日本が誇る世界一の港町「横浜」

僕はターナーの「吹雪」という作品が好きだ。荒れ狂う海に飲まれそうになる船。ぼんやりと情景が描かれており、はっきりと船が書かれているわけではないが、なんとなく船であることがわかる。このおぼろげな船は、いったいどこに向かっているのだろうか。

日本には信頼性も荷役効率も世界一の港がある。横浜港だ。横浜は世界的なネームバリューがある。特にドイツのハンブルグや、オランダのロッテルダムなどの港町の子どもたちは横浜を知っている。しかし、世界に誇れる港の貨物量が、年々減ってきている。

製造工場を労働単価の安い海外(中国等)に置き始めたのが一因だ。もちろん今に始まったことではない。日本で製造するより海外で製造したほうが原価が安く収まるのだ。産業革命が起き、資本主義経済が成熟した現代。極限まで利益を捻出するための企業努力の結果が貨物量減少につながっているとは、何とも皮肉ではないか。

横浜で取り扱う貨物量は減ったが、カップルは増えている。観光と貿易が混在する横浜。カジノを誘致するという話もあるらしいが、全くナンセンスだ。カジノを誘致したところで貨物量は増えないし、カップルも増えない。語弊を恐れずに言えば、ギャンブル依存症の人間が増え、客層は低下する。

ラスベガスは周りが砂漠で囲まれているから、「わざわざカジノをするために遠出する」のだ。必然、富裕層しか来れない。だから客層も良い。

横浜は違う。誰でも来れる。競馬場感覚で来られても、タバコの吸殻やゴミが散乱するだけ。横浜の魅力がどんどん失われていく。

ぼくは横浜出身ではないが、横浜は好きだ。だからこそ、好きな横浜のままでいてほしい。横浜出身の方はもっと強い思い入れがあるだろう。故郷は変えられない。めまぐるしいスピードで変化する世の中だからこそ、変化させてはならない部分にも気を配りたい。

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