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ハンカチマスクの作り方動画に見る、小売がなすべきこと

今、あるインスタ動画が話題を呼んでいる。

老舗ハンカチメーカー川辺が、インスタグラムにあげた「ハンカチマスクの作り方動画」である。

50cm四方目安のハンカチとヘアゴムがあれば、マスクの代用品が簡単に作れることを紹介した動画で、この動画が反響を呼び、先日の繊研新聞でも取り上げられた。

本来であれば、3月は歓送ギフトとして、ハンカチのニーズが大きく伸びるシーズンである。しかし、昨今の社会情勢で、歓送会の中止が相次ぐこともあり、ギフト市場は萎んでしまっている。

そうした中で、インスタの動画がヒットした。川辺のやったことは、非常にシンプルで、時流に沿った利用方法の提案である。言い換えれば、価値の再定義である。しかし、これこそが小売の本質であり、なすべきことである。

この動画では、商品そのものの宣伝はしていない。紹介しているのは、ハンカチマスクの作り方のみであり、最後に「川辺では様々なハンカチを販売しております」と述べるにとどめている。しかし、利用方法を提案することで、間接的に商品のプロモーションにもなっている。この動画によって、顧客は50cm四方のハンカチの価値を見直すだろう。場合によっては、マスクの代用として利用するために、新しいハンカチを手に入れたくなるかもしれない。川辺の動画は、新しい需要を創り出した。これこそが、本来小売がなすべきことである。

さらに投稿本文中の、

ハンカチの柄で顔周りが明るくなります

は、マスクの代用品としてだけでの提案だけでなく、ハンカチだからこそできる楽しみ方も提案している。

細めにした方が仕上がりがスッキリします
幅が小さいと耳が痛くなりやすいので、お顔に合わせて調整してください

のような、何気ないアドバイスにも、企業の顧客に対する思いやりが感じられる。まるで対面での接客を受けているような気分にさせてくれる。

この動画は、プロモーションよりも、コミュニケーションに主眼をおいているように感じられた。コミュニケーションによって需要を汲み取り、顧客にとって、有益な価値を再定義することが、これからの小売が追求すべきことである。顧客と小売の心地よい関係を、老舗メーカーの取り組みが教えてくれるのである。

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