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◎手帖P15「みかん援農」

2020/9/9,9/16OA

みかんの産地、和歌山県海南市下津町で行われているプロジェクト「みかん援農」。地元の農産物を生かした加工食品の製造・販売を手がけているFROM FARMの大谷さんがこのプロジェクトを取りまとめています。

下津町は、ほぼみんながみかん農家という地域。なので、大谷さんのFROM FARMの、目の前で絞ってくれるフェアトレードのオレンジジュース(形が不揃いなどの理由で出荷できないみかんを生搾りしてくれます)が、めちゃくちゃ美味しい!ドライフルーツやグラノーラ、山椒のきいたメイプルナッツなど、地元の素材を活かした加工品も、美味しくておしゃれで、手土産にもいいんですよね。都会のマーケットイベントでも人気です。

大谷さんは、実は実家の農業(お花作り!)を継ぐことや、和歌山に戻ってくることが嫌だったといいます。ですが、Uターンしてきて農業を手伝ううちに、その面白さに気づいたそうです。若い時はあんなに大嫌いだった田舎が、実はとても素晴らしい場所で、農業って楽しいと気づけたんですって。自分は、面白いと思えるようになったし、みかんや山椒など美味しいものがたくさん育つ産地だけど、一方で、周りの状況はというと、農業に対して否定的。子供に「会社員になったほうが安定するし、農業なんて継がなくていいよ」と言ってしまう農家さんたち。若い人も都会に出て行ってしまう、田舎には誰も残らない、後継者も育たない、、、大谷さんが意欲を持って話せる仲間がいなかった。農業って面白い、産地の可能性も見えてきたのに、どこか寂しさ、自分と周りのギャップを感じることがあって、自分にできることがないかなと思って始めたのが、FROM FARMの加工品。環境を面白くしたいし、面白くできる、環境は作れるんだって証明したいと思ったのだそうです。

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そして次に大谷さんが、次に力を入れ始めたのが「みかん援農」です。今年で4年。土台はあった取り組みを引き受けて、大きい力になるよう進めています。

下津町のみかん農家は、70代80代の人が現役でなんとか頑張っている状況。高齢の農家さんにとって収穫した重いみかんの箱を運ぶのも大変だし、人手が足りない!いつも必要なわけではなく、収穫時期に集中してたくさんの人が必要なんですね。昔は親戚が集まって手伝ったり、近所の人同士で助けあったり、さらには北海道などから出稼ぎで来てくれる人がいたそうです。ですが今はその習慣はなく、ハローワークで働き手を探したりもするそうですが、過疎化もあって、そもそも産地の中に人がいない状況で、なかなか人手不足は解消できず。。。

そこで「みかん援農」です!一年で最も忙しく重要なみかんの収穫シーズン(10月〜12月)限定で、シェアハウスで共同生活をしながら収穫の仕事を手伝ってくれる若者を募るプロジェクトです。去年の収穫には50人ほどが、全国から手伝いに来てくれました。

大谷さんもびっくりしたそうですが、旅人のように、いろんな場所を「季節労働」をしながら渡り歩いている人たちもいるそうです。例えば、雪山の山小屋とか、海の家などリゾート系、北海道のシャケからいくらを集める仕事、利尻昆布の収穫などなどなどなど。すごい経験値!そこで出会う人同士で、コミュニティができていて、こんな経験をしたよと交流するのも面白いらしいです。「みかん援農」や他のプロジェクトのことも広まっていくそう。口コミで広まって、新しい人が来てくれたり、もちろんリピートして毎年来てくれたりする人もいます。
他には、自分で経験したことを発信したいんだという人も最近は働きに来てくれるそうです。NPO社会貢献グループの人、京大、早稲田などの大学生たちも、勉強をしようと来てくれる。

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みんな楽しんでいるけれど、とにかく一生懸命働いてくれる人ばかり。遊びじゃない、仕事ですもんね!みかんの山に登って収穫するという、産地の人にとってはごく普通のことが、都会からやってくる人たちにとっては、新鮮で感動しながら働いてくれるんですって。その反応もまた農家さんにとって嬉しいこと、自分の畑や仕事に自信を持てる出来事かもしれませんよね。「今年はどんな人が来てくれるのかな」と農家さんも若い人と関わることを楽しんでいるそうです。移住したいと言ってくれる人が毎年いて、大谷さんも、ここはやはり良い場所なんだなと気づかせてもらえるそうです。

「みかん援農」から就農する人が生まれたらすごいなと思いますが、まだそこにはたくさんハードルがありそうです。実は、これまでに1人、実際に移住してきた人もいたそうです。農家さんからも「この若者になら任せてもいい」という信頼関係もできて、1年半やってみたけれど続かなかった。。。というのも、みかんの収穫時期以外に一年を通じてできる仕事がないと、やはりなかなか難しいのが現実です。

今後は、環境づくりにも力を入れていきたいと大谷さんは言います。援農に来てくれる若者が本当によくやってくれることもあって、手伝いに来てもらいたいという農家さんもどんどん増えてきてる。だけど、住環境・空き家探しと住めるように整えるのも追いついていません。(土井コマキはかつて不要になったホットカーペットをシェアハウス用に送ったことがあります。実は、その募集メッセージで、みかん援農を知りました。)また、移住してもらえるような環境整備もしたいとのこと。みかん援農で来てくれた人が、就農以外にも、この土地にきて何かやりたいとか、次の化学反応があればいいなと思うし、手伝えることがあったらやりたいし、出会いが広がって、面白い展開に繋がっていけばいいなとも思う、と大谷さんは言います。下津町で使われていなかった施設をリノベーションして、カフェ「KAMOGO」をオープンされました。和歌山県の旬のフルーツを使ったメニューもあります。このカフェが、新たな交流の場に育っていけばいいですね!

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自分のために地元のために、何かできることないかなというところから、FROM FARMというブランドを立ち上げて商品作りを始めた大谷さん。農家さんに本当に必要なものが何か考えた時に、やはり労働力だなということで「みかん援農」をスタート。やり始めたら、今度は受け入れる農家さんのこと、農家さんとどんな準備をしたらいいんだろう、これを継続していくにはと考えることになったそうです。産業を守るというよりも、まちづくりにつながっていくのかなと、実感しているところ。結局は、若い人を受け入れるためどういう環境を整えたらいいのか、農業や商品づくりというところよりも、大きい視点で考えるようになってきた。しかも、それが全部つながっているんだなと実感しているそうです。

SDGsに置き換えて考えてみると・・・
「12つくる責任つかう責任」先人が切り開いてくれた畑を守っていくこと。
「11住み続けられるまちづくり」産地が衰退して、この数年で子供が3分の1になってしまった。
「17パートナーシップ」全国から興味のある若者が入ってきて、地元の人との関係性で農業を守っていったり、新しいあり方を作っていくこと。
「8働きがい」農家さんの働きがい。後継者がいなくて次が見えないと意欲が出ないし、終うことを考えてしまう。そこに援農で若者が来ることで、未来を考えるきっかけになる。
、、、、など、考え始めるとたくさんのSDGsとつながっていました。

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今年の「みかん援農」の参加者の募集がスタートしています!詳しくはホームページをチェックしてください。またFROM FARMの、山椒と柚子の塩や、ドライフルーツなどオンライン販売もチェックしてみてくださいね!

▼みかん援農
https://en-nou.net

▼FROM FARM
http://from-farm.com

▼Kamogo(Instagram @kamogo__wakayama )
https://www.instagram.com/kamogo__wakayama/?hl=ja


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