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【ホラー映画シナリオ】 オーライ! 【「禍話」リライト番外編】

 本記事は、「禍話リライト」のシナリオ(脚本)版となります。

Q.これは、なんですか?

A.「禍話」に定期的にゲスト出演されている映画監督・夏目大一朗さんが、「禍話を短編映画にしたい」「すぐ撮る。今年撮る」と打診。
 その映画の脚本を募集します、との告知があり、私も3本送りました。
 つまりこちらは、「禍話を原作とした短編映画の脚本」となります。夏目監督から脚本公開の認可はいただいております。

 採用されたシナリオは映像化され、12月18日(日)、東京で開催される「東京禍演 ~2022冬~」にて公開される予定です(詳細は下記)

 夏目監督いわく、「将来的には送られてきたシナリオは全て映像化し、DVDにしたい」とのことです。

 こちらのシナリオはいわば「素材」なので、完成作との異動があるかもしれません。
 また、「映画脚本」へと書き換える都合上、ツイキャスで話された内容から細かな/大幅な脚色がなされている場合があります。ご了承ください。

●○●○●

【禍話短編映画シナリオ ①】
「オーライ!」


【シーン1】
 マンションの一室/夜

 若い男(夏雄、太一)2人がテーブルを挟んで、買ってきたお酒を飲んでいる。
 なごやかな光景。

 これに重ねて、

ナレーション
「皆さん、コンビニって行きますか?
 歩きで? 自転車? 車?
 車で。それはよくないですね……
 なぜって、こんな話があるんですよ……」

 夏雄、テーブルに酒の缶を置く。

夏雄
「(酔った口調で) そういえばさぁ、このへんのどっかに、オバケが出るコンビニがあるらしいんだわ。知ってる?」

太一
「(酔っていない 飲みながら) いやぁ知らんけど。そんなんあるの?」

夏雄
「なんかそのコンビニさぁ。駐車場あるじゃん、駐車場、ね? そこにこう……
(ハンドルを握って後ろに下がるジェスチャー)
 ……バックで車を入れて停めちゃダメなんだってさ」

太一
「(興味のない様子で) へぇ~」

夏雄
「なんでかって言うと、車をバックで入れるとさ、下がってる時に、車の後ろに、若い男と女がいてさ、
(怖そうな声を作って、手の動きをつけて)
『オーライ、オーライ』……って言ってるんだって! 全然知らないカップルが! これマジだったら、超コワくない?」

太一
「あー、それは怖いねぇ (興味の薄い表情で、ツマミなどを齧る)」

夏雄
「だからさぁ、そこのコンビニがヤバいってみんな知ってるから、車はぜーんぶ、バックじゃなくて、こう……頭から突っ込むみたいに駐車してあるんだってさ」

太一
「……頭から? (飲み食いの手が止まり、夏雄の方を見る) じゃあアレ? 全部こう……道路に後ろを向ける感じで、車が停めてある、ってこと?」

夏雄
「そうそうそう。だからもしさぁ、通りすがりのコンビニで車が全部、こっちに後ろを向けて停めてあったら、怖いよねぇ」

太一
「あー、うん (視線をぼんやりと漂わせる。思い出そうとしている) 本当にあったら、怖いよね……」

 カメラは太一の思案顔のみ捉えている

隣にいる夏雄の声
「こんな話聞いちゃったらさぁ、単なる偶然でそう並んでたとしてもヒヤッとするし、ゆっくり車の運転も……」

 声が遠ざかっていく。

 カメラ、太一の顔に寄っていきながら、

ナレーション
「この話を聞いた彼には、思い当たる店があったそうです。
 彼はドライブが好きで、近場の山や海に行くのが好きなのでした。
 その、山。時折行く山の途中に、コンビニがあるんです」

(映像がよぎる)
 コンビニの駐車場
 後ろを向けて停めてある車、車、車……

太一の心の声
(あそこって……そういえば……)

夏雄
「なに? どうした?」

太一
「あ? いや……なんでもない」



【シーン2】
 車内/別の夜
 太一がひとりで車を運転している。
 少しワクワクしているような、興味津々といった様子。

 この映像に被せながら、

ナレーション
「もしも、この話の舞台があのコンビニだったら面白いなと思った彼は、試してみようと思ったそうです。
 つまり、コンビニの駐車場にバックで車を入れたら、本当にカップルの幽霊が出るんだろうか、と……」

 暗い路面が流れていく。
 途切れる。
 代わりに煌々としたコンビニの明かりがアスファルトを照らす。
 コンビニの駐車場に着いたのだ。

 車内。
 興奮と好奇心の面持ちで、かちりとウインカーを出す太一。
 駐車場に入ってから、ゆるやかに曲がり、ブレーキを踏む。
 運転席から振り向いて直接、後方を見る。

 コンビニの駐車スペースが、後ろのウインドウ越しに見える。
 夜。店の明かりに照らされているが、暗がりも多い。不気味な雰囲気。

 太一、前に向き直ってハンドルを握る。

太一
「……よしっ」

 太一、ギアをバックに入れる。
 ピーッ、ピーッ、というバックの警告音が響く。
 太一は腹を決めた顔つきで、ゆっくりと足に力を入れて、バックをしはじめて──



【シーン3】
 車の横っぱらについた傷。
 夏雄のマンション近くの路上/翌日の昼
 太一が悲しそうな顔、夏雄が呆れたような顔で、その傷を見ている。

夏雄
「で? ビックリして、急いで出たら、こすっちゃったの?」

太一
「うん……。2万だって。塗り直し」

夏雄
「(ため息混じりに) バカだなぁ~…… (好奇心をにじませて) で? 出たの? カップル」

太一
「(低い調子で) 出たよ」

夏雄
「えっマジで? 見間違いじゃなく?」

太一
「マジで出たよ」

夏雄
「やっぱアレ? バックで入れようとしたら、車の後ろに立ってて──」

太一
「そんなんじゃ、こんなに (顎で車の傷を示す) ビックリしないよ」



【シーン4】
 時間戻る。
 シーン2の終わりをもう一度。

 太一、前に向き直ってハンドルを握る。

太一
「……よしっ」

 太一、ギアをバックに入れる。
 ピーッ、ピーッ、というようなバックの警告音が響く。
 太一は腹を決めて、ゆっくりと足に力を入れて、バックをしはじめる。

 この映像に被せて、

太一(声)
「後ろつっても、駐車場じゃなくてさぁ──」

 太一、自然な流れといった動きで、バックミラーに目をやる。

 バックミラーの中。

 暗い後部座席に、青白い顔の若いカップルが座っている。

「オーライ、オーライ」と小声。
 二人共に「オーライ」の手ぶり。

太一(声)
「──後部座席にいたんだよ」


暗転

ナレーション
「こんな話が、あったそうですよ」


【終】


★本記事は無料&著作権フリーの怖い話ツイキャス「禍話」
 燈魂百物語 第零夜 より、編集・脚色・再構成してお送りしました。

◆👻🎤おしらせ🎤👻◆

 2022年が終わる、「禍話」で終わる!
 今年の「禍」は三本立て!

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