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勢い余って出版社を立ち上げた話

過去2冊の出版に関わらせていただき、様々ことを学びました。関わってくれた出版社、編集者にはもちろん感謝していますが、実現したいことがあり、この度、自ら出版社を立ち上げることにしました。

立ち上げることを決めた時、「出版不況のご時世、今更なんで?」と質問してくれた人もいたので、所信表明ととしてなぜ、出版社を立ち上げようと思ったかを説明します。

初めての出版から得た経験

執筆自体が初めてなので、「脱稿?編集?ゲラ?入稿?」編集者の言っていることがさっぱりわからず、とりあえず言われたことを期日通りにやるのに必死でした。後からそんな作業もあったのか!!など、驚きの連続でした。

けれども発売後、出版業界に興味が湧き、調べていくうちに徐々にやってきたことが理解できるようになりました。自分の理解では下図のようにして、本が書店に納品されていきます。

ここでまず知っていただきたいのが編集プロダクション(略して編プロ)という人の存在です。出版社は全ての作業を受け持つ場合もあれば、外部の協力会社に依頼することがあります。僕は編集プロを経由して出版社とやり取りをしました。(編プロなしの場合は、編プロの仕事を出版社が受け持つようなイメージです。)

編プロは企画を立てるとは言っても、著者が書けない内容をオーダーする訳にもいかないので、一緒に企画を作ります。その企画書を編プロが出版社に持っていき、出版するかしないのか判断する企画会議を通して出版計画が決まります。もし、一発で通過しなかった場合は何が他の書籍と違うのかなど、出版社の懸念を払拭するための追加資料を編プロさんに提出します。

著者と言いつつもただ原稿を書くだけでなく、結果的に企画を自ら作り上げる必要があります。「この分野は出尽くしている」「レッドオーシャンだ」などと出版社側はあまり乗り気ではなかった企画を編集者が説得し、無事企画を通過することができたのです。

発売後が本当のスタート…

出版社業界の中で「売れない本は悪」という名言があるようです…。編集者からは次のように口酸っぱく言われておりました。「初版出しただけで満足するな。2刷出せたとしても、初刷が市場在庫として残っているからマイナスか±0ぐらい。3刷出せてようやく本単体として成り立つ」と…。
(補足:「売れない本は悪」は拙著の編集担当者の言葉ではありません。)

発売直後の販促活動

と言うことで、著者は書いて終わりではないのです。著者の肩書を手に入れたと同時に「売らなければならない」というミッションが付いてきました。

献本リストの作成、ソーシャルでの拡散、店舗回りをする人もいれば、勉強会を通じてPRする人など、手法は様々ですがやるべき仕事が多いのです。著者は広告塔となって、その本を売りに行脚します。イベントを行うために時間を使ったり、久々の連絡となるような人とは会食をしつつ話を聞いてもらったり、色々と出費が多いです。

出版社が書店に並べてくれることに効果も当然あるかとは思いますが、感覚的にはソーシャル上でのヒットも大きく、誰かがツイートしたり、寄稿がバズったりするタイミングで売上が増加している印象を強く受けました。もちろん、書店が有効ではないという話ではありませんが、書店外でのこうした地道な販促活動こそが発売初期において非常に重要なイベントなのです。

発売直後は書店でも様子を見るために平積みされるケースも多いですが、数週間から1ヶ月の売れ行きを見て「この本は売れない」と思われたら平積みから棚に入れられ、背表紙のみで勝負することになります。平積みされる前提で表紙を作っても効果が得られなくなります。長く平積みされるには、出版初期の売れ行きが重要なのです。

販促活動を終えて感じたこと

確かに生まれて間もない本には、ソーシャル上での活動や勉強会などを通じて認知してもらうことが大切だと感じます。あるいは、タイトルと表紙(装丁と呼ぶらしい)が重要な要素なのかもしれません。昨今、Amazonでは中身を見ることなく本を購入する人も一定層いるはずです。

ただ、それが通じるのも初期の話で、読者が増えると良いレビュー、悪いレビューがAmazonに投稿され、それが意思決定に大きく作用します。

幸いにも関わった本は初期の販売活動を終えてからからも、順調に増刷しています。AmazonのレビューやTwitterを見て感じたことは、読者は「同じような現場で同じような悩みを抱えているんだ!」という印象を受けました。

「なぜ自分の書いた本が売れたのか?」を一言でまとめるならば、「現場が必要としているものを現場の人が書いたから」だからだと思っています。

突然湧いてきた構想と実らぬ恋…

初めて書いた本で修羅場を経験し、その後も休む間もなく販促活動などを行い、もう二度と本を書くもんか!と思っていました。しかし、1年半が過ぎた頃、ある体験を通じて「これを本にしたら面白そう!!これを自分の本として出したい!」と性懲りもなく思ってしまったのです…。

そこで書き上げたのが今回出版することになった『仕事の説明書〜あなたは今どんなゲームをしているのか〜』です。その原稿を持って、いくつかの出版社を回りました。出版経験があること、関わった本が売れていることから、簡単に出版出来るだろう!と思っていたのが間違いでした…。

著者になる条件とは

いくつかの出版社にいざ営業に出かけると、思いもよらない質問が飛んできました。

「あなたの本を何故、読者がお金を出して読まないといけないの?」

これはどの出版社でも問われたことでした。
その他に以下のような質問をいただきました。

・メルマガ会員が数万人いる
・すでにビジネスに関するセミナーで2,000人以上を指導した
・○○会社卒であること ○○会社CEOであること

当時、フリーランスであった僕は何かを持っている訳ではありませんでした。著者になるには著者になるなりの理由が必要なのです。

提示される条件

久々に過去の取引先に連絡するも今後の活躍を祈られたり、著者仲間に出版社を紹介してもらうという、いわば恋愛でいう成功確率の高い「友達紹介」にも関わらず、お断りの連続…。もう諦めようかなと思っていた時、条件付きでOKをいただいた出版社がいくつか出てきました。内容は出版社で様々でしたが、「ページ数を**以内にすること」「ゲームの要素を除くこと」「ワンテーマにすること」「タイトルはこのようにすること」などなど…。

『仕事の説明書』は確かにワンテーマには見えない人もいるかもしれません。

・仕事を楽しむために必要な考え方を学ぶ本
・ゲームを通じて難しいことを簡単に学ぶ本
・フレームワークを活用するための本
・問題解決の本

など、様々な感じ方をするかもしれません。

本のテーマは曖昧よりも明確な方が売れ行きが伸びる可能性は高いと思います。しかし、今回は読者に何かを感じてもらい、仕事に還元することを最大の目的に据えた結果、ワンテーマに絞ることやページ数を減らすことは許容できませんでした。なぜなら、仕事で悩む理由やフェーズは人によって様々であるため、テーマを絞れば絞るほど、価値を提供できる方に制限が出てしまうからです。

やっぱり自分の書きたい本を出したい

「著者になる権利もない」「ページ数やテーマを限定することは許容できない」僕はやりたいこともやれず、出来上がった作品をお蔵入りさせてしまうのか?それだけは避けたいと思っていた時に、出版社から思いもよらぬ提案をいただきました。

「そこまで固い決意をお持ちなら、
   自費出版をしてみてはいかがでしょうか?」

当初は「有名な出版社でリスクなくやりたい」と思っていたが、聞いたり調べていくうちに何でも自分でコントロールできるし、やり方によっては書店流通が可能なルートも見つけ、より自由に執筆できることに魅力を感じました。また、出版社を立ち上げた方々の本を複数読んで、いろいろ学んだ結果、「自分で出版社を立ち上げればいいんだ!!」と自費出版の提案が脳内では「出版社を作る」に置き換わっていたのです。

思い返せば、結局企画も編プロさんと作っていたし、販促活動も著者で行った。せっかく書籍に携わるのであれば、もっと詳しく知りたい!そして何よりも

「やりたいことを自分の責任で自分のスピードで最速にやるには、これしかない!!」と感じたのです。

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以上が、出版社の立ち上げの話になります。

「出版不況のご時世、今更なんで?」と質問してくれた人への答えとしては、「実はあんまり深くは考えておらず、やりたいことを自分の責任で自分のスピードで最速にやるには、これしかない!!」と思ったからです。どうせ一度きりの人生なので、楽しみたいのです。

僕は普段はフリーランスとして、生計を立てています。そのため、活動できる時間は

・通勤時間
・お昼の休憩時間
・家に帰ってから
・土日

なのです。言ってみれば、自分の仕事以外の時間を費やさないと1冊の本が出せないのです。それでも伝えたいことがあったり、形にすることが楽しくてならないのです。

土日出版と屋号を決めたのも「現場視線を外さず、自分の書きたいことを書く」という決意を込め命名しました。また、キャッチコピー?としては少し長いけれども、下記メッセージを掲げ出版社として歩んでいこうと決めたのです。

「平日に現場で働いているからこそ伝えられることがある。
 土日を執筆に割いてでも伝えたい事がある。」

そのため、他の出版社と比べて、バンバン毎月出すような形態は取れませんが、足元の仕事をこなしつつ、うまいこと時間を捻出して、皆様に支持されるような出版社を目指したいと思います。

これを所信表明とさせていただきます。
長文、ご一読いただきまして、ありがとうございました。 

追伸

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