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社労士試験 予備校では教えないポイント解説 vol.067

労働者災害補償保険法(7)

二次健康診断等給付

今回の規定は、労災保険の対象ですが、労働災害が発生したわけではなく、過労等業務上の事由による心身疾患という『労働災害が起こる前に』、労働安全衛生法の規定による健康診断をさらにフォローするためのものです。また、下記でも説明しますが、この二次健康診断等給付の対象にならない場合とは、
・健康診断の所見が二次健康診断等の対象になるほど悪くなかったとき
・健康診断の結果が悪くて、二次健康診断等を受けてる場合じゃない(『すぐに病院に行って精密検査及び療養を受けなさい!』という状態)とき
の二通りのパターンがあるということに注意が必要です。

①支給要件

『二次健康診断等給付は、労働安全衛生法の規定による一般健康診断等のうち、直近のもの(以下、一次健康診断という。)において、血圧検査、血液検査その他業務上の事由による脳血管疾患及び心臓疾患の発生にかかわる身体の状態に関する検査であって、厚生労働省令で定めるものが行われた場合において、当該検査を受けた労働者がそのいずれの項目にも異常の所見があると診断されたときに、当該労働者(当該一次健康診断の結果その他の事情により既に脳血管疾患又は心臓疾患の症状を有すると認められるものを除く。)に対し、その請求に基づいて行う。』
【厚生労働省令で定めるもの】
・血圧の検査
・血中脂質検査
・血糖検査
・腹囲の検査又はBMI(体重(kg)/身長(m))
以上4項目の『全て』の項目が『所見あり』の場合に、労働者の請求により二次健康診断等給付を受けることができます。

②給付の範囲

二次健康診断等給付の範囲は、次の通りです。
1)二次健康診断
脳血管及び心臓の状態を把握するために必要な検査であって一定のものを行う医師による健康診断(1年度につき1回に限る)
2)特定保険指導
二次健康診断の結果に基づき、脳血管疾患及び心臓疾患の発生の予防を図るため、面接により行われる医師又は保健師(※試験上、産業医はもちろん、歯科医師、(保健師)、精神保険福祉士若しくは公認心理士といったストレスチェックができる人たちとクロスさせて✕という出し方に注意)による保険指導(①栄養指導、②運動指導及び③生活指導)(二次健康診断ごとに1回に限る。)

③受給手続

二次健康診断等給付は、社会復帰促進等事業として設置された病院若しくは診療所又は都道府県労働局長の指定する病院若しくは診療所(『健診給付病院等』といいます。)において現物給付により行われます。
そして、二次健康診断等給付を受けようとする者は、所定の事項を記載した請求書を、健診給付病院等を経由して所轄都道府県労働局長に提出しなければなりません。
【請求期限】
二次健康診断等給付の請求は、天災その他請求をしなかったことについてやむを得ない理由があるときを除き、一次健康診断を受けた日から3箇月以内に行わなければなりません。
【二次健康診断の時効等】
(特定保険指導)『二次健康診断を受けた労働者から当該二次健康診断の実施の日から3箇月以内に当該二次健康診断の結果を証明する書面の提出を受けた事業者は、当該二次健康診断の結果(当該健康診断の項目に異常の所見があると診断された労働者に係るものに限る。)に基づき、当該労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師の意見を、当該健康診断の書面が事業者に提出された日から2月以内に、聴かなければならない。』
時効という観点から見ますと、短期債権の『これを行使することができるときから2年間』となりますが、二次健康診断については、上記の通り、最大でも一次健康診断から原則3箇月であり、また天災などがあっても次の年度末には次の年度の一次健康診断が行われ、その場合には、前の年度に受診した健康診断を次の年度の二次健康診断の元にする意義がないので、2年間という時効という概念は生じません。したがって、2年間の時効というのは特定保険指導のことを指しているという解釈になっています。解釈的にはそうですが、しかしながら、個人的には、やはり2年も前の診断結果より新しい健康診断の結果があるのにそれを特定保険指導の元にしない理由はないと思います。というより、二次健康診断でも所見が出てるのに、何故に特定保険指導にこだわって病院に精密検査しに行かないの?と思いますけど。。。


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