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Kindle Unlimited に登録してどんな本があるのか調べてみたよ。

●まとめ
・書籍読み放題サービス Kindle Unlimited が始まったよ
・文芸2万冊、マンガ3万6千冊、そのうちレビューのある半分ほどを探したよ
・ラインナップが微妙! 様子見て、後で30日の無料期間を貰うのがおすすめ
・光文社古典新訳文庫が好きかい? それならすぐに登録するんだ

1 Kindle Unlimited

・詳しい説明は公式にもあっちゃこっちゃにもあるので割愛。簡単に言えばAmazonのKindle(もしくはPCやタブレット・スマホのアプリ)で読める書籍・マンガの読み放題サービス。月額980円で12万冊以上、が触れ込み。

・割と大切なポイントとして「同時に登録できるのは10冊まで」がある。その後はどれか消さないと新しいのは読めないという図書館ライクなシステム。また今後ラインナップが増えるだけでなく減る、つまり入れ替わりの可能性もあるらしい。

・キンドル使い慣れてる身として、とにかく知りたいのはコンテンツの充実度だけ。そんなわけで、ひたすら★=1以上(つまりレビュー1件以上ある)本を、「文芸」「ライトノベル」「コミック」の3ジャンルで探し、興味のある本を洗い出してリストを作りました。

2 文芸

・数年前『カラマーゾフの兄弟』の新訳がヒットしましたよねぇ。「いま、息をしている言葉で」をキャッチコピーに、文学・思想の古典の新訳を出してきた光文社古典新訳文庫、ラインナップはおおよそ200冊くらいだと思うのですが、Kindle Unlimited ではなんとこのうちの174冊が読み放題! 震撼!

・ソクラテス、ニーチェ、カント、ハイデガーの思想書も、カフカ、ドストエフスキー、シェイクスピアの文学も読み放題! ぶっちゃけ「これだけで月額980円の価値あり」などと言われているほどです。僕もこれまで40冊ほど購入していたため、非常に魅力的です。

・と、この最大の目玉を除いたとすると、文芸ジャンルはそれほど良いラインナップとは思えません。文芸・評論ジャンルの2万冊のうち、レビューが一つでもついているものはわずか5000冊。では他の1万5000冊はなんなのか、ということですが、下のツイートを見ていただくとわかるように、

①「平家物語」などの古典、国会図書館のアーカイブから? 
②夏目漱石など青空文庫にあるもの 
③アマチュア翻訳家による著作権の切れた海外文学 
④BL小説 
⑤ティーンズ向け微エロ小説→官能小説 
⑥ネット出版されたアマチュア作家の本

・という感じで、有名作家の本は非常に少ないです。宮部みゆきも村上春樹もゼロ冊。とりあえず自分の好きな作家を10人くらい挙げて、読み放題の本があるかどうか検索してみることをお勧めします。

・レビューのあった5000冊を見まわして、少しでも興味を抱いた本を抜き出したリストが以下になります。
https://www.amazon.co.jp/gp/registry/wishlist/B5KMMYCFEJH7/ref=topnav_lists_4 

・講談社青い鳥文庫が30冊程度ありますが、シリーズの1-2作目くらいだけが無料対象のようです。後のライトノベル・コミックのところでも書きますが、「1巻あるいは3巻くらいまで無料」で、その続きは買ってね、というシリーズが多いですね。雑食で色々読む僕には割と嬉しいサービスなのですが、それにしては人気シリーズはそこまで多くなく、ラインナップが貧弱だと感じました。

・文芸に限らず、出版社・著者によってかなりの偏りがあるのですが、「創元SF文庫」などを出版している創元社の本はかなり登録されています。笹本祐一、大原まり子、川又千秋の作品が読めてファンは嬉しいのではないかと。あとは、「グランド・フィナーレ」で芥川賞を受賞した(既にその時点で有名作家だっただけど)阿部和重の作品がむっちゃ沢山入ってます。どうもコルク(出版エージェント)が版権持ってるかららしい。そんなわけで平野啓一郎の最新作『マチネの終わりに』も読めます。

・それでは一つおすすめ作品、ベニー松山の『風よ、龍に届いているか』は、ウィザードリィというゲームを下敷きにしていますが、ゲームをはるかに飛び越えた素晴らしい文学作品になっています。ぜひ一読を。

2 ライトノベル

・ジャンル「ライトノベル」はオープン時点で2633冊。出版社で絞り込みを入れればすぐわかるのですが、角川スニーカーも富士見も電撃もファミ通もMF文庫もありません。ガガガ文庫ぐぬぬ……。その大半、6-7割がBL、乙女、微エロ、18禁ラノベです。一迅社、ガガガ文庫、HJ文庫がちらほらと読める感じです。そんなわけで、読みたいリストもごく少なく20冊ほど。しかも、ラノベの多くは「1巻だけ無料」というお試し的な位置づけ。ライトノベルが目当てであれば、Kindle Unlimited は良い選択とは言えないでしょう。今後、大手レーベルが参入するまで様子を見た方がよさそうです。

・とはいえ、上のリストに入れましたが、僕の愛する田中ロミオの単巻作品が読めるのは魅力。映画化した『AURA』とか、最近出た『犬と魔法のファンタジ-』も。アニメ化作品なら「はまち」「下ネタ」「GJ部」「人生」なんかの一巻も読めますね。『僕の妹は漢字が読める』は設定がぶっ飛んでるので一読おすすめ。懐かしいところでは魔術士オーフェンのかなりの冊数が読めるみたいです。

3 コミック

・たぶん最大の売りとも言えそうなコミック、ラインナップはオープン時点で32766冊。とはいえ、数十冊続くシリーズなんかも入ってるので、タイトルだけで考えると半分くらい? で、こちらも出版社検索をかけるとすぐわかりますが、マガジンの講談社、ジャンプの集英社、サンデーの小学館が入ってません。さらに、検索していってみると、出るわ出るわのエロマンガの嵐。もはやエロがメインなのではないか、と思えるほどの冊数。というわけで、作成したリストの冊数は、全体の多さに比べてわずか105タイトル。こちらも、1巻だけ読める、というパターンが多いです。これも、マンガ好きが納得出来るラインナップではないと思います。

・ただ、ライトノベルのがっかり感に比べると、コミックの方はまだ名作が多い、ということも言えそうです。まずは新井英樹作品が大量に読むことができます。『キーチ!』『シュガー』はおすすめ。松本次郎、山本直樹、古屋兎丸もそこそこ登録されてますね。少女漫画の名作『イティハーサ』『風と木の詩』『地球へ…』『ベルサイユのばら』が全巻読めるのは嬉しいところ。手塚治虫作品は40冊ほど。名作『アドルフに告ぐ』は全巻無料です。ずっと読みたかった藤原カムイの『雷火』や志村貴子『青い花』さいとうたかを『サバイバル』も全巻ありました。今挙げたタイトルで読みたいのがある人ならコスパは悪くないのではないかと。ただ、このままラインナップが変わらないのであれば、2-3か月で読みたいのが無くなってしまいそうなので、今後の追加がどうなるかが重要ですね

4 雑誌

・これに関しては、鷹野凌さんがしっかりと分析されているので、以下のツイート、リンクをご参照下さい。

・僕もこれまでdマガジンを契約してたのですが、この期にKindle Unlimited に移行してみました。鷹野さんの分析通り、大手誌が少ないのでかなり物足りない印象です。

5 その他・まとめ

・Kindle Unlimited にはほかにも「実用」「人文」などのジャンルがありますが、こちらも個人的興味を満足させてくれる本はほとんどありませんでした。「児童書」ジャンルにアダルト的なのを出すのを早くなんとかしてほしいが…一方で、語学、英語の参考書、資格試験の参考書などは豊富にあるようなので、個別の用途には役立つものがあるかもしれません。

・文芸・コミック・ラノベ・雑誌とも、「残念なラインナップ」という印象がありますが、それでもこれらのジャンルを総合して考えてみれば、月額980円は十分なコストパフォーマンスだと感じます。もしも今後、ほかの出版社が参加したり、あるいは新刊の登録が盛んに行われるようなら、登録してみても損にはならないかと。この記事を読んで、今の時点では魅力がない、と感じるのであれば、登録時から30日間無料期間がついてくるので、しばらく動向を見守ってから登録するほうがいいかもしれません。

・ああ、光文社古典新訳文庫がお好きですか? それなら迷う必要なんてないでしょ。うん、僕にとってはほんと、光文社古典新訳文庫 Unlimited です。

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