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第78話 投資採算

「さて、出資10%で10億円、プレマネーでの企業価値90億円という宮津精密要望の価値の妥当性をどう説明するか」

 山田は、DCFの計算シートを写した。

「ワーストケースでいくと50億円の企業価値だから、10%で5.6億円。10億円との差は約4億円強」

 真奈美は、頭の中で計算式を思い出した。
 X/(50+X)=10% → 9×X=50 → X=50/9=5.6億円

「事業本部のシナジー効果の価値が4億円の差を埋められるかどうかだね」

「それって、やはりDCFで計算するんですか?」

「正解!」

 山田は嬉しそうに答えた。

 事業本部からもらったシナジー効果のDCF分析によって、事業本部が今後数年間受ける利益を価値化できる。

「これを見ると、1年目は少ないが、2年目から4~10億円の利益、税引き後のキャッシュフローとしては3~7億円だ」

「ということは……3年目の途中で4億円の回収が可能ということでしょうか」

「そうだね。これを信じてもらえるか、にかかっているけど」

「でも、皮算用は整いそうですね」

 真奈美は笑みで応えた。

 その後も、昼食をはさんで夜まで説明資料のレビューと修正が続いていった。

 窓の外が暗くなり夜景が映えだしたころ、ようやく山田の合格が出た。

「うん、ありがとう。月曜日はこれで行こう」

「はい、ありがとうございました」

「いや、こちらこそ。頑張ってくれたおかげでベストを尽くせそうだよ」

 山田は笑顔で答えた。

「では、これから意向表明書のレビューもお願いできますか?」

「そうだね、じゃ、よろしく頼む」

 こうして、土曜日もかなり遅い時間まで仕事することになったのだった。

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