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フォロン展、優しい色合いの中に潜む芯を持ったメッセージ。

以前勤めていたデザイン会社でお世話になった方と、
日本橋の「モネ&フレンズ・アライブ」に行った。

今流行りの没入型展示を体験しようと行ったのだが、
わたしはやはり本物の絵画を目の前にして鑑賞したい。

とはいえ、アートに興味を持ち始めた方や子どもさんがアートに触れる機会としては
エンターテイメントとして楽しめる展示だと思う。


会期終了が間際だったので日本橋から東京駅まで歩いた。
だいぶ前に別の美術館で手に取ったリーフレットで気になっていたフォロン展をぜひ観たかった。

空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン
会期:2024.07.13~09.23
場所:東京ステーションギャラリー/東京駅丸の内北口ドーム

チケット売場から嫌な予感はしていたけれど、
展示室は大変混んでいた。
余程観たい作品でない限りわりとサクサクと回る性格なので(せっかちなのたまに嫌になります)、
近くで鑑賞できるものからぐるぐると巡っていく。

ジャン=ミッシェル・フォロンは1934年生まれのベルギーのアーティスト。
建築や工業デザインを学んだのち、アメリカの雑誌に起用されたことをきっかけに各国へ羽ばたいていく。

展示は、
プロローグ 旅のはじまり
第1章 あっち・こっち・どっち?
第2章 なにが聴こえる?
第3章 なにを話そう?
エピローグ つぎはどこへ行こう?
のぐるりとフォロンの世界を旅するようなセクションにまとめられている。

展示を観てて、フォロンのアートのポイントはこんな感じだった。
・ドローイングによる味のある線
・幻想的な色彩やグラデーション
・作中にしばしば登場するリトルハットマン
・矢印への関心
・柔らかなタッチの中に込められたメッセージ
少し掘り下げてみる。


線と色、それぞれが引き出すフォロンの魅力

フォロンのドローイングはかわいらしい。
シンプルにデフォルメされたフォルムの線はなんとも親しみ深い。

そして何より優しく幻想的な色合いがいい。
初期はドローイングに注力していたが、結婚し奥さんからの影響で水彩をはじめたそう。
はっきりとした色を使っているはずなのに、
できあがる空気感はどこか誰でもを受け入れてくれるような柔らかさを持っている。

水彩やシルクスクリーンで表現されたグラデーションは幻想的で夢の世界のるようだ。


繰り返し現れるモチーフ

リトルハットマンや矢印の作品がいくつもあった。
マグリットの絵画なんかにもよく登場する山高帽は昔の男性がよく被っていた帽子でもあり、
”誰でもある”という匿名性を生み出す。

また矢印は一体どこへ向かわせようとしているのか。
フォロンアートを迷宮へと繋げ、鑑賞者をどこか知らない場所へと誘っていく。


ミサイルに環境・人権問題、社会を鋭く切り込む

こちらもたびたび出てくるモチーフ、ミサイル。
戦争への批判を皮肉に描いた絵が印象に残る。

また世界人権宣言のためのポスターや挿絵なんかもたくさん残されていた。
彼が描く優しい世界は、彼が目指す優しい世界でもあったのだ。
国際社会が進み色々な問題が浮き彫りになっていく時代の中で発信していったフォロンの願いが込められていた。


この展示でフォロンを知ったわけだが、
彼の考え方や世界観をとても好きだと思った。

彫刻作品もよかった。
(もっとじっくり観ればよかった)

ステーションギャラリーもレトロな照明やレンガ造り、階段が雰囲気よく、
アクセスのしやすさもあってまた行ってみたい。

ポストカードとトートバッグ

帰りのミュージアムショップではついトートバッグを買ってしまった。

素敵なアーティストに出会えていい三連休になった。

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