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【ショートショート】タンバリン湿原

 俺はたくさんの悪事を働いてきたが、運良く一度も警察に捕まることなく、天寿を全うした。
 俺は閻魔大王の元へと連れていかれた。どうせ俺は地獄行きだ。別にいいさそれでも。
「お主はかなりのやんちゃ者じゃったようじゃのう」
「ああ。自慢じゃないが大抵の悪いことはしたぜ」
「だが惜しいのう。決定的なものがない。中途半端なものばかりじゃ」
「は?」
「本来ならお主は地獄行きなんじゃが、生憎地獄が満杯でのう。もはやお主の程度じゃ地獄へは行けん」
「お、じゃあ天国行きか?」
「そんなわけないじゃろ」
「だったらどこだよ」
「タンバリン湿原じゃ」
「は?」
「お主はタンバリン湿原行きじゃ。そこが天国か地獄かは、お前の心持ち次第じゃ」

 かくして俺はタンバリン湿原行きとなった。

 今俺はタンバリン湿原で、猫たちと一緒にタンバリンを叩き続けている。
 これが天国なのか、はたまた地獄なのかは、読者諸君の判断にお任せしたい。


                 (410字)

たらはかに(田原にか)様の企画【毎週ショートショートnote】に参加させていただきました!

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