見出し画像

決断に必要なもの

バイヤーに必要な能力はいくつかあるが、もっとも大事なものは、決断力である。

バイヤーの仕事は、日々決断の連続である。決めることがバイヤーの仕事といっても過言ではない。例えば、ひとつの商品をとっても、バイヤーが決めなくてはならないのが、①どの商品を買うか、②何個買うか、③買った商品をどのように買うか、などである。バイヤーの仕事のガイドラインは、誰も作ってはくれない。自分への指示は、自分で出さなければならない。

バイヤーは限られた予算の中で、最大限の効果をあげることが求められる。そして、その決断の良し悪しは、すぐに数字に表れる。自分の決断に対し、ベストを尽くし、また責任を負う必要がある。

決断をするためには、根拠が必要になる。このとき、決断の根拠となるのは、過去の分析未来の予測である。過去を分析をする力と、未来を予測をする力を向上させることが、決断力の精度を高めるのである。

分析力と予測力のうち、今まで大事だったのは分析力だった。購買動向や顧客データなどの分析結果を積み上げ、導き出された答えは高い確率で的中させることができた。

しかし、これからは、予測力のウエイトが上がってくる。世の中の変化が早く、不確かな未来において、過去のデータの寿命が短くなっているからだ。スマホが普及すれば、ガラケーの販売シェアのデータは役に立たなくなる。また、世の中が変われば、新しい前提条件も増える。日々ルールが変化する世界において、過去の分析による、単純なデータ同士の比較の価値は薄れていく。

予測する力を上げるには、いくつか方法があるが、効果的なのは、観察歴史をかけあわせることである。

観察は、言い換えれば、気づきである。小売の場合は、店頭やマーケットリサーチなどにおいて、注意深く観察することで、気づきが得られる。ポイントは、常に観察モードでいることである。気づきの瞬間は突然やってきて、観察しようとしていない人間には、その瞬間は訪れない。日頃から自身のセンサーを研ぎ澄ませ、感度高く、周囲を見渡すことが重要である。

歴史において大事なのは、個別のケースではなく、大枠のフレームを捉えることである。大きな変化を迫られたとき、人はどのように行動するか、2つの選択肢があるとき、過去のリーダーは何に従い行動し、その結果どうなったか、など歴史はケーススタディの宝庫である。変化の早い時代には、物事の大枠を、短期視点ではなく歴史を見るように、ある程度長い期間で捉えることも重要になる。

現在における観察で得られた気づきの萌芽と、過去の歴史に見る社会の原則を照らし合わせることで、精度の高い予測仮説が生まれる。そして、マーケットや社会の変化を予測する力に支えられた決断が、バイイング精度をあげる秘訣となる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?