日産の不祥事から見る「日本の生産性」

日産の西川社長が10月19日に記者会見を開いた。9月に無資格者が車輌の最終点検を行っていたことが発覚した後も無資格検査が継続して行われていたことについてお詫びをした。

ニュースの表面だけを拾うと、あたかも最終チェックされていない、品質に問題がある車が出荷されているような表現だ。しかし、本当は品質には全く問題がないという。

品質チェックは各部品が製造された時点で、資格を持った人間が行うそうだ。組み立てが行われた時点でも同様にチェックを行う。途中過程で厳正なチェックが行われているから、最終工程で不具合が見るかることはほぼゼロに近い。

最終点検における「有資格者」の定義も実は定まっていない。DVDを流して講習を受けた人間は有資格者になれる。無資格者を集めてミーティングを開くのもいい。実際のところ、最終点検は儀式みたいなものだ。

今回のニュースでは、どちらかと言うと実態に即していないルールが存在していることが問題ではないか。「働き方改革」として生産性の向上を掲げておきながら、このようなルールはただの障害物にすぎない。

従業員10名の零細企業では、決裁がすぐに出る。従業員が社長に相談すれば可否が下る。意思決定プロセスとしてはシンプルだ。一方、従業員1000名の大企業では、決済を取るのに稟議が必要となる。承認を取るまでに2週間かかる。その稟議に恣意性がないかチェックする人間も必要となる。チェックするガイドラインを規定する人間も必要だ。コーポレート・ガバナンスも重要ではあるが、この意思決定の遅さは致命的過ぎる。

決裁権を持つ人間を各グループに置くことで、意思決定のスピードを早めることが出来る。日本は各諸国と比べてリーダーシップを持つ人間が少ないとされている。リーダーシップを持つ人間を育てられるかどうかが、日本の生産性を向上させる鍵となる。語弊を恐れず言えば、零細企業に出来て大企業に出来ない理由はない。

今回のニュースも、フォーカスを当てるべきは日産では無く、そのルールを策定した機関だ。世の中を正しく捉えることが出来ないと、いつまでたっても日本の生産性は上がらない。

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