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規模の大きい企業は賃上げが可能だけれど

 どうも、ゑんどう(@ryosuke_endo)です。

 春闘というものを耳にしたことがある大人の方々は多いのではないでしょうか。毎年、春になると多くの報道機関が「春闘」を連呼しはじめるし、賃上げだなんだってことを話題にするから聞き馴染みのある言葉ではあるものの、なんのことなのかを知っている方はどれぐらいいらっしゃるでしょう。

 春闘とは、「春季闘争」の略で、労働組合が毎年春に行う、賃上げ要求を中心とする闘争のことです。闘争、だなんて野蛮な気がしますが、本当に闘いが行われるわけではなく、会社側と労働組合の間で話し合いが行われる程度のことです。

 程度のこと、だなんて書くと当事者の人たちに怒られるのかもしれませんが、日本の労働組合ってのはどうして組合長とかを歴任すると会社の中でポジションが良くなっていくんでしょうね。そもそも労働組合と会社側ってのは対峙するもののはずで、労働組合の役職者なんてのは会社からしたら敵対する存在です。そんな人たちを会社の中でも役職を与えようとするだなんて、利益相反もいいところじゃないですか。

 不思議なものですよねぇ…

 で。

 その春闘によって大手企業では組合の賃金要求に対する満額回答だとか、過去最高水準の上昇率だとか景気のいい話が各種報道で喧伝されています。

 じゃー日本の労働者が全員、その恩恵を被ることができるのかというとそうではありません。

 NTTやトヨタなどの大手企業で労働者の賃金が上昇したところで、日本の労働者のうち、70%は中小規模事業者に属しています。つまり、中小企業と呼ばれる組織で働く人たちの給与とは別次元の話を各種報道機関ではなされていることになります。

 だったら中小企業も労働組合と話し合いの時間を設けて労働者は賃上げをしてもらえるようにかけあったらいいじゃないか、なんてことを考える人たちもいるようですが、中小企業にはそんな時間も余裕もありません。そんな時間があるのなら、ちょっとでも多くの生産行動をとっていった方が良いのです。

物価上昇率と賃金上昇率の関係

 もっと根本的なところを言えば、いくら賃上げだなんだといったところで物価上昇率が高いから実質賃金、つまり手取り金額は多くなりません。総務省統計局に入り込んで過去の物価上昇率とか眺めてみると、明らかに物価上昇率が賃金上昇率を上回っていることがわかります。

 2023年の物価上昇率のピークは4.3%なのに対し、2023年の春闘で賃金は3%の上昇に止まっていますから、単純に比較して物価の方が上昇しているため手取り金額というか、日々の買い物を含めて生活が厳しいってことになります。

 企業がいくら賃上げを実施したところで、物価上昇が止まらない以上、労働者は常に不利な状況で市場に放り出されることになりますから、財布の紐はキツく絞り込む他にありません。

 ただ、上で触れている通り、春闘では平均で7%もの上昇になっていることから、今後も徐々に大手企業を中心に賃上げの傾向が続いていきそうな機運が高まっており、物価上昇分をコストへ換算し金額に適応させていくことで賃金へ適切に反映されていくことが望ましいでしょう。 

下請けや孫請けをする企業は変わらず苦しい

 冒頭で書いた通り、春闘やらなんやらってのはあくまでも労働組合を組成されるような企業の話であって、そんなものは存在しているのかどうかもわからない労働者の方々はたくさんいらっしゃるでしょう。

 春闘で企業平均7%もの賃金上昇だなんて景気がいい話ですが、全然関係のないものとして日々の時事ネタとして消費されているのも事実で、多くの中小規模事業者にとっては実感を得るほどのネタにはなり得ません。

 特に製造業で大手企業から下請けや孫請けをやってどうにか経営している事業者からしたら、大手企業からのコストダウン要求を受け利益率が乏しい中でも受けなければ経営が破綻するようなギリギリで経営されている中で、どうやって賃上げをしたらいいのか…と悩み苦しんでいると聞きます。

 どうやら、大手企業側は生産コストを算出する際に人件費を「最低賃金」を設定して原価算出するケースもあるらしく、そんな算出方法で下請けに依頼してくるだなんてバカげているし、突っぱねてしまえばいいじゃないですかと言いたくなりますが、その依頼を蹴ることによってさらに売上が萎んでしまい従業員への給与が支払えなくなる…なんて悲哀が生じてしまうといった状況。

 もう明らかに構造的に欠陥のある状況だと言わざるを得ませんが、現実として下請け、孫請けの事業者が損をするような状況は上流にいる大手企業が買い叩くような構図をどうにかしなければ解決が図れないのにも関わらず、その大手企業は従業員へ賃上げを施し、その下で発注を受ける中小規模事業者は従業員への賃上げどころか会社の存続すら危ぶまれるだなんて歪んでいるでしょう。

コスト削減が前提の企業経営から脱却を

 現状、生き残っている企業の多くは20年から30年ほどの企業が中心であることを踏まえると、平成初期から古くてもバブル期の1980年代に産声を上げた企業が多いことになります。

 バブル崩壊以後、平均賃金は横ばいとなっており、日経平均株価も30年以上も最高値をつけることはありませんでした。何が言いたいかっていうと、市場から評価されるような新たな産業や市場が生み出されることなく、淡々とこれまでの製品やサービスを改良したものを生産し続けてきたわけです。

 結果として何が起こるのかというと、コスト削減を前提とした企業経営です。いかにコストの低い製品を高い品質で製造・流通させるのかを躍起になって模索し続けてきたからこそ、その流れは人事制度をはじめとした会社の制度に組み込まれていきます。

 上記した、製造業で原価計算の中で人件費が最低時給で計算されている、なんてウソみたいな話を出しましたが、それを前提に人事制度を組まれている以上、成績が良かったことへの報奨金なども発注コストを計算した上で出されているわけですから給与が上がるなんていっても雀の涙だと言えるでしょう。

 また、企業は労働者をクビにすることは容易にできません。働かないおじさんが存在する理由の一つに、そういった働かないというか飼い殺しをされているような人たちがいるからこそ、若い人たちに供給できるはずの給与が低減されることになります。

 そもそも、生産性や業績に連動した形の人事制度が組まれている企業など、いくつあるのでしょうか。解雇規制が緩和されて人材の流動性が高まれば、今よりもマシな状況になりそうなものですが、それにしたって一朝一夕には解決できそうにありません。

おわりに

 書いてきて、なんだか暗い気持ちになりました。

 国民負担率は46.8%ですし、賃上げを行えばその分の社会保険料も増加し人件費が上昇します。それを理由に賃上げが上がらない要因として大々的にいうつもりはありませんが、少なくとも現役世代は常に苦しい生活を強いられていることに変わりはありません。

 また、あらゆる産業ってのは大企業だけではなく、99.7%とされる中小企業が中心に形成されていることを踏まえると、金額設定が適正なものになることを期待するほかありませんし、人材の流動性を無理矢理にでも引き上げていくようなことがない限り、日本の労働者にとって厳しい冬の時代は明けそうにありませんね。

 ではでは。

 ゑんどう(@ryosuke_endo)


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