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地方移住は進んでいないが都心部から脱出をしたい人は増えている

枕にかえて

どうも、えんどう @ryosuke_endo です。

東京からの転出が超過しはじめたなんて情報が総務省の住民基本代表人口移動報告から出されていることだけでなく、それを殊更にポストコロナ時代だなんだと「時代の変容」だとか「時代の移行期」のような取り上げ方をするメディアもあったりする。

これらの情報を受けて「これからは地方の時代だ!」と躍起になる自治体が多いのかもしれないし、いやいや...と冷静に受け止めている自治体もあるだろう。

事実として『東京一極集中』と呼ばれる状況に変わりはないものの、2020年までの10年間と2020年以降の10年間とでは少し様相が異なりそうな気運は生じてきているようである。

ただ、気運が生じたところで、これまでは東京以外の自治体から東京に出てくる人たちの割合が非常に高かったし、そこから離れる人たちも少なかった。東京から東京以外の自治体への移住が増えたからといっても「どこか単一の自治体」に増えるわけではない

東京23区以外の自治体は1,718もあるため、いくら東京からの転出数が多くなったからといって、1,718もあれば単一の自治体への転入が増えることにはならないし、何なら「地方」への移住となっているのかどうかは調べてみなければわからない。

そんなことを踏まえ、ちょっとブームっぽく取り上げられがちな地方移住について考えてみたい。

▶︎ 地方移住ではなく都心脱出が進んでいる

世の中には本当に優秀な人がたくさんいるもので、僕みたいな無能が調べようと思い立ち調べはじめると、すでに前提から相応の結論を導き出してくれている人がいた。

地方移住/二拠点生活は進んでいるのか?

概ね僕が考えていた通りの前提と結論だ。ただ、それだと内容がまったく同じになってしまうので前提が揃っている状態で異なる結論を抱くことは難しいものである以上は異なる方向で論じる必要がある。

こうやって上記のようなリンクを貼ったところでリンク先に飛んで行って記事を閲覧する人は少数派であるだろうから、少し前提を揃えることをやっていくこととしよう。

東京23区内に居住する、いわゆる都心部生活者が転出超過していることは冒頭の総務省データから事実だが、その人たちがどこに向かっているのかまでを追いかけなければならない。

総務省のデータを見ていると転出先は「23区に隣接する郊外」が主で、電車で座れるような郊外への転出が伸びていることがわかる。この時点で地方への移住が進んでいるわけではないことが結論づけられた。

人と仕事が集積する東京23区のような場所から離職と居住環境の根本的な変化を起こさなければならない地方移住は選択肢として検討されはするものの、実質的には負担や支出などの経費面を考えると現実的ではないと判断されている場合が多いのではないか。

しかし、いまのまま満員電車に揺られることを前提に生活しなければならないことは肉体的にも精神的にも負担が大きい。そうなると、満員電車であろうと座ることがある程度は確約される郊外への居住地転換を図ることは、かなり現実的な選択ではないか。

▷ リゾート地などへの多拠点生活が増加

テレワークやリモートワークが常態化することが難しい業態はあるものの、2020年以降で一気にテレワークやリモートワークが検討・実施されたのは事実だろう。事実、総務省の通信利用動向調査(令和2年調査令和3年公表)内にはテレワークの導入が増えている事実が記載されている。

出典: 通信利用動向調査_総務省(令和2年度調査)

株式会社キャスターのように2014年の創業時からフルリモートでの就労を前提とした組織は決して多くはないものの、これからもテキストコミュニケーションを前提としつつ、場所にとらわれない働き方を目指す組織は特に新しい組織を中心にして徐々に増加していくだろう。

都心に住んでいると家賃が高いため、そもそも住居を構えることからして大きな経費負担が強いられる。相応の対価をもらっていたとしても、生活費用として考えると決して容易に享受したくはない金額であることは言うまでもない。

そうならば、現在の生活拠点や生活の仕方を抜本的に変えるのではなく類似性の高い生活様式を得つつ、現状の収入を確保できる方が物理的な負担の低減が期待できる郊外に住む選択肢は同じ費用負担だとしても部屋数や間取りが大きくなるため、かなり満足度が高くなるだろう。

つまり、都心部での就労と賃金を確保しつつ、これまでの生活様式を維持しようと思えば都心から郊外の選択肢は最も効率的で合理的な選択なのである。

ところが地方移住だけでなく就労まで地方となると、都心部での費用感が縮小するだけで何の旨味もない可能性が高い。ましてや、移住面における人的・費用的な負担が大きくなることを踏まえれば現実的ではない人が多数派なのだろう。

そうなれば移動時間や距離などの許容範囲内での地方移住や多拠点生活を検討する方が現実的だ。たとえば、僕が住む新潟県にも過去にはスノーリゾートとして名を馳せつつ限界集落化している湯沢町などは新潟県における転入超過が一位だ。

(こんな風に体験移住も可能なためオススメしたい。)

▷ 現状の仕事を続けつつ働く選択肢を増やせるのか

上記しているように「就労条件は維持しつつ生活しやすい場所」へ転居するのは効率的であるし合理的な判断だが、こうなると地方の中小企業は逆に危機感を覚えなければならないし、自治体も移住を促進していいものかどうか判断が難しくなる。

なぜなら、就労する当事者たちは現在の就労条件を落としたくない

つまり、現在の収入は維持しつつ、肉体的・心理的、何よりも金銭的な負担を低減したいと考えているからであり、都心部で支払ってもらえるような就労条件を提示できる企業が地方都市にあるのかといえば、かなり限定される。

「いやいや、地方に移住するのだから地場の仕事をするだろう」といいたい気持ちはわかるが、現実としてインターネットを利用した業態の利益率は高くなる

物理的な距離や制限を撤廃できるのがインターネットの特徴である以上、人件費をはじめとした物理的に必要となる経費を低減できるため、利益率が高くなることは必然的で「利益率が高い=就労条件がよくなる」が成立してしまう。

地方に移住をして都心部の仕事を継続できるような状態が続けば続くほどに地方にあるITを活用できていない事業者や活用の道筋すら立てられていない事業者は地方移住を検討する者からして「就労における想定」から真っ先に除外される。

仮に就労を検討していたとしても、都心部などから副業的な業務を受託することで個人としての年収を引き上げることを想定しているため、専業としての就労は建前として行うものの可処分時間を利用して収入を引き上げるためにあれこれと行うことだろう。

そうなると**旧来的な価値観で「副業禁止」などの就業規則を運用している事業者はますます人員の確保が難しくなる時代に突入してきた。**もしかしたら、移住人口は増えても就労人口が増えない街が増えてくる可能性すらある。

▷ 結局は都心から逃げつつ都心の仕事が欲しい

どこに行ったとしても就労条件は維持したい。可能な限り好条件での就労をしたいと考えるのは異常なことでもなんでもない。労働によって生活資金を得ようとする立場からすれば当然抱く思考だろう。

事業者側からすれば可能な限り低賃金で働かせ放題したいわけだが、地方でそれをやりはじめると移住などで転入してくるような優秀な部類に属する人たちを囲うことなど土台無理な話である。

これからは地方にいながら条件のいい仕事を...となると、結局は人が多く存在する都市に集積するような事業者が発注する仕事が中心となるのは仕方のないことだろうし、それを覆せるような事業者が地方にいるのかといえば少数派である。

我々は都心の喧騒からは解き放たれたいと願いつつ、自らが享受できている望ましい待遇を投げ捨てられるほどの器量は持ち合わせていないのだろう。

地方事業者で人員の獲得に成功し続けるような事業者は、そもそもが業態を旧態然とはせず現代に合わせた就労や就労条件を提示しているような事業者であることは疑いようがない

最低賃金での就労を条件として提示するような事業者はドンドンと人員が確保できなくなり、事業継続などといってられる状況ではなくなるはずだ。それほどまでに都心部での就労条件と地方の中小規模事業者との間には大きな隔たりがある。

平成までの価値観では地方に住むことで賃金は低くなるものの生活費も低減できるなどと言った妄言は通用しない世界線に突入しているのだ。

かなり厳しい時代に突入しているのだが、その中で生き残れない事業者は退場すべきだ。今後の5年や10年、20年30年と事業を継続することは難しいはずで、人が集まらないのだから事業継続も何もない。

地方の中小規模事業者にとって、非常に寒い時代になってきたといわざるを得ないが、それをどうにかするのが経営者の仕事なのだろう。知らんけど。

ではでは。

えんどう

▶︎ おまけ

▷ 紹介したいnote

もやブロ#51 続・地方暮らしの仕掛人がどうやって移住者を増やしているのか? 文中で紹介している湯沢町で移住支援をする当事者である伊藤さんのnoteだ。彼女は僕が敬愛し尊敬する経営者だが、ゴリゴリとすべきことをやり続けている猛者だ。彼女とはREADY FORへの支援からの付き合いで、いまもちょこちょことお世話になっているズブズブの利害関係者だ。

都心での当たり前が田舎では非常識?
僕の勝手な想像でしかないが、都心部での生活に疲労感や徒労感を味わっている人の数は決して少なくはないだろう。雑多な生活環境は何もかもが急ぎ足に見えてしまうからこそ、落ち着いて時間を長く感じられるような居住をしたいと考えてしまうのかもしれない。

総務省官僚がヘルステックスタートアップに転職した件
調整ストレスのなさに感動している、という点に官僚の調整力とは幾許なものかと想像したくなるが、それこそが官僚が官僚たる所以なのだろうとも思える。同時に、このような人材を地方抽象事業者が確保することは現時点においてかなり現実的ではないだろうという他にない。

▷ 本noteに関連する紹介したい書籍

地元がヤバい…と思ったら読む 凡人のための地域再生入門
地域創生や地方創生は誰がやりたいのか。自治体職員だ。何かしら補助金や助成金を出しては創生事業などとそれらしいことを発信してはいるが、根本的には「やらなければならないからやっている」だけで、本来担うべきは民間事業者の邪魔をしないことのはずで、そうなっていない構図がどうも違和感しかない。それらも含めて、この書籍を一読いただけるといいような気がしている。

▷ 著者のTwitterアカウント

僕の主な生息SNSはTwitterで、日々、意識ひくい系の投稿を繰り返している。気になる人はぜひ以下から覗いてみて欲しい。何ならフォローしてくれると毎日書いているnoteの更新情報をお届けする。

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