさ! すっげぇ変なもの見ちゃって!」
 Bさんは興奮気味に、山での出来事を語りはじめた。



 Bさんが趣味としている「山登り」は、道具を使うようなハードなものではない。山道を歩くのである。
 その日Bさんが出向いた山は道もしっかりしていたし、難しい場所ではなかった。
 だがどんな山であっても、ちょっとした焦りやミスが命取りとなる。
 Bさんは朝から開始して、午後の早い時間に山を降りはじめた。暗くなりそうだと急いだりするのは危ないからだ。時間に余裕をもって動かなければならない。

 林道の真ん中をひとり歩く。周囲には誰もおらず、連れもいない。

 足元にやっていた視線をふっ、と上げると、「それ」はいた。
 3人いた。

 手前と、その斜めうしろに、こっちを向いて立っている男と女がいた。
 ちょうどふたりを区切るような位置に、脇腹を下にして寝そべっている男がいた。
 全員静かに、目を閉じている。

 木々の間から射してくる陽光に照らされた3人の姿は、どうにも形がおかしかった。
 粘土の人形を引っ張ったみたいに、にゅうっと平たく長い。バランスがおかしい。
 一応、人の形はしている。しかしどう見ても生きた人間ではない。

 しかもその3人は、Bさんのよく知っている人だった。
 手前に立っているのが兄で、奥にいるのが母親だ。歪んでいてもわかる。
 そして真ん中で横になっているのは、Bさん本人だった。


 幻覚だ、と思ったらしい。

「山って結構、体力を消耗するんだよな。あと精神力もさ。知らないうちに疲れ切ってる、ってことがよくあるんだよ」

 そんな時にはありもしないモノを見たり、妙な音や声が聞こえたりするという。

「どう考えてもありえないだろ? 俺と家族がさ、びろーんと伸びて山ん中にいるなんて。しかもその3人がさぁ、すっげぇ気味悪いんだよ」

 Bさんは目の前にいた3人の不気味さを語ろうとした。

「なんつうのかなぁ、そこにいるんじゃなくて、山の風景をさ、3人ごと切り取ってそこに貼り付けたって言うか」
 Bさんは表現や言葉選びに苦労している様子だった。
「う~ん違うな。木と木の間に投影……いや、嵌め込んだっていうか。難しいなぁ。それに、その3人の姿がさぁ」

 動いている感じがしたのだという。
 手足や表情が動いているのではない。

「体全体が動いてる……いや、蠢いてるつったらいいのかな。全身が小さい粒の集まりみたいにジャリジャリ、ウジャウジャしてるんだよ」

 Bさんはこの他にも、立体感がない、平たい、というような表現を幾度か使った。

 その時のBさんは「これは大変だ」と思ったらしい。
 こんなものは幻覚に違いない。気づかないうちにひどく疲れていたのだろう。休まなければいけない。
 木陰で一服しようか、と思っていたその矢先だった。


 立っているふたりと、寝ているひとり。
 その3人の目がゆっくりと開いて、Bさんを見返した。
 濡れて光のある、生きた目をしていた。

 あ。これは幻覚じゃない。
 Bさんは直感した。 
 確かに、この3人は、目の前にいる、と思った。

 3人の、6つの見開いた目に凝視されたBさんは、身がすくんで一歩も動けなくなった。
 指すら動かせない。背中が固まっている。時折つぅ、と顔や背をいやな汗が流れていく。

 目はまばたきもせず、じいっとBさんを見下ろし、見つめている。

 まだ明るかった山は徐々に夕方の日射しへと変わっていく。
 林の中にぬっくりと立ち、寝そべっているものたちを照らす光が、白から黄色へと変わる。黄色が赤みを帯びはじめる。

 夕暮れが近い。もう何時間経ったのかすらわからない。2時間、いや3時間か。わからない。
 全身がぐっしょり汗で濡れていた。
 もうこのまま日が暮れるのではないか、動けないまま夜になり、暗闇になっても「これ」が居座ったままだったら──
 めまいにも似た思いが頭をかけ巡っていたその時、

「ハッ、と気づいたら、もういなかったんだよ……」

 全身が汗で冷えているのもそのままに、Bさんは逃げるように山を降りたのだという。



「……いや、すごい体験ですね」とYさんがため息混じりに言うと、
「だろ? あんなおっかないモノ、見たことなかったからさぁ……」とBさんは答えた。
 そのあとの話題は、平和な雑談へと流れていった。
 Bさんによる登山語りや、若いYさんへの人生訓めいた話が続いた後で、電話での会話は終わった。



 YさんはBさんの体験を、メモしつつ聞いていた。
 疲れのせいか、話が前後したり描写が混乱したりしていたBさんの話を整えて、一本の体験談として綺麗にまとめた。


 数日後、YさんはBさんに電話をかけた。話の細部を詰めて確認しようと思ったのだ。
 先日、山で3人の人ならぬモノと出会ったお話なんですが──とYさんが切り出すと、

「3人? ひと?」
 電話口から驚いたような声が聞こえてきた。
「俺そんなこと話したっけ? いやぁ全然違うよ。Yくんさぁ、なんか勘違いしてない?」
 Bさんは続ける。
「そんなスゴい話じゃなくてさぁ、なんか、行く手に壁みたいなのがあった、って話だったでしょ?」
 壁、ですか。とYさんは言った。
「そうそう。あ~でも、その壁になんか、顔か目みたいなのがあったんだっけかなぁ。うん。顔とか目、それは気持ち悪いよな」
 まるで他人事のようにBさんは言った。

 Yさんがメモを元に尋ねても、要領を得ない返事ばかりだった。

 そんなことなかったよ。
 壁だよ壁。
 壁か幕みたいなモノだよ。
 家族と俺? なんのこと?

 とりつく島がなかった。

 その次に連絡をとった時には、Bさんは山での体験をほとんど忘れてしまっていたという。



【3】Yさんの語り
 Yさんはふたつの話をし終えてから、探るように口を開いた。

「家族や自分自身の歪んだ姿が現れた、という強烈な体験が、たかだか数日で『壁に阻まれた』という話に変わったりするものでしょうか?
 やっぱり妖怪とか怪異なんてないんだよ、幻覚を見たんだよ、と言うことは簡単です。そちらの方が健全で、平和な考え方かもしれません。

 けど僕は、こうも考えられるのではないか、と思うんです。

 あまりにも恐ろしいモノに出会ってしまったその恐怖を『忘れてしまいたい』という本能のようなものが、
 数日とか2週間といった短い期間で、記憶の大部分を消したり、ほとんど全てを塗り替えてしまうのではないか。

 その末に、かろうじて体験者の頭に残るのが、『目の前が壁のようになって進めなくなった』という記憶だけなのではないか。
『ぬりかべ』という怪異の一部、あるいはもっと多くが、本当はこのような現象なのではないだろうか、と……」


 Yさんはそこまで言ってから少し、口をつぐんだ。
 迷っている様子だったが、やがて、
「……これは仮説の上の仮説なので、あまり当てにせずに聞いてくださいね」
 と小さな声で語りはじめた。


「……体験した人が、ハッと気づいてから、逃げ帰って、人に話すまでにも、ある程度の時間が経っていますよね?
 もしかしたらその短い合間にも、記憶から何かが失われたり、書き換えられたりしているんじゃないでしょうか。
 だから……おふたりが見たという歪んだ家族や自分の姿というのも、ほんとうに見たものではないのかもしれません。
 あるいは彼らは、もっと恐ろしいものに出会ってしまったのかもしれない、と思うんです」


 もっと恐ろしいものとは何ですか。
 そう尋ねたが、Yさんは答えてくれなかった。
 代わりにYさんは、ノートに挟み込んでいたメモ用紙を取り出した。

「これは、Bさんと電話をしている時にとっていたメモです。最初の電話の、歪んだ姿の3人に見つめられた、という話をした時のもので……」

 Yさんはメモの、下の部分を指さした。

「Bさんが会話の終わり頃、ふと思いついたように『たとえ』を口にしたんです。
 もちろんBさん本人はもう、すっかり忘れてしまっていますが……
 僕はこの『たとえ』が、どうしても忘れられないんですよ」


 ──箇条書きであったそのメモを、「話し言葉」に改めたものを置いて、この話を終えようと思う。



 そういえばさ、さっきの話。
 しっくりくる表現を思いついてさ。
 山ん中で兄貴とおふくろと俺がいた話だよ。
 3人の姿ってさ、ザラザラしてて不安定で、すげぇ気味悪かったんだけど……

「 嘘くさい 」って感じがしたんだよな。

 でっち上げって言うか、見せかけって言うか。
 あぁいうの、なんかどっかで見たことある気がするんだけど……
 何かに似てた気がするんだよなぁ……ええっと……

 あっ、そうそう! あれだよ。

 昔のスパイ映画とか、古いサスペンスドラマに出てくるやつでさ。
 壁にかかってる肖像画の、「目」の所だけくり抜いて、監視に使うってやつ。
 あるだろ?

 そうだそうだ、あれだよ。
 あれにそっくりだったんだよ。


 だからあれって、もしかしたらさぁ……


 動けなくなってる俺を、
 風景や人間に見せかけた壁越しに、
 なにかが目だけ出して、
 覗いてたんじゃないか、って……





【完】



 
 

★本記事は、無料&著作権フリーの怖い話ツイキャス「禍話」、
 シン・禍話 第四夜
 で朗読されました余寒さんによる『怪談手帖』「ぬりかべ 二題」を、
 不遜ながら咀嚼し、ほぐして肉付けし、編集・再構成してお送りしました。


Yさんこと余寒さんによる怖い話「怪談手帖」は、なんと一冊の本にまとまっています。

 あなたの知っている妖怪から、見たことも聞いたこともない怪異まで。
 それらが端正で静かな文章によってほどかれ、広がり、異形のものどもへと変貌していく……

 珠玉の一冊『余寒の怪談帖』、boothにて電書が超・発売中です

【各方面から絶賛の声!】
かぁなっき(禍話・語り手)
「はい怖い~! いやぁもうこれはダメだね。誰かファンアート描いて。怖いから」
加藤よしき(聞き手)
「いやぁこれはね、怖いばい。怖い。あの、彼はねぇ……いーぃ仕事を、するねぇ……」

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