イノベーションって何?

イノベーションを起こせ

この記事にたどり着いた方は往々にして「イノベーションを起こすことをタスクとして与えられた、どうしよう?」「何か先行事例がないだろうか?」という方がほとんどかと思います。私自身3年前に同じタスクを与えられ、同じように専門部隊に配置転換され、今に至っています。
本記事では筆者が3年のイノベーション創出部署で経験し、イノベーションとは何か、と筆者なりに考えたことをまとめたいと思います。

さて皆さんはイノベーションと聞いて何を思い浮かべるでしょうか?私自身は配属当時GAFAのようなSaaS企業が思い浮かべ、それらの企業が行っているソフトウェアを軸にしたサービス提供を思い浮かべました。

Wikipediaによるとイノベーションとは

物事の「新結合」「新機軸」「新しい切り口」「新しい捉え方」「新しい活用法」(を創造する行為)のこと。

とのことです。
つまり先ほどのGAFAのビジネスやSaaSとは全く関係なく、既存の物事に対し新しい切り口を見出し、今よりより良い方法を見出すことがイノベーションと呼ばれるそうです。(SaaSサービスも既存の課題にソフトウェアで、新しい切り口を与えたので全く関係ない、というわけではないですが。)

イノベーションって何だ?

では私の経験によるところのイノベーションとは?という結論はと言えば、課題解決に向けて起こしたアクションや課題解決手段の中で上手くいき、最後まで残った手法、結果であって、決して起こすことを目的とするモノではないというのが答えだと思っています。

身も蓋もないですね。

イノベーションの起こし方を探してこられた方はここで閉じていただき、その時間を御社のイノベーション創出に振り向けてください。その他の方はもう少しお付き合いください。

私の経験

私も例に漏れず所属する中堅メーカーの中で「イノベーションを起こせ」とのタスクを与えられイノベーション××という名称の部署に放り込まれました。まだ新設の部署で人員も少なく「イノベーションってなんだ?」と悩みながら様々な行動をしてきました。セミナーに出てみたりホームページで目についた企業に訪問して協業の可能性を探ってみたり、大学の有名な先生に話を聞いてみたり、展示会を巡ってみたり。ただ、結局イノベーションと呼べるようなことを起こすことは出来ませんでした。

今にして思えばイノベーション(のようなこと)が起こせなかった理由はイノベーションは結果ということの理解不足と同時に、ほかに大きく2つあると思います。1つ目は「何の課題を解決するのか」の範囲が狭すぎたということ、そしてもう一つは既存の会社リソースに依存しようとしていたことだと思っています。
課題がもう少し広く見つかっていればイノベーションらしいものも生まれたかも知れません。

イノベーションは課題解決の手段であり結果

弊社はメーカーなのでともすると課題は製品の改善、既存領域での革新的な改善を夢みます。けれど実際問題として既存領域の改善に革新的な方法は存在しないことの方が多い。なぜなら既存製品は既にユーザーの課題を叶えているから成立しているのであって、新たな課題はそこに存在しない(存在してもメイン課題からすると非常に小さい)ためです。

一つ事例を挙げると、自動車は人やモノを楽に目的の場所へ移動させるために存在していますよね。ではその手段を改善するのに革新的な手法、例えば自動車に変わる輸送手段が提案出来るでしょうか?往々にして出てくるアイデアはパーソナルモビリティなどの用途提案レベルでモビリティに乗って移動する基本は変わらないと思います。結果、自動車でいいよねという結論に収まる。また別切り口として自動車の操作性を上げる事は可能かも知れませんがそれはイノベーションではなくただの製品改善ですよね、となります(私はそうなってしまいました)。

また、自動車の使われ方の範囲で革新的なサービスを提供しようと思った時、どんなモノが思いつくでしょうか?私には自動運転、つまり現在の自動車で一番大変な運転行為を代替するものしか思いつかないです。確かにこれは新しい課題には違いありませんがこれが簡単に実現できれば誰も苦労しないですし、これを実現したが最後、既存の「車を売る」商売、車を保有するスタイルは壊滅するでしょう(いずれそうなるでしょうが)。そもそも車の運転を代替したいならタクシーの利用やUberなどの利用など代替手段は無数にあり、メーカーとして投資に対して回収を見込むのが非常に難しくなります。トヨタくらいの大企業ならばいずれ実現できるしそれだけの投資に耐える体力もあるでしょうが中堅以下のメーカーではとても実現できない。弊社も例に漏れず、誰にでも思いつくアイデアには飛びつくことができませんでした。

つまり、既存の製品の中に残された課題というのはものすごく大きな課題か、非常に小さな課題(解決しなくても大勢に影響を与えない課題、例えばインターフェイスの変更とか)のどちらかしか無く、そこに実現性のあるイノベーションの余地はほとんど残されていないのです。私も結局課題を自社の領域外から見つけてこれなかったためこの誤ちに陥ってしまったと今では思っています。

会社のリソースは既存製品のために

もう一つ、会社のリソースについてですが、そもそもこのリソースは何のためにあるかと言えば「既存製品の開発」のために用意されたリソースです(イノベーションにあらかじめ割かれた人員は除く)。一般的なメーカーならば予算が割り付けられ、その中に人的リソースが割り当てられるため基本的にそれ以外のことにリソースを割くのはそもそも不可能。そのリソースを使って何か新しい事を起こそうとする事自体が無理なのですよね。

じゃあ結局どうしたらいいのさ?

結局イノベーションは課題解決の結果で、弊社では起きませんでした、では身も蓋もないですがこれまでの経験上既存の領域に留まっては中堅企業からイノベーションを起こすのは非常に非常に難しい、というのが私のこの三年の経験の結論であり、イノベーションは起こすモノではなく課題解決の結果の最良解であるべきという結果に至った経緯です。
もう少し言えばイノベーションを起こす事を目的にすると結局自社製品またはそこに限りなく近接した領域で勝負しようとして失敗する、という事が分かったよ、というのが結論となります。

じゃあ中堅企業ではイノベーションが起きないのか?と言うとそうではないとも思っています。我々もまだ課題の発見と解決に向けての試行錯誤を繰り返している只中ですが、我々が試みた結果でなんとなく光明が見えてきたのが「既存の枠の一歩外側に行く」、という事。全くの飛地ではなく自社の製品周りの一歩外にある課題を埋める仕組みを考えてみる、既存の仕組みの一歩外側である海外などで課題を見つけてみる、ということにトライし、ようやく新たな課題の発見とその解決方法の提案、つまりはイノベーションに結びつく可能性が見えてきました。
また実現に向けたリソースについては社内リソースだけで試みるのではなく、司令塔を社内、手を動かしていただくのを社外のパートナーに委託する、という、これまでの3年での失敗を糧にした現在活動を行うことで、一歩外で活動するためのリソース確保と実際の成果に結びつこうとしています。

これらの方法こそ弊社の、そして中堅企業のイノベーション創出になるのではないかと現在大いに期待しているところです。

(結果として)イノベーションを起こそう!

3年前に考えていたような世界を変えるような画期的なイノベーションとはほど遠いかもしれないですが、受益者にとってこれまで全くなかった仕組み、サービス、利益は全てイノベーションであり、それを提供することこそ事業であると今では自信を持って言うことができるようになりました。今イノベーションを起こすことに悩んでいる方もまずは自社製品、自社サービスの新たな見方、一歩外側を見てみてください。そこにある課題にこそあなたのイノベーションへの第一歩がきっと埋もれているはずです。そして社内で理解が得られない!と嘆いておられる方も諦めず地道に身近な人から説得してみてください。私も同じでしたし、いずれ理解してもらえる時が来ます。

このテキストが皆さんのイノベーション実現の一助になれば幸いです。

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